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episode10

「生徒会長……」


 本来ここにいる筈のない、生徒会長がなんと悠人達の目の前にいた。長い青髪を揺らし、優雅に競技場へと足を踏み込んでくる。


 その後ろには生徒会員であろう生徒、入学式で司会を務めていた桃色の髪の毛をツインテールに纏めている少女が付き従っている。


 左腕に付けている腕章が二人が生徒会である事は明らかだった。


「それでよろしいですか?厚木さん。竜胆さん」


「俺は別に構いませんが」


 悠人の方は生徒会長に特に異論を唱えることはない。

 だが厚木はそうはいかないようだった。


「まっ、待ってください!何故引き分けに⁉︎邪魔が入らなければどう考えても俺の勝ちに……」


「いえ、もしあの攻撃が成立していれば貴方の敗北でしたよ?なにせ貴方の身につけている生徒証が不正行為を記録していますので」


「ぐっ……⁉︎し、しかし……」


「これ以上、何かあるのでしたら一度生徒会でこの決闘の記録全てを確認する必要があるようですが」


 先程よりも力強い物言いに流石の厚木もこれ以上何も言うことはできない。


「……い、いえ……異論…ありません」


 厚木は渋々と頷く。


「それでは今回の決闘はこれで終了ですね。皆さん、下校時刻も回っていますので帰宅して下さい」


「分かりました」


 競技場にいた面々は生徒会長の一声で帰宅して行く。


「……覚えておけよ……」


 去り際に厚木は悠人にそう告げてくる。

 その目は憎悪の瞳で塗り尽くされていた。


 悠人が出口に歩いて行くとき、生徒会長、四皇帝が話しかけてくる。


「竜胆悠人さん、であってるでしょうか?」


「はい。俺が竜胆悠人ですが……あの、何か?」


「いえ、特にこれといって用があるわけではありません……貴方に少し興味が有りまして」


「はぁ……」


 余り目をつけられては困る。そう思い悠人は適当に受け答えすることにした。


「竜胆さんは先程の決闘で()()()使()()()()()()()?」


「え?」


「お仲間の方々は貴方の異能は身体強化の類だと思ってらっしゃるようですが……どうにも異能の反応が弱い、というよりも無に近かったので。あの身体能力は貴方自身のものでは?」


「会長。流石にそれはないかと……」


「……」


 正解だ。と悠人は内心で呟いた。

 どうやらこの四皇帝はただの生徒ではないらしい。

 悠人が異能を使っていないことを見抜くとは中々出来たことではない。

 現にとなりにいるもう一人の生徒会の生徒はその言葉を信じられないでいた。


「ああ、無理に答えなくても結構ですよ?異能のことを詳しく聞くつもりは有りませんので」


「ありがとうございます」


 異能についての会話は余り良くない、と暗黙の了解では定められている。

 不用意に手札を見せる事は得策ではないからだ。


「さて……引き止めてしまって申し訳御座いませんね」


「いえ、俺は大丈夫なので。それでは失礼します」


「はい。気をつけて」


 一度お辞儀をしてから小走りで競技場を立ち去っていく。

 その後ろ姿を四皇帝はじっと見つめていた。


「あの……会長、どうしたんですか?」


「いえ……少し奇妙なことがありまして」


「奇妙なこと……ですか?」


 四皇帝の言葉に首を傾げる女生徒。


「最後のあの攻撃の時、厚木さんが違反数値を超えていたのは明確ですね?」


「それは……明らかに規定以上でしたね」


「ではこちらを見てください」


「これ、ですか?……特に可笑しな点は無いと思いますが……え?」


 タブレットを覗き込む様にして見ていた女生徒はふと、ある一点を見て驚きの声を上げる。


「これってもう一人の生徒の方のやつですよね?」


「えぇ、確かに」


「嘘……でしょ……?」


 四皇帝が女生徒の言葉に肯定する。

 女生徒の方は未だに信じられないといった様子で呟いた。


 タブレットに表示されていたもの。

 それは悠人のブレスレットが検出した異能の数値なのだが、その数値が()()()()()()()()()ほどのものだった。


「しかも、その一瞬だけ私の異能の数値を数段超えているわ」


 その数値はあの時の厚木の攻撃や四皇帝の異能を数段も超えるものであった。


「故障、ではないでしょうか?」


 流石にこれはあり得ない、といった風に女生徒は仮説を立てる。


「故障ならそれで良いのですが……もし故障じゃないとしたら……」


 辺りが静寂で包まれる。

 突然、黙った四皇帝を訝しむ様に女生徒は四皇帝の顔を見上げる。


 その顔には僅かに脂汗が滲み出ていた。


「とんでもない生徒が入学してきたことになるわね……」


 天を仰ぐ四皇帝。

 その時、四皇帝の口角はほんの少し吊り上っていた。


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