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第04話 ランク5

 初冒険を終えた次の日、俺たちは朝からギルドに向かっていった。

「今日も、昨日と同じ討伐だろうな」

「まぁ、仕方ないよ、私たちランク1だし、地道に上げるしかないんだから」

「それもそうだよな」

 そんなことを話し合っているとギルドにたどり着いていた。


 俺たちはさっそく掲示板を見に行こうとした。

「あっ、ファルターさん、フィーナさん、お待ちしていました」

 すると受付の人が俺たちを呼んできた。

「ん、なにか?」

「はい、実は、お2人のランクについてですが……」

「ランク? それがどうかしたのか?」

「はい、昨日の賞金首の捕獲、スライムキングの討伐などの功績から、お二人がランク1であるというのが問題となりまして」

「問題?」

「はい、昨夜、緊急会議を開きましてその結果、お2人を特例でランク5とする決定が下されました」

「!!!」

 その言葉を聞いてギルド内にいた冒険者たちがざわめきだした。

「お、おいおい、マジかよ」

「ランク1から、ランク5だと」

「ありえないだろ、そんなの」

「いや、でも、あいつらって確か、ランク5の3バカを無傷であっさり倒した奴らだろ」

「ああ、俺も見た、あれは強かったぜ」

「うん、うん、あんな技見たことなかったよ」

「しかも、あいつら、昨日登録したばかりだっていうのにいきなり、スライムキングを倒したらしいぞ」

「うそっ、ほんとに」

「ああ、昨日奴らが帰ってきて報告してたところにいたから間違いないぜ」

「すげぇな」

 などと騒いでいた。

「……えっと、そのランク5になるとどうなるんだ」

 俺は周囲の騒ぎを聞き流しながら訪ねた。

「はい、基本的には変わりませんが、ランクが5となったことで受けられる依頼の難易度も上がります。といっても、それでもお2人には物足りないかもしれませんが……」

 受付も少し申し訳ないように言った。

「何分、ランク1からランク5になる人もいませんでしたので、さすがにそれ以上のランクアップは問題がありまして」

 普通に考えてもそうだろうと思い俺は納得した。

 まぁ、ランク1から地道に上げていくより楽になったと思えばいいか。

「それでは、冒険者カードを書き換えますので呈示お願いします」

「ああ」

 俺たちは言われた通り冒険者カードを提出した。

 それから、受付が何かの魔道具に冒険者カードをかざすと、ランクが書かれた場所が1から5に瞬時に書き換わった。

 どうやらあの魔道具を使うことでカードの文字を変更することができるようだ。

「では、これで、お2人はランク5の冒険者です。もちろん下位の依頼を受けることは可能ですが、その際ランクを上げるための貢献度も上がりませんし、何より依頼料は半額と下がってしまいます」

 なるほど、そうやって上位ランクのものが下位ランクの仕事を奪わないようにしているようだった。

「わかった」

 それから俺たちは朝寄ろうとしていた掲示板のところへ移動した。


「いきなり、ランク5ってびっくりしたわね」

「だな、おかげで楽にはなったけど」

「そうよね、いつまでゴブリン退治すればいいのかって、思ってたから」

「俺も、スライムって面白くないし」

「ほんとよね」

 俺たちのこの会話は周囲の冒険者たちにとっては驚愕だろう、なぜならスライムやゴブリンだって別に弱くはない、ランク1や2の冒険者にとっては1匹でも結構厄介な魔物だ。

 ちなみに通常のランクアップには、貢献度というものが関わってくる。

 この貢献度は、ギルドに対する貢献度というもので、依頼をこなせば手に入れることができる。

 これは、依頼の難易度や、昨日の俺たちのように討伐依頼を受けて依頼書に書かれていた数より多くの討伐をすればより多くもらえるというわけだ。

 しかし、当然ゲームのレベルと同じようにランクが上がれば次のランクに上がるための必要貢献度も高くなるというシステムだ。

「さてと、それじゃ、どれやる」

「そうね、オーク討伐がいいんじゃない」

「オークか、まぁ、妥当だろうな」

 この世界にはゴブリンに続いて有名魔物、オークがいる。

 といってもこのオークもゲームと違い、別に女性が襲われるわけではないことは付け加える必要があるだろう、しかし、いったい誰がオークやゴブリンをそんな存在に仕立て上げたのかと、期待させやがってと文句を言いたい。

