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第57話 とおもったらまだだった

本日2話目

 魔王討伐から1年、領地開発と開拓に時間を費やしている間にあっという間だった。

 これまでしてきたことといえば、大量の書類にサインを書いたり、ブリネオたちではどうすることもできない魔物が現れたときに対処したりと、忙しくも平和なのんびりとした生活を営んでいた。

 それ以外というと、俺とフィーナの結婚式が行われたぐらいだろう。

 ちなみにその結婚式は、かなり派手に行われ、非公式であるがなぜか国王陛下が現れたのには本気で驚いた。

 まぁ、それもまたいい思い出だ。

 領地も、順調に増え、今では、最初の領地から考えたら、もはや何倍かもわからないほどだ。

 最近ではそろそろ広げなくてもいいんじゃないかという意見が出ているほどで、俺としてもこんなにいらねぇよとい言う感じだ。

 とまぁ、そんなわけで、最近は領地開拓はせずに開発に力を入れている。

 そのおかげか、今ではシタナエールの街の外にいくつか村が点在するようになった。

 そんなふうに平和なひとときを過ごしていると、執務室に突如ブリネオがやってきた。

「ファルター、大変だ」

「何だ、どうしたんだ、突然」

「ドラゴンだ」

 ドラゴン、懐かしい存在だ、なにせ俺とフィーナが冒険者として、名を上げた最大の出来事だった。

 あれは、いきなりで苦労したがなんとか倒せた。まぁ、今の俺達なら簡単に倒せる。

「ドラゴン? どこだ」

「カラーナ平原のあたりだ」

 カラーナ平原は、ここから、さらに北東に向かった場所にある、つい最近開拓した場所だった。

 あれ、でもなんか変だな、ただのドラゴンだったら、ここまで慌てない、なにせこの街にはドラゴンを討伐できる人間が結構いるはずだ。俺はもちろん父さんにサーラとクルムも最近では超級を覚えている。

 それでも、こんなに慌てているということはどういうことだ。

「もしかして、ただのドラゴンじゃないのか」

「ああ、あれはおそらく、いや、俺にもわからないが、多分、エンシェントドラゴンだ」

「な、え、マジか」

 エンシェントドラゴン、ドランゴンのなかでも最上位の存在であり、伝説級よりも更に伝説で、その存在すら疑われる存在だ。

 それが今ここの近くに現れたというのだ。

「それ、本当なのか?」

 俺もさすがに2度聞き返したいほどだった。

「ああ、ただ俺も人づてだからな確信があるわじゃないが、間違いないだろうとのことだ。その特徴も古い書物に書かれている内容にそっくりだしな」

 エンシェントドラゴンの姿は過去1度だけ目撃されたことがあった。

 その書物はその証言をもとに描かれているという。

 でも、伝説のとおりなら、殆どが死に絶えたているはずで、その証言も怪しいものだというのが世界の常識だった。

 だが、今回カラーナ平原に現れたやつはその特徴にぴったりだったようだ。

 ちなみに、属性龍と間違えたのではと思ったが、それも違う、属性龍はなんだかんだで結構目撃されている、実際俺の先祖もその属性龍を討伐している。

 だから、ブリネオの言う通り間違いないんだろう。

「それは、まずいな、俺が出るしかないだろう」

「ああ、頼む」


 その後久しぶりに戦闘準備を整えた俺達は、一様にカラーナ平原にやってきて、唖然としていた。

 そこにいたのは、確かにドラゴン、しかも、前に叩かたただのドラゴンとは明らかに大きさ、威圧感が全く違う。そして、属性龍の特徴であるそれぞれの属性の色もない。真っ白な神聖としか言いようのない姿をしたドラゴン、つまり疑うこともなくあれはエンシェントドラゴンだった。

