第53話 前哨戦
魔物の集団とともにやってきたクリムナ帝国軍により荒らされた街、カスタン。
そのあまりの荒廃ぶりに俺たちは思わず、復興の手助けをしたいと申し出た。
しかし、ここは原住民が奴隷として扱われているジュラム・ガルブそう簡単に容認されるものではなかった。
そのため、提案してから返事が来るまでに数日を要したわけだが、俺たちが住人とトラブルを起こしているとそこに町長がやってきて、その返事をもらうことができた。
そうして、俺たちは土魔法とブースターを駆使して彼らの想定よりも早く街の復興をすることができた。
そのおかげか。
「よう、ファルター、助かったぜ」
「ほんとほんと、まさかこんなにも早く復興できるなんて思わなかったわ」
「ああ、ファルター様様だな」
そういって複数の金髪碧眼の人間に感謝されることとなった。
ちなみに話し方がフランクなのは、俺たちがそう願たからだ。何せ俺の正体がわかるとしばらく俺たちを恐れながら緊張し、バカ丁寧な言葉遣いをしてきた。それまでトラブルを起こしていた連中にいきなりそんな態度をとられても、元平民としては落ち着かない。そこで、普通に話してくれと頼んだというわけだ。
「そうはいっても俺たちがやったのは魔法で土台を作るだけだ。あとは、みんなの力だろ」
俺も少し照れながらそういった。
「その魔法がすげぇんじゃねぇか、まさか、ど、いや、原住民がそこまでの力を持っていたなんてな」
「一応言っておくけど、いくら原住民でもファルターやお義父さんたちのような魔法力はないわよ」
住人が少し勘違いしそうなのでフィーナがすかさずそういった。確かに、薄人、つまり彼らの言う貴人よりも俺たち原住民の方が力が強いというのは間違いない。それでもたまに上級が扱えるやつがいるという程度でしかない。そう考えると俺たちの一族は特殊なんだろうな。
「うちの一族だけが特別だよ」
父さんもそういっている。
「それでも助かった。まさか、原住民であるアンタらにここまで感謝することになるなんて思わなかったよな」
「それについては俺たちも同じだよ、マナリズ王国ではそっちの種族は基本貴族だからな。いつも偉そうにしているしな。まぁ、アルディは別だったけどな」
「はははっ、確かに、貴族の中には原住民を下に見ている者も少なくありませんからね。でも、僕もそうですけど、陛下や侯爵以上の爵位を持つ一族はそうでもないんですけど」
アルディが少し恥ずかしそうに顔を赤らめながらそういった。
これについては俺も知らなかったことだ。
「へぇ、そうなんだな、アルディや陛下が特別だと思ったよ」
「うん、うん」
「思ってた」
「あははっ、まぁそうでしょうね」
こんな感じで打ち解けていたが、そろそろ俺たちの時間が迫ってきていた。
その時間とは、ついに魔王のもとに軍を進めるということだ。
というのも、実はクリムナ帝国の帝都は相変わらずクリムナ王国だったころの王都のままだったが、魔王自身は、戦争のために拠点を移している。
そして、その拠点としているのが、ここカスタンから数日、西に向かったところにあるコンビュという街だ。
つまりこの街の隣町ということになる。
この情報は数日前にカスタンに入ってきたものでそこから作戦会議を開きついに明日、コンビュに向かって進軍することが決まった。
「まぁ、なんにせよ、俺たちの街を荒らした魔王軍討伐、ファルターたちに任せたぜ。お前らなら魔王なんか敵じゃないだろうからな」
「任せたわよ」
そういってカスタンの住人たちは俺たちを送り出してくれた。
「いい街だったな」
「うん、最初はどうかと思ったけどね」
「だな、危うく吹き飛ばしてやろうかと思ったぜ」
なんだか父さんが物騒なことを言い出した。
「マルス、私もよ」
なぜか母さんが同調してしまっていた。
アブねぇな、おい。
俺は少し冷や汗をかきながら突っ込んだ。
「父さん、母さん、何物騒なこと言っているんだよ。さすがにそれじゃ誰が魔王かわからねぇって」