 もう一つ言っておくとオークというのはランク5で受けられる討伐依頼の最難易度のものだ。


 オークが巣くっているというビリヌル遺跡に行くには、今から準備してすぐに出ても、最短ルートである昨日行ったタルブの森を抜ける方法でも2日かかる場所にある。

「どうする、移動だけでも2日だろ、もう、夜になってるだろうし遺跡近くで野宿してから討伐に入ったほうが良いだろ」

「うん、そうね、大丈夫だと思うけど、油断するわけにはいかないし、万全の状態で挑んだほうが良いよね」

「だな」

 というわけで俺たちは5日の日程で準備をすることにした。

 準備といっても俺とフィーナは実家からこの街まで、数日間野宿をしながらの旅を続けて、ようやく昨日ついたばかりだ。

 だから、そんなに準備をすることはなかった。

「それじゃ、行くか」

「ええ」

 こうして俺たちは一路オーク討伐に向けて出発した。


タルブの森に向かうために昨日と同じく北門から出た。

「まさか、一日でこの森での生活から抜けられるとは思わなかったよな」

「うん、短すぎて何も感じられないけどね」

「だな」

 この森でスライムやゴブリンを狩っても低ランクの仕事を奪うだけだし、何より意味がないため昨日と違ってエンカウントしても無視しながら進んでいった。

「フィーナって魔法使ってないのに早いよな」

 昨日ほどじゃないけど、今日も結構早く走りながら移動していた。

 スライムたちをよけながら俺はふと尋ねてみた。

「まぁ、小さいころから鍛えてるからね、ファルターだって、魔法使わなくても結構早いでしょ」

「わかるか」

「うん、走り方とか息遣い見ればね。それにしてもなんでファルターってそんなに魔法も武術もできるの、魔法はともかく、武術に関してはあまり才能があるようには見えないんだけど」

