第52話 街の復興
ブルックリム要塞を取り戻した俺たちは1日だけ休みを取り、一路さらに北上してジュラム・ガルブとシュミナ王国の貿易の様相となった街カスタンに向かった。
しかし、俺たちが見たカスタンは魔物を含むクリムナ帝国軍の蹂躙を受け荒れ果てていた。
そこで、考えた挙句俺たちで街の復興を手伝いとアルディに申し出た。
だが、ここで1つ問題があった。
そう、俺たちが原住民であるということだ、つまり、ここジュラム・ガラブでも例外なく奴隷とされている種族だった。
「とにかく、ファルターさんたちが協力していただけるのは非常に助かります。まずはテサーリオ殿に相談してみましょう」
というわけで、まずはシンダリオン侯爵に相談することとなった。
「……というわけで、俺たちが街の復興に手を貸そうと思っているのですが、どうでしょうか?」
俺は、簡潔だが復興の手助けをしたいと申し出た。
「なるほど、確かに、それはありがたい申し出だ。しかし、疑問なのだがどのように行うつもりだ」
シンダリオン侯爵は当然のことく俺たちの協力の仕方を聞いてきた。
そこで、俺は自身の街シタナエールでのことを話した。
「な、なんと、魔法で、本当にそのようなことができるのか」
「驚かれるでしょうが、これは本当のことです。ファルターさんは確かに魔法であっという間に街を完成させました。本当に驚くべきことでした」
アルディが興奮しながらそういった。
「うむ、アルディオン殿がそこまで驚くほどのものか。しかし、私が知る魔法ではそこまでの力はないはずだ」
シンダリオン侯爵の言う魔法はあくまで中級の者だろう、なぜか薄人達では大体中級ぐらいまでがせいぜいだからだ。まぁ、たまに上級が扱える者が出てくるらしい、それに奴隷とされた原住民では、精神の関係だろうこれまたあまりいないと聞いている。
まぁ、それでも薄人達に比べれば圧倒的に多いが……。
「俺たち、というか、俺の家族の魔法使いはみんな上級以上が扱えますから、そのぐらいは簡単なですよ」
「上級以上、まさか、ちょっと待った、それではシタナエール殿も上級以上が……」
シンダリオン侯爵は驚愕している。武術ができ、要塞に忍び込んで見せた技を持つ俺が魔法使いとして上級以上が扱えるという事実に驚いているようだ。
「ええ、使えます。一応、超級もできますよ」
実際には、すでに伝説級も撃てるぐらいにはなっているがこれは切り札みたいなものなのでいうわけにはいかない。
「なんと、超級! それは、心強い」
「はい、というわけなので、俺たちが手伝えば早く復興もできるかと思います」
「なるほど、うむ、わかった。一応私もカスタンの民に提案してみるか、彼らが受け入れるかは保証しかねる」
やはり、侯爵も懸念することだったようだが、それでも提案はしてくれるようだ。
「お願いします」
それから、数日が経ったが、侯爵からどうなったかの結果の報告はまだ来ていない。
そんな中、街では住人たちが俺たちをしり目に街の片づけを始めている。
「侯爵からの返事は来ないのか」
そんな中ブリネオが俺に尋ねてきた。
「ああ、ないな」
「もめてなければいいけど」
フィーナの言う通り俺たちが手伝いたいということについて街の人間たちともめては意味がないような気がするからだ。
「おい、お前ら、どこの奴隷だ。仕事をしろ」
俺たちがそんな会話をしていると不意にそういって声をかけてきたやつが来た。
多分俺たちを奴隷と勘違いしたらしい。
「ん、いや、俺たちは奴隷じゃないぞ」
だからこそ俺はそう答えた。
「なんだと、奴隷の分際で貴人に口答えをするな」
そういって、そいつが俺に向かって持っていたハンマーを振りまわしてきた。
アブねぇな、おい。
「な、なに」
もちろん俺もそれを素直に受けるわけもなく素早く懐に入り込みそのハンマーを取り上げた。
