第07話 新装備の確認
投稿したと思っていたらできていなかったので今となりました。
勇者の洞、魔法使いマグルの部屋を捜索中に触った袋、その瞬間妙な空間に出た俺は、マグル本人と出会った。
そして、まさかの俺の先祖であった。
さらに、マグルから魔法の袋というかなり便利な魔道具を受け継いだ。
「まさか、俺が魔法使い、マグルの子孫だったとは思わなかったよな、それに……」
俺はさっそく魔法の袋に手を突っ込んでみた。
魔法の袋に使い方は簡単で中にあるものをイメージしながら手を入れるといつの間にか手の中に取り出したいものが収まっているということだった。
そして、俺は懐かしいものをイメージした。
すると、さっそく手の中に懐かしい感触があった。
「おっ、こいつだ」
俺はすぐにそれを取り出した。
取り出した俺の手には上森の継承の証であり、なぜかわからないが継承の儀を受けたものしか抜くこともできない不可思議で、切れ味は鉄だろうが何だろうが切れる。某アニメの斬〇剣も真っ青の代物だ。しかも、こんにゃくが切れないという弱点すらない完璧な刀。
実はこの刀、いつから上森にあるのかも誰が作ったのかも、名前すら何もわからないのがさらに不思議だった。
一説によれば神から授かったものだという、ありえないと思っていたがこの世界を知り、もしかしたらありえるかもしれないという考えが浮かんできた。
「まぁ、ないよな……たぶん……」
俺がそんなことを考えながら刀を見ているとフィーナの声がした。
「ファルター」
「なんだ、フィーナ」
俺が振り向くとフィーナはグローブと靴を手に持って立っていた。
たぶんあれが浩平から受け継いだものだろう。
「さっきの夢じゃないんだよね」
どうやらフィーナは勇者と会えたことがいまだ信じられていないようだ。
「ああ、間違いなく現実だった。俺はマグルの子孫で、そのマグルに会ったし、そのあと前世の子孫でフィーナの先祖である浩平に会ったしな」
俺は簡単に先ほどのことを自分に言い聞かせる意味も込めて説明した。
「だ、だよね、それで、これなんだけど……」
フィーナは持っていた浩平のグローブと靴を俺に見せてきた。
「勇者がフィーナに託したものだろ、つけてみたらどうだ」
俺がそういうとフィーナは少しためらっていた。
「いいのかな、私が受け継いで……」
フィーナはどうやら勇者の装備を受け継ぐことに自信がないようだった。
「大丈夫だと思うぞ、フィーナって、前世の俺に匹敵するか超えるぐらいの才能を持っているからな。今はまだ経験不足だけど、それなりの経験を積めばたぶん、っていうか間違いなく浩平を超えるぞ」
「そ、そうなのかな」
「ああ、間違いないって」
「うん、ファルターがそういうなら」
これでフィーナは装備を受け継ぐ決意ができたようだ。
「ところで、ファルターその手に持っているものは?」
とここでフィーナがようやく俺の手にある刀に興味が出たようだ。
「これが、上森に伝わる継承の刀。浩平がこっちに持ってきていたものだ」
「それって、剣? それにしては変わってるけど」
「これは刀って言ってな、俺の前世の国で生み出された芸術品としても切れ味も名高いものなんだ。まぁ、この刀はその中でもかなり特殊なものだけどな」
「どういうこと」
俺はフィーナにこの刀の由来などについて話した。
「へぇ、そんなにすごいものなんだ。それに勇者様も使えなかったのよね」
「ああ、継承の儀を受けていなかったからな」
「ファルターは使えるの」
「まぁな」
俺はそういって刀を抜き放った。
どうやらこの体でも継承の儀の効果はあるようで安心した。
「きれい」
刀身を見たフィーナがそうつぶやいた。
それも無理はない、刀身は漆黒で刃の部分だけが銀色に光り輝き、流れるような波を描いた波紋が堂々と、そしてさりげなくのっているからだ。
「だろ、でも、これ、いつだれが作ったのかわからないんだよな」
「えっ、そうなの」
「そう、だから、神様から授かったものだといわれているんだ」
「すごいわね。ねぇ、触ってみてもいい」
「ああ、いいぞ、フィーナは上森の末裔でもあるからな。問題ないだろ」
俺はそういいながら抜身の刀をフィーナに渡した。
フィーナがそれを受け取り刀身を眺めたり構えてみたりしていた。
「……すごい、これが……」
何かをつぶやいていたが小さすぎて俺には聞き取れなかった。
「ありがと、貴重な経験だったわ」
「そうか」
俺は刀を受け取って鞘に納めた。
「ねぇ、ファルターこれなんだけど」
そういってフィーナはさっきから持っていた勇者の装備を俺に見せてきた。
「最初は苦労するかもしれないけど、すぐに使いこなせるようになるんじゃないか、つけてみたらどうだ」
「う、うん、でも、なんだか少し怖いかも」
まぁ、確かにフィーナの言い分もわかる。
勇者の装備であるというプレッシャーと強化魔法を使ったことないためにどうなるかがわからないことによる恐怖だろう。
「フィーナなら大丈夫だって」
俺はそういってフィーナを励ました。
「うーん、わかった、ちょっとつけてみるね」
それからは早かった確かに最初、フィーナは強化魔法を発動した瞬間悲鳴とともに高く飛び上がり落下時には俺が風魔法でゆっくりにしなければいろいろな意味でショックを受けていただろう。
しかし、さすがに前世の俺に匹敵する才能を持つだけある。すぐにそのコツをつかみあっという間に使いこなしていた。
「……」
「すごい、体が軽い、攻撃力もすごい上がってる、見てみて、ファルター」
「……ああ、見てる、いくら何でも早すぎない?」
「何か言ったー」
「いや、何でもない、はぁ、まぁ、いいや、フィーナ、そろそろ帰らないか、予定より遅れてるしな」
「ああ、そっか、わかった。今行くね」
そう実は本来ならオーク討伐の次の日の朝にはすぐにでも帰ろうと思っていた。
しかし、勇者の洞の発見やフィーナの訓練で1日過ぎていた。
「それで、すぐに出る」
「そうだな、フィーナもその装備でずいぶん早く走れるだろ、そいつになれるように全力で走ってみるか」
「全力? ファルターは大丈夫なの」
「ああ、俺の魔力はかなりあるからな、走るだけだしフィーナに合わせても十分問題ない」
俺は普段から強化魔法を使っている。
といっても使う魔力は微々たるもので魔法を使う分には支障のないようにしている。
実はこの強化魔法は結構魔力消費量が大きい、フィーナがつけている魔道具は小さい魔力を何倍にも増幅しているため消費魔力はほとんどない状態だ。
だから、フィーナは1日中強化魔法を使っていてもばてることはない。
しかし、俺のように自前で強化魔法を使う場合は1日も使えばほかの魔法が使えなくなってしまうというデメリットがある。
フィーナにはそれを気にしているのだ。
それでも、俺の魔力量は人並外れているので1日中走るだけなら可能だった。
もちろん走り切ったらほとんど魔力を使い切ってしまうが……
「というわけだから、帰るか」
「うん」
俺たちはこうして2人並んで猛スピードでセルミナルクまで帰ったのだった。
ちなみに俺たちが街にたどり着いたのは出発してから半日だった。