とまぁ、そんな気負うこともなくいつものように行軍していた。
そして、ついに目の前にコンビュの城壁が見え始めてきた。
だが、その目の前には俺たちを迎え撃とうとする軍勢が待ち構えていた。
「さすがにすげぇ数だな」
俺はクリムナ軍の数を見た俺は思わずそうつぶやいていた。
それもそのはず、何せ、今俺たちの目の前にいるのは、具体的な数はわからないが、おそらく俺たちの倍以上の数はいるだろう。それも人間の数だけでだ。その周囲にいる魔物を合わせるとその数倍に上ると思われた。
「ほんとよね。よくもまぁ、ここまで集められたわよね」
フィーナもつぶやいていた。
「これは、もはや、シタナエール殿方頼りの戦となろう」
さすがのシンダリオン侯爵も若干引きながらそういった。
「そうですね。すみませんファルターさん」
アルディも若干申し訳なさそうにそういってきた。
「まぁ、確かにすげぇ数だけど、何とかなるだろ、シンダリオン殿、ここはまず初撃はお任せを」
「うむ、そうだな、任せしよう」
そういわれたので俺と父さんでまずは一発上級上位の魔法で魔物とある程度の人間を攻撃することにした。
「では、父さん」
俺は父さんに声をかけた。
そして、その瞬間俺たちは詠唱を使わずに上級上位の魔法、俺は、炎属性のファイアストームを敵左翼に、父さんが、水属性のアクアストームを敵右翼に放った。
それぞれに巻き起こった炎と水の嵐、それに巻き込まれた魔物や敵兵たちは巻き上げられて燃え尽きるか、こう圧縮された水に押しつぶされつつバラバラになりあっという間に、敵の大半が死に絶えたのだった。
「これで、だいぶ楽になっただろ」
「……」
シンダリオン侯爵をはじめシュミナ王国の連中は絶句していた。
「……、さ、さすがですね」
俺たちの実力を知っているだけにアルディを中心としたマナリズ勢は何とか起動していた。
「……う、うむ、まさか、これほどとは、これが超級魔法」
どうやら侯爵は勘違いしているようだった。
「違いますよ、今のは上級魔法です」
「なに、上級魔法だと、しかし、あのような威力で……」
「まぁ、上級といっても上位版ですが、おっと、敵も復活してきたようです」
俺が侯爵の間違いを正していると敵軍が早くもショックから復活して俺たちに迫ってきていた。
「そのようだな、話はあとで聞かせてもらうとして、全軍、突撃」
こうして、再び戦いが始まった。
ちなみに俺たちの立ち位置は前回と違い遊軍、工法ではなく自由に危なそうなか所に向かい敵兵を倒すというものだ。
まぁ、元冒険者である俺たちにはもってこいの戦術だろう。
そのおかげか、その後俺たちはここが活躍した。まずは俺とフィーナは俺の魔法とフィーナの体術で主に魔物を次々に葬っていった。
また、父さんと母さんとエニスが父さんの魔法に母さんとエニスが槍で合わせて夢想している。そして、愛美とサーラとクルムの3人がこれまた同じようにサーラとクルムの魔法に合わせて愛美がものすごい勢いで突っ込んでいった。
こうして、数倍はいるかと思われた敵もあっという間に殲滅寸前まで追い込むことができた。
「退却―、退却―」
その掛け声とともに敵兵たちが一斉に街の中に下がっていった。
「ようやく、敵が引いていくか」
「思ったより粘られたわね」
「はい、疲れました」
「魔力が尽きそう」
俺とフィーナが話をしているとサーラとクルムが疲れ切った表情をしながらやってきた。
「お疲れ、すぐに討伐に向かうわけじゃないし、休んどけ」
「そうします」
「うん、そうする。愛美は?」
「私も少し疲れたから休む」
「おう、そうしていろ」
俺たちはその後休んでいたが、侯爵たちシュミナ王国税やブルネオたちは逃げ遅れた敵兵を討ったり、魔物を狩ったりしていた。
まぁ、俺たちのメインは街の中にいるしな。一応予定では明日、俺たちが街に潜入することになっている。だから今は休んでも問題はないのだった。
こうして、俺たちの魔王討伐の遠征もあと少しとなった。




