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第33話 襲撃

 つかの間の平穏を楽しんでいた俺のもとに突如襲撃してきた者がいる。

 言っておくが、暗殺ギルドではない、暗殺ギルドなら日常茶飯事だし、今更述べることでもない。

 その襲撃はあまりにも突然で、俺は驚きとともに座っていた椅子から飛んだ。

 ちなみにフィーナも同じく飛び、難を逃れている。

 ふと見てみると、俺たちが座っていた椅子とテーブルが粉々になっていた。

 すさまじい攻撃であった。

 そんな惨状を見て新しいテーブルを買わないとな、などと馬鹿なことを考えていると襲撃者は俺をターゲットに定めて、先ほど椅子とテーブルを粉砕した槍を持ち直して襲い掛かってきた。

 それを見たフィーナが助太刀しようかと迷っていたので、俺は片手でそれを制し応戦した。

 襲撃者の槍はすさまじく、俺も強化魔法を行使しての応戦となった。

 それを見た襲撃者は一層威力を上げて猛烈な突きを連続してはなってきた。

「うぉぅ」

 俺はそんな声とともに何とかさばくことに成功した。

 そして、連続突きがようやく収まりかけたところで、何とか襲撃者の槍をつかむことに成功した。

 それからは簡単だ、つかんだ槍を支点に体を回転させて襲撃者の槍を封じたのだ。

 そして、襲撃者に一言。

「なぁ、これ、そろそろやめないか、きつくなってきたんだけど……」

 なんとも弱気な発言である。

「いや」

 それに対して襲撃者は強く反発した。

「……嫌なのか」

 俺はため息とともにそうつぶやいた。

「それにしても、エニス、どうしてここに?」

 俺は襲撃者、そうこの世界での妹エニスに尋ねたのだった。

「す、すみません、ファルター様のお身内と伺っていましたので、まさか、このようなことに……」

 するとエニスが答える前にそんな声が聞こえた。

 ルミナとアルディであった。

「ああ、お前たちが連れてきたのか」

「はい、すみません」

 2人は謝ってきた。

「ああ、気にするな、これはあいさつみたいなものだからな」

「挨拶、ですか」

「俺としては、やめたいけどな」

「そうでしたか、さすがですね」

「ところで、母さんと父さんも一緒か」

「うん」

 俺が尋ねるとエニスがそう答えた。

 まぁ、そうだよな、エニスはまだ12歳、1人で来るとは思えなかった。

「ファルター様のご両親でしたら、ギルド長と話があるということで、エニスさんをお連れしたのです」

 ルミナがそう答えた。

 そういえば俺はギルドに父さんの冒険者カードを預けているし、ギルド長のクジャリは2人と知り合いだったみたいだしな。

 そんなことを話していると、フィーナがやってきた。

「ねぇ、ファルター、その子がエニスちゃん」

「ああ、妹のエニスだ、ほら、エニス、この人はフィーナ、兄ちゃんの相棒だぞ」

 俺は、エニスにフィーナの紹介をした。

「お兄ちゃんの、相棒?」

「そうよ、よろしくね。エニスちゃん」

「うん」

 どうやらエニスとフィーナは仲良くなれそうだ。

「へぇ、いいところじゃないか、これなら、俺たちも住めそうだな」

「そうね、使用人とか、ずいぶんと贅沢しているみたいね」

 そんな声とともに父さんと母さんが現れた。

 ていうか今父さんが聞き捨てならない言葉を言った気がするんだけど、ここに住むっていわなかった。

「父さん、母さん、どうしたんだ……」

 俺がそこまで行ったところで、波乱が巻き起こった。

「ただいまぁ、お兄ちゃん、聞いて聞いて」

「ただいま、戻りました、お兄さん、フィーナ様」

「たっだいま」

 そう、俺の前世での妹愛美が帰ってきたのだった。

「うわ、このタイミングかよ」

 俺は今後の展開を考えて頭が痛くなった。

「……おい、ファルター、どういうことだ、あんな、かわいい娘にお兄ちゃんだぁ」

 父さんがよくわからないことでお怒りだった。

「ファルター、隠れて妹を作るなんて、お母さん哀しいわ」

 続いて母さんまでよくわからないことを言ってきた。

「お兄ちゃん、その人たち誰」

 ここにきて愛美までも父さんたちを見て俺に尋ねてくる始末だった。

「えっと、なんていうか……」

 俺はここにきて最大に戸惑った。

「おい、説明しろ」

 俺は盛大にため息をつきながらすべてを話ことにした。

「わかったよ、説明するから、その殺気を消してくれ」

「それは説明による」

「はぁ、わかったよ、えっと、そうだな、父さんと母さんは気が付いているんだろ、俺が転生者だってことは」

 俺も確信があるわけじゃないか2人なら気が付いているだろう思ったのだった。

「当り前だ」

「当然ね」

 やはり気が付いていたようだった。

「なら話が早いけど、こいつは、愛美といって、俺の前世での妹なんだよ」

「前世の、それにしてはずいぶんと年が近そうだけど、もしかして年の離れた兄妹だったのかしら」

