第42話 快適を目指し
勇者一族でのいざこざも解決し、俺とフィーナはようやくシタナエールへと帰宅する運びとなった。
早く帰って領地の開拓をしたいという思いもあって俺たちは全力で帰ることにした。
「それでは、行ってきます」
フィーナはそんな風に両親に告げた。
「うむ、婿殿を支えるのだぞ」
当初は反対してのに今ではすっかり婿扱いしてくれている。というかこれ、完全に外堀埋まってないか。
その時に俺の脳裏にそんなことが浮かんだが、まぁいいかと思うことにした。
「フィーナ、私たちも後から行くから」
フィーナにそんな声をかけたのはどうやらフィーナとは幼いころからの友人である、ソフィアだった。
「ええ、先に行って待ってる」
この会話の通り、実は勇者一族からも一部シタナエールに移り住むことになった。
その理由は、もちろん、俺から男型を習い、愛美から女型をそれぞれに習うつもりだからだ。
俺としては問題ないと思っている、そもそも上森は指導者だったし、勇者の一族は浩平の子孫つまりは上森の一族でもあるからだ。
そんな別れをして俺たちは一路シタナエールに向かって旅立った。
といっても、数時間走ればつくわけだ。
「ただいま、はぁ、疲れた」
俺は、帰るなりそうそうそうつぶやいた。
「緊張で疲れたのかしら」
すかさず母さんが様子を見に来てそう一言いった。
「緊張というか、なんていうか、いきなり戦う羽目になって……」
俺は母さんに勇者一族であったことを話した。
「あら、あら、それは大変だったわね。でも、向こうでも認められたようでよかったわ」
「まぁね、それで、こっちはどう」
「お父さんたちが頑張っているわよ。といっても街だけあって規模が大きいから、大変みたいだけど」
「そっか、わかった、ちょっと様子見てくる」
「少し休んだら」
母さんも少し心配していってくれた。
「いや、大丈夫だよ、まぁ、さすがに魔力がだいぶ減っているから工事には参加できないか漏れないけど」
それから、俺は工事をしている場所に出向いた。
「おう、帰ったか、ファルター」
「ただいま、そっちも大変みたいだね」
「ああ、思ったより、繊細だからな」
そうつぶやく父さんの前には深めの溝が掘られている。
実はこれは水道、この世界の街は基本上水はもちろん下水処理もない。王都でも、毎日共同か個人宅の井戸を使って飲み水を確保しているし、下水という考えがないみたいで、そういったものはすべて専門の業者が汲み取りを行っている状態だ。
日本で育った俺や愛美にとってはそれは耐え難いことだった。
そこで、俺が収める街には最初からしっかりした上下水道をつけようと考えた。
しかし、問題はどうやって水道を作るかというものだった。
俺と愛美には当然知識がない、そこで頼りとなったのがマドリスだった。マドリスは測量をはじめ、さまざまな知識があった。それと俺と愛美が持つ日本の高校生並みの知識を合わせることでこの問題も片付いたのだった。
まず、上下水道ともに当然地中に埋める運びと名たわけだが、この素材にコンクリートのようなものを使うこととなった。俺もびっくりだがこの世界にはコンクリートのようなものが存在していた。といっても俺にはコンクリートもそれの製法も知らないから、見た感じがそっくりだったので、コンクリートと明記しているに過ぎない。
そんなわけで今父さんたちが苦労しているのは、その樋を埋めるための穴を掘っているわけだが、何せその角度が問題だ。少しでも狂えば水がうまく流れないし、何より下水が詰まったらそれこそ最悪だ。そのために気の抜けない作業でもあった。
それでも、さすがは魔法、地球では考えられないほどのスピードで掘られている。
「今日は、さすがに俺も全力で走ってきたから細かな作業できないけど、明日からは参加するよ」
「おう、そうしろ」
そして、次の日、俺はさっそく樋を埋めるための穴掘り作業に従事していった。
ちなみにこの作業はかなり細かな調整がいるためにサーラやクルムでは難しい、というわけで、実は2人には別の作業をしてもらっている。
その作業だけど、簡単に言えば用水路建設だ。
このシタナエールには、街と穀倉地帯を作る予定だ。
穀倉地帯には用水路は必要不可欠、重要な仕事である。
こうして順調に作業が進む中、数日後には勇者一族の一部がシタナエールに到着し、作業の手伝いをしてくれている。
そして、そのさらに、数日後に、マドリスの故郷であり、俺とフィーナがドラゴン討伐を行った村、クリアルブ村から冒険者を護衛として集団でやってきた。
実は彼らはマドリスたちと同様、兄弟の次男とか三男などの家を継げないものたちだ。
通常彼らはマドリスたちのように執事やメイドの仕事についたり、冒険者となったりする。そんな彼らにマドリスを通して、この街への移住を持ち掛けてみたら、集まったものたちだ。
「思ったより、多いな」
「それほど、旦那様方に恩があるということにございます」
「そうか、まぁ、これだけ多くても、まだ済むところには余裕がありそうだから問題ないな」
「はい、問題ありません」
この領地はまだ開発段階、いずれは畑仕事を専任で行ってもらうが今はまだ工事の方が多い。まぁ、ぼちぼち用水路も出来上がってきたし、畑つくりも必要だろう。
畑に埋めるものは実はすでに決まっていた。
まずは、彼らの得意分野でもある小麦、愛美がバナリーズで見つけてきた大豆、勇者一族がひそかに育てていた米だ。
元日本人として、特に大豆と米には歓喜した。
これで、みそとか醤油ができればあったかいごはんに味噌汁、なんていうこともできるだろう。ただし、問題があり、ここは内陸近くに海がないという欠点がある、そのために海産物が手に入らない。つまり、味噌汁に必要な出汁が取れない。出汁のない味噌汁なんて果たして味噌汁といえるのだろうか疑問だが、仕方ないかもしれない、まぁ、最悪は俺がひとっ走りして海に行き魚を取って魔法の袋に収めてくるという手がある。
といっても、これはかなり大変なことでもあるので、よっぽどなことがない限り無理だろうな。
俺は少し肩を落としながらも、使用人たちに何かいいものがないかと相談する毎日だ。
とにかく俺はこうしてもらった領地、好きに開発してもいいわけだから、思いっきり好きなように開発してやろうと思う、目指すは快適な生活だ。