「まじかよ」

「ありえないよね」

「ドラゴンって、ほんとファンタジー」

「つ、強そう」

「無理だろ、これ」

「流石に厳しそうね」

「むり、無理、無理」

「あわわわわ」

 俺とフィーナ、愛美にエニス父さん母さんはまだ良かったが、サーラとクルムに至ってはかなりパニックになっていた。

「どうする、これ」

 俺は思わずみんなに相談した。

「とにかく、倒さないとまずいだろ」

「そうね、私達で、時間をかせぐから、お父さんとファルターは詠唱して」

「お、おう、それしかないか」

「大丈夫なのか」

 それしかないとはいえ、流石にアレの相手はきつすぎるだろう。

「なんとかやってみるわ」

 こうして、俺達の戦いが始まった。

 それにしても、魔王がラスボスだと思っていていたら、エンシェントドラゴンって、裏ボスかよ。

 ゲームでもラスボスより裏ボスのほうが強いというのはよくある設定だが、まさか、現実でそれをたいけんすることになるとはおもわなっかった。

 俺がそう思っていると、フィーナ、愛美、エニス、母さんの4人がエンシェントドラゴンを囲いはじめ、一斉にブースターの出力を最大にして、攻撃を開始した。

 その光景は、凄まじいものがあった。なにせ、バカでかいエンシェントドラゴンに対して、人間はあまりにも小さい、普通なら蚊に刺された程度しか感じないであろう攻撃も、多少ダメージを受けているようだった。

 それをみてから、俺と父さんは詠唱を開始。

 しばらくして、父さんの詠唱が早く終わった。

「よし、みんな離れろ」

 父さんがそう言うと、フィーナたちは一斉にドラゴンから距離をとった。

 そして、父さんの魔法が炸裂。

 父さんが、放った魔法は、伝説級の魔法「エクスプロージョン」、この魔法は伝説級唯一の魔法になる。というのも、俺も伝説級が使えるようになって初めて知ったのだが、伝説級は全属性魔法だ。

 それを父さんが放ったわけだけど、その結果はというと、あまり聞いていないようだった。それをみると昔から言われている通りだというがわかる。

「くそっ、あまり効いてねぇな。もう一発言っておくか」

 父さんがそんなことを言っているが俺が止めた。

「いや、父さんは、そのまま、母さんたちの援護に行ってくれ、やっぱり俺がやるしかないみたいだ」

「だな、わかった、任せる。こっちは任せろ」

 そう言って、父さんは母さんたちのもとへと向かっていった。

 それからは、父さんも加わり戦いは一層激しいものへとなった。

 それからしばらく、ようやく俺の詠唱が終わった。

「よし、詠唱終わった。みんな」

 俺はその瞬間そう言って叫んだ。

 それから少し時間をおいて、次々に俺のそばにみんなが集まってきた。

 俺がこれから放つ魔法の場合、広範囲となる、そのため俺のそばが一番安全だったりする。

「行くぞ」

 そうして、俺は魔法を放った。

 俺が放ったのは、ここまでくれば誰でも想像がつくだろう、伝説級の魔法を詠唱していた父さんより長く詠唱し、そんな父さんが任せた威力の魔法。そう、俺はついに神級の魔法を放てるようになっていた。

 そしてその魔法だが、伝説級が1つしかないように神級もまた1つしかない、それはまさに神罰としか言いようがないほどのもので、その名はあまりにも威力が高く、起きる現象がなんとも言えず、ただただ、神罰としか言いようがない、そんなわけで名前すらない。というか名前をつけようがないといったほうがいいだろう。

 そんな魔法が今、エンシェントドラゴンに降り掛かった。

「……す、すげぇな」

 目の前で展開している光景を見てほかのみんなは絶句していたが、父さんだけが、何とか短くそうつぶやいた。

かくいう俺も節句組だった。今日初めてこの魔法を放ったがまさか、ここまでの威力があるとは思はなかった。

 そして、その魔法が収まったあと、残されたものは何もない、そこにいたエンシェントドラゴンも周囲にあった木々も、すべてがそこにはなかった。

 こうして俺はついにエンシェントドラゴンを討伐したのだった。

「さすがにこれで、終わりだろう」

 裏ボスも倒したし、もうこれ以上面倒ごとはないだろうと願いつつ、その場に座り込んだ。

「これで、ようやくのんびりと暮らせるわね」

「だな」

これにて完結となりました。長らく読んでいただきありがとうございました。

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