第49話 小手調べ
クリムナ王国改めクリムナ帝国が隣国であり、国王をはじめとした貴族たちの出身国であるシュミナ王国が襲撃を受けた。
そこで、マナリズ王国からアルディを中心とした、志願した貴族数名とその騎士団と俺たちシタナエール勢による混合部隊によって駆けつけた。
しかし、予想通り俺たちシタナエール勢はシュミナ王国の薄人のへいし達からは奴隷と間違われたり、貴族たちからはあまりいい顔をされなかった。
それでも、アルディが俺たちのことを話したことで、貴族たちはそれでも表立って俺たちを悪く言うものはいなくなったのは僥倖だろう。まぁ、平民たちはまだ俺たちを見ると奴隷と間違えることがあるが……。
とまぁ、そんなわけで、何とか作戦会議を終え、今俺たちは戦場に立っている。
俺たちが相対しているのは、まさに異様な光景だった。
「……なんか、異様だよな」
「……う、うん、人間と、魔物が並んでいるわね」
そう、敵軍である、魔王軍となったクリムナ帝国軍は人間だけでなく魔物も混じっている。つまり、俺たちの目の前に並んでいるのは人間と魔物の混成軍、人間の隣に本来脅威となる魔物が並んで立っているという光景だった。
「なんで、あんなことが可能なんですか」
サーラも不思議そうだ。
「……たぶん、魔王だからじゃない」
愛美もそれに何となくの推測で答えていたが、たぶんそうだろう、俺もそう思う。
「そうだね、そうとしか説明できないよね」
クルムも同意していた。
「それにしても、隣にいる人たちはよく落ち着いているわね」
と母さんがつぶやいた。
「だな、あまりおびえた様子もないように見えるな」
それに答えたのは父さんだ。
「まさか、精神か何かを操られているんじゃないでしょうか」
フィーナがそういったが、確かにそれなら納得できるし、おそらく魔王ならできそうだ。
「かもな、でも、そうだとしても、さすがにあそこまで混成状態だと、区別ができないな」
これは、俺の意見だが、それは確かにそうなのだ、本当に人と魔物が区別なく並んでいる、もし、魔物は殺し人は生かすという選択をすれば、それは難しいだろう。
「それは仕方ないだろう、かわいそうだが、こっちも命がかかっているからな」
そういってみんなが少し落ち込んでいる中、励ましたのは父さんだった。
「それにしても、皆さん、さすがですね」
とそんな会話をしているとアルディが振り向いて言ってきた。
「何がだ」
「いえ、ここは戦場であり、相手は大量の魔物や人、そのように落ち着いていられるのはさすがです」
「そうか、これでも、結構緊張しているぞ。何せ、以前ブルックリム要塞で戦場に立たけど、あの時とはだいぶ規模が違うからな」
「そうね、あの時は、要塞に立てこもっていたし、外に出ても数人倒しただけだからね」
「そういえば、そうだったな、あれはあれですごかったが……」
ブリネオが何やら少し遠い目をしていた。
「まぁ、といっても、たぶん今回は俺たちはそこまでの出番はないかもしれないけどな」
俺がそういった理由は簡単で、それは俺たちの配置にあった。俺たちが配置されたのは左翼後方、そのおかげでまず敵に当たるのは俺たちの前にいるシュミナ王国貴族の諸侯軍となる。まぁ、これは、表向き俺たちが外国からの援軍だからという理由と、この戦いでの功績を俺たちがとらないようにするための措置でもあった。
「まぁ、今回は、シュミナ王国の戦争を特等席で見せてもらうとしようぜ」
ブリネオが何やら上から目線でそういった。
「そうだな、それで、漏れてきたやつらを俺たちで片付けよう」
俺もまたそれに同意した。
こうした中いよいよ開戦となった。
最初に動いたのはクリムナ軍、魔物の方向と人間の雄叫びが混ざった異様な声とともにまず魔物と奴隷である原住民が一斉に突撃してきた。そして、その後方からは兵士が魔法で遠距離攻撃を仕掛けるというものだ。
これを見ると、どうやらクリムナ軍にとって魔物も原住民も使い捨ての道具感覚だ。
魔物はともかく、奴隷とされているかられらと同じ原住民としては胸糞悪くなる用兵だ。
「ほんとふざけたやつらだな」
俺は思わずそうつぶやいていた。
「はい、僕もそう思います。さすがに人間を魔物と同じ扱いにするのは許せないです」
アルディも俺たち同様憤慨していた。というより、むしろそのように扱っているのが自分と同じ薄人であるということを恥じんている感じだ。
「まぁ、それはともかくとして、俺たちも一発敵に撃っておくか」
俺は場の空気を払しょくするようにアルディにそう尋ねた。
「いえ、今回は、あくまでシュミナ王国の戦いです。今は、まだファルターさんの魔法は大丈夫です。それにファルターさんほどの魔法をこちらが撃てるということはいざという時のために取っておくべきですから」
なるほど、確かにそれはそうだ。
「わかった、それじゃ、今回は、中級か売っても上級あたりか」
「そうですね。それが妥当だと思います」
「了解、おっと、そっれじゃ、そろそろ俺たちも行くか」
話をしている最中に徐々に前方の部隊が押され始め敵が俺たちに迫りつつあった。
「じゃあまぁ、適当に暴れるとするか」
「そうね」
そういって父さんと母さんはそれぞれさっそく構えていた。
それを見た俺たちもそれぞれに武器を構えた。
ちなみに俺は今回魔法ではなく刀で切り結ぶつもりだ。
それから、俺たちの戦いが始まったわけだが、一言でいえば、圧倒的だった。
結構手加減をしたというのに魔物は言うまでもなくすぐに片付けられるし、奴隷とされた同族たちは周囲の魔物のせいか十全に力を発揮できず、薄人の兵士は言うまでもないかった。
そんな感じで小一時間ほど戦ったところで敵がようやく後退した。
「敵陣、後退、追撃します」
そういって、シュミナ王国の兵士たちが後退していったクリムナ軍を追っていった。
俺たちはというとそれを眺めているだけ、その理由は、ここでは俺たちは援軍であり、この戦争はあくまでシュミナ王国に侵略してきているクリムナ帝国に対するものだるということだ。
だから、そもそも俺たちが追撃に加わることの方が問題があるのだ。
というわけで、俺たちは自分たちの陣営まで戻っていた。
「思っていたより、楽勝だったな」
開口一番に俺がそういったら、父さんが答えた。
「まぁ、相手も普通の兵士相手だと思っていただろうからな。薄人達の兵士だけだと、魔物の軍勢だけでやられるだろうしな」
それに母さんが続いた。
「そうね、向こうもまさか、私たちがいるとは思わないしね」
「確かに、お義母さんとお義父さんの言う通りです」
それにフィーナが答えた。
「それでも、弱すぎるよね。このままクリムナ王まで続けばいいけど」
「そうだよね、あのぐらいだったら楽なんだけど……」
愛美とクルムの発言だ。
「でも、魔物はともかく、奴隷にされている原住民に被害が出るのは……」
サーラがそういって、奴隷となりクリムナ帝国側に立ち俺たちに魔物と同じように蹂躙された連中に同情している。
「だな、でも、だからといって選別は無理だからな」
「そうだな、せめてもの救いとして、一思いに送ってやろう」
「そうね。それしかないね」
その言葉を聞いた俺たちはしんみりした雰囲気となった。