 その言葉を聞いてさすがにばれていたかと思った。

「さすがだな、まぁ、実際武術の才能はなかったからな、小さいときは苦労したぜ、魔法はすぐに覚えたのに武術の技なんかはなかなかでさ」

「その割には多彩な技を持ってそうだけど、誰に習ったの」

「ああ、まぁ、母さんが武術系冒険者だったからな」

 俺は母さんに武術を習ったわけではないが、前世の記憶だとは言えず、ごまかすようにそういった。

「へぇ、そうなんだ、それじゃ、魔法はお父さんから」

「まぁな、俺の一族は先祖代々魔法力が強いらしくてな、何でも6代まえの先祖はドラゴン退治とかしたらしい」

「ドラゴンをすごいじゃない、ということはファルターもそれぐらいの魔法は使えるんだ」

「ああ、でも、俺が今使える最大魔法は超級だからな、最弱のドラゴンは倒せるけどそれ以上は無理だぜ、しかも超級は1回で俺の魔力のほとんどを使っちまうし」

「ああ、もしかして昨日の回復魔法って超級?」

 フィーナは俺の話を聞いて昨日のフルケアがそうだと感じたようだ。

「いや、あれは、上級の上位魔法だよ、あれは切断直後だったから生えてきたけど、しばらくたったものは無理だ」

「そうなの」

「ああ」

「そういえばファルターの得意魔法って何、今までいろいろやってるよね」

「ああ、一応すべてだよ。家の一族はみんな全属性が得意なんだ」

 俺は正直に答えた。戦闘のことを考えると必要なことだったからだ。

「へぇ、すごいそんなこと初めて聞いた」

 フィーナは驚いていた。

「まぁ、そうだろうな、普通はどれか一つだったり、たまに2つとかもいるみたいだけど」

「そうなんだ、すごいわね。あっ、そろそろ抜けそうだよ」

「ああ、ほんとだ」

 会話をしながら走っているとどうやら森を抜けたようで、街道が見えてきた。

 この街道、実はセルミナルクの北門と通じている街道だったりする。

 つまり、本来は北門からでて街道をまっすぐに進めばわざわざスライムやゴブリンが出るタルブの森を抜ける必要はない。

 それじゃ、なぜ俺たちがこのルートを選んだかというと、街道を通るとここまで3日はかかる、しかし、俺たちは森を抜けたことで、1日でたどり着くことができた。

「今日はもう遅くなりそうだしこのあたりで野宿するか」

「うん、わかった、食料も狩ってあるし準備しようか」

 食料は森の中で走りながら適当に狩ったウサギのような小動物が数匹と木の実、あとは街で買ったものだ。

 こうして俺たちのオーク討伐の1日目が終了した。


 2日目の朝、目が覚めると交代で見張っていたフィーナと目が合った。

「おはよう」

「おはよう、眠れた?」

「ああ、おかげでな」

「そう、よかった、えっと、オークがいるのは、ここから北東のビリヌル遺跡だったよね」

「そうそう、そこに生息しているから一掃してほしいという依頼だったな」

 ビリヌル遺跡というのは、今から1万年前に存在していた古代文明の遺跡で、この遺跡は当時の神殿だったといわれている。

 神殿に巣くうってまたずいぶんと罰当たりなオークたちである。

「そんじゃ、飯食って行くか」

「ええ、そうだね」

 それから俺たちは朝食を済ませて遺跡めがけて再び北東に広がる森の中に入っていった。


 2日目に入った森は特に魔物がいるわけでもない普通の森で、近くに街や村もないためにいまだ名前のついていない名もなき森だ。

 この森もタルブの森に引けを取らない広さのため昨日と同じように走っても、夕方になってようやく遺跡が見えてきた。

「あそこがビリヌル遺跡?」

「そうみたいだな」

 俺たちの目に飛び込んできたのは石造りの建物跡が見えるだけだった。

 どうやらオークは遺跡の地下に住み着いているようだった。

「あそこにどのくらいいるのかしら」

「話によると10頭ぐらいはいるらしいけどな、実際にはそのくらいいるのやら」

「そうね、でも、ギルドの調査で10頭ってことは大体あってると思うけどね」

「だな」

「それで、今日はどうするの」

「そうだな、思ってたより早く着いたし、先に片づけてから休むか」

「いいけど、ファルター、疲れてない」

「ああ、大丈夫だ、フィーナは?」

「私も大丈夫」

「そんじゃ、決まりだな」

 俺たちは簡単な作戦を立ててからオークがいるのであろう地下に乗り込んだ。


 遺跡の地下にフィーナを先頭にして進んでいく、普通なら男の俺が先頭に立つものだと思うが、俺は魔法使いで後衛、フィーナは近接戦闘の前衛だから仕方ないし、俺としては特に違和感を覚えていない。なにせ、前世ではおばさんや妹が武術をやっていたし、今も実家では母さんと妹のエニスが武術をやっているからだと思う、俺の周りには強い女が多すぎる。

 というわけで特にもめるわけでもなく地下を進んでいった。

 遺跡の地下は予想通り湿っていて、オークどもの匂いか獣集が漂っていて結構臭かった。

「くさいな」

「うん、すごいにおい」

 俺もフィーナもお互いに小声で言いながら鼻を軽くつまみながら歩いていた。

「グワァ」

 すると獣のような声が聞こえてきて、巨大な影が俺たちにオノを振りかざしてきた。

「うぉ、いきなりだな」

 俺はそういいながらも手早く手のひらにウィンドカッターを作り出しそれを放った。

 すると、オノを振り上げていたオークの手が切断された。

 それと同時にフィーナがこぶしをオークの鳩尾にめり込ませたことでオークは音もなく絶命した。

「ふぅ、結構固い」

「その割には一撃だったな」

「ファルターが腕を切っていたおかげで、がら空きだったからね」

 俺たちはおとといであったばかりとは思えないほどの連携をとっていた。

「ああ、フィーナならそこを突くと思ってたからな」

 なぜかわからないが俺にはフィーナがどうするか手に取るようにわかるのだった。

「おっと、そんな話をしている間に次が来たな」

「あ、そうみたいね」

「んじゃ、さっさと片づけるか」

「了解」

 こうして、俺たちは次々に襲い来るオークどもを時には連携して、時には各個撃破していった。

 そして、1時間足らずですべてのオークを討伐してしまったのだった。

「これで、終わりか」

「うん、たぶん、もう気配ないよね」

「ああ、探知でもかからないからそうだろうな」

 俺は、聖属性魔法の探知魔法を使いあたりをくまなく調べたがあたりには何もいないようだった。

 オークなどの魔物にはどの個体も生来闇属性を持っている。

探知魔法とは、微弱の魔力を聖属性にして周囲に放出、その際魔物の闇属性がこの聖属性に反応し、それが帰ってくるというソナーのようなものだ。

といっても、この魔法は、ゴブリンやスライムといった脆弱な魔物には反応しないという欠点はあるが、今回の討伐目標であるオークにははっきりと反応してくれる。非常に便利な魔法だ。しかも、魔力は魔法という事象にしてしまうと障害物にあたるが、そのもだと障害物を通り抜けてしまうという性質を持っている。

おかげで、こういった地下でも問題なく探知できるのだ。

ちなみに、これは魔法使いならだれでもできるし、属性を闇属性変えることで、人間や普通の動物にも使えるという本当に使える魔法だった。

「そんじゃ、地上に戻るか」

「そうね」

 本来冒険者ならここで遺跡内の探索と行きたいが、この遺跡はずいぶんと昔に掘りつくしているし、何より神殿であったこの遺跡にお宝が眠っているというゲームみたいなことは当然ない、だから、こんなジメジメした場所はさっさと出ていきたい気分だった。


 こうして俺たちはあっという間にオークを全滅させて遺跡を脱出した。

「もう、結構暗くなってきているな」

 短い時間とはいえ、もうあたりはすっかり暗くなっていた。

「うん、今日は、あそこで野宿にしましょう」

 そういってフィーナが指さしたのは遺跡の裏手にある崖の下、ここなら背後をとられることはない。

「だな」

 それから俺たちは、それぞれ荷物から食料を取り出したり、焚火の準備などをした。

「ふぅ、しかし、オークっていうのは、思っていたより弱かったな」

「うん、確かに、でも、それって私たちが強すぎるからじゃない」

「そうかもな、まぁ、今の俺たちでもオークじゃオーバーキルだよな」

 などと自信に満ち溢れたある意味危険な会話をしていた。

 まさにその時だった。

 ゴォォ

 などという轟音が耳に飛び込んできた。

『認証しました』

 という、機械的な声があたりに響いてきた。

「えっ、な、なに」

「さ、さぁ、わからない、油断するなよ」

 俺たちはうなずきあうと同時に身構えた。

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