「いきなりだな」
「貴様ぁ~」
どうやらこの行為がより怒らせたらしい。
今度は、腰に差した剣を抜き放とうとした。
「ファルターさん!」
するとそこにアルディがやってきた。
「おう、アルディか、どうした」
俺は男を機にした風もなくいつも通りアルディに対応した。
「どうしたもこうしたも、それはこちらのセリフですよ。一体これは、どういう状況ですか」
「なに、簡単なことだ」
そういってから俺は今起きていることを簡単にアルディに説明した。
「ああ、なるほど、そういうことですか。すみません、ファルターさん僕が近くにいればよかったんですけど」
「お前が気にすることじゃないだろ」
そんなことを言いながら俺たちに頭を下げたアルディを見て男やその周囲にいた住人が驚愕した。
「!!!」
なにせアルディの正体は当然住人たちも知っていた、そのアルディが頭を下げた相手が原住民である俺たちであることに驚いたのだろう。
「君たち、この方は確かに原住民だけど、マナリズ王国では陛下より騎士爵を与えられて、シタナエールという領地まで下賜されたれっきとした貴族、僕の命の恩人でもあり、ブルックリム要塞での一軒でシュミナ王国の侯爵閣下からも信を置かれている方だよ。それに、ファルターさんはこの街の復興を魔法で手伝いとまで言ってくださっている」
「なっ、貴族!」
「そんな、バカな!」
「奴隷種が、貴族だって」
ちなみに、ここジュラム・ガルブにおいては、原住民である俺たちを奴隷種と呼ぶことは特に禁止されていない。
「この国でどう扱われている種族でも、基本僕の国では平民、功績をあげれば希釈までだけど与えられることはある。まぁ、確かに、領地まで与えられたのはファルターさんが初めてだけど」
「……」
住人たちは納得したようなしていないような感じだ。これは、復興の手伝いも無理そうだな。
俺がそうあきらめかけていたその時だった。
不意に後ろから声がした。
「お前たち、何を騒いでいる……おお、もしやあなたがファルター殿かな」
そういって声をかけてきたのはもうすでに60は越えてそうな白髪の真っ白いひげを生やした老人だった。
「町長」
住人たちが老人の正体を教えてくれた。どうやらこの街の町長だったらしい。
「あ、あの、町長、その奴隷種が、その、本当ですか」
「これ、その呼び名はやめなさい。これからこの街の復興を手伝ってくださる方だぞ。失礼な呼び方をする出ないわ」
ん、どういうことだ。侯爵に提案したことはまだ返事は来ていなかったけど、もしかして、話が通ったのか。
「ファルター殿、我が町の住人が失礼をいたしました」
そういって町長は自ら頭を深々と下げてきた。
「いえ、特に気にしていませんから、それより、復興の手伝いということは、提案が……」
「はい、少し、一部の者たちの説得に時間がかかりましたが、ようやく決まりました。カスタン町長として、ぜひよろしくお願いいたします」
そういって再び町長が頭を下げてきた。
「わかりました、それで、どこからやりましょうか」
「おお、さっそく手伝ってくださいますか」
「ええ、俺たちとしては、早くやりたい感じでしたからね」
そういって、みんなを見たらやる気満々の目で見てきた。
ほんとにみんなやる気があるみたいだ。
「ああ、このような失礼な仕打ちをしたにも拘わらず、そのようなことを言ってくださるとは、感謝いたします」
それから、俺たちは、町長たちの指示されたところを魔法でがれきをどかしたり、土魔法で土台を作り上げたりして行った。
もちろんそれを見ていた先ほどの住人達も徐々に俺たちの魔法の強さと、惜しげもなくその力を使うさまを見てだんだんと態度を軟化させていった。
こうして、数日魔法を使いまくった結果、街もだんだんと活気を取り戻していった。