「いや、2つちがいだよ」

 俺がそういうと2人とも疑問符を浮かべた。

 そこで、さらに話をすることにした。

「……というわけ」

「なるほどな、つまり、そのこ、マナミだっけ、はもう元の世界には戻れないと」

「行くところがないのね」

 どうやら2人は理解してくれたようだ。

「ああ、そういうこと」

「そう……」

 すると母さんが突然俺の目の前から消えた。

 まぁ、正確には消えたような速度で移動しただけなんだけど、気が付いたら愛美を抱きしめていた。

「えっ、えっ」

 愛美は戸惑っていた、それはそうだろ、突然消えた人間がいつの間にか自分を抱きしめているんだから、武術を極めている愛美からしたらありえないことだろうからな。

「マナミちゃんだったわね」

「えっ、あっ、はい、えっと」

「確かにファルターはあなたのお兄ちゃんだったかもしれないわ。でも、今は、私が産んだ息子よ」

「は、はい」

 母さんがそんなことを言ったので愛美は少し微妙な表情をした。

 確かに母さんの言っていることはわかる、今の俺は愛美の兄僚一ではないからだ。

 しかし、それでも俺にとっては大事な妹だ、だから母さんにそう言おうと思ったが、それは早計だった。

「その、ファルターがあなたを妹だっていうなら、あなたは私たちの娘ってことよ」

「えっ!」

「んっ」

 俺と愛美は同時に疑問の声を上げた。

「そうだな、俺としては娘が増えるのはうれしい限りだぜ」

「あっ」

 父さんも愛美に近づき愛美の頭に手を当てながらそういった。

「私たちじゃ、いやかもしれないけどね」

「ううん、いやじゃ、ないです」

 母さんの言葉に愛美も嬉しそうに答えた。

 どうやら、愛美がこの世界でも俺の妹となったようだ。

「そうだ、ついでにあなたたちも私たちの娘になりなさい」

「えっ、わ、私たちもですか」

「本当に!」

 そこで突然うらやましそうに眺めていたサーラとクルムまで娘にすると言い出した。

「そうよ、ねぇ、マルス」

「ああ、まさか娘が4人になるなんて、最高じゃねぇか」

「……?」

 その時俺の隣で疑問符を浮かべているエニスがいた。

「エニス、よかったな、お前のお姉ちゃんが3人も増えたぞ」

「お姉ちゃん?」

「ああ、そうだぞ」

「お姉ちゃん」

 エニスはようやく理解したのかそのまま愛美たちに抱き着いて行った。

「うわぁ、えっと」

「エニスだ。この世界での妹、まぁ、たった今、お前たちの妹になったわけだけどな」

「そうなんだ、えっと、エニスちゃん、よろしくね」

「うん」

「うわぁ、かわいい」

「うん、うん、ほんとだよね」

 こうして妹たちはあっという間に仲良くなったようだ。

 それを見た母さんは嬉しそうにしていたが、再びその姿が消えた。

 そして、次の瞬間フィーナのそばに立っていた。

「あなたが、フィーナちゃん」

「えっ、あっ、はい」

 突然のことでフィーナが対応できずにいた。

「そう、クジャリからは聞いているは、武術大会で優勝したそうね」

「はい、何とかですけど」

「そう、ちょっと、その力見せてくれる」

 などといきなり母さんがフィーナに言ってのけた。

 対するフィーナはというと……

「お願いします、ファルターから聞いていて、私もお義母さんと手合わせしてみたかったんです」

 こうして始まったのはほんとの超絶バトルだった。

 俺もそうだが、愛美たちも唖然としてそのバトルを見ていた。

「……す、すごいね」

「だろ、あれは一種の化け物だからな」

「……」

 俺は改めて母さんを化け物だと思った。何せ、フィーナは最初、ブースターを使わずに始めた。その理由は母さんがブースターを持っていなかったからだけど、それだと母さんには全く通用しなかった。

「それを使ってもいいわよ」

 などと母さんが言った途端、フィーナもブースターを徐々に使い始め、ついには最大出力で使い始めた。

 そして、そのフィーナに母さんは難なくついて行っているというとんでもないことが、今俺たちの目の前で起きていることだった。

 そんな風に唖然としながら見ているとついに2人の戦いが終わったようだ。

「あ、ありがとうございます」

「うん、すごいわね、そのブースターっていうの」

 いや、すごいのはそれに就いて行っている母さんの方だよ。

 俺は、心の中で盛大にそう突っ込んでいた。

「ファルター、いいお嫁さんを見つけたわね。うーん、街に出てくるものね、まさか、娘が増えるだけじゃなくてお嫁さんまでいるなんてね。フィーナちゃん、後でファルターの好物の作り方教えてあげるわね」

「はい、お願いします。お義母さん」

 こうして、よくわからないけど、フィーナが俺の嫁として母さんに認められたようだ。

 一方父さんは急に増えた娘を嬉しそうに眺めていた。

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