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第21話 第2回戦

 何とか1回戦を突破したが、試合が第1試合であり2回戦は明日となるため今日は早々に暇となった。

 そこで、第1ブロックで試合をするフィーナの応援をしようと俺の応援に来ていた使用人たちとともに会場へと足を運ぶことにした。

「フィーナの試合はいつなんだろうな」

「はい、旦那様と同じく第1試合でないといいのですが」

「そうだな、まぁ、フィーナが負けることなんてありえないから、そうなったらほかの試合でも見て楽しむしかないだろうな」

「ええ、そうですね」

 そんな会話をしつつ会場に向かうと、フィーナの応援に向かった使用人たちが観客席に座っていた。

「旦那様! いかがいたしました」

 すると俺に気が付いた1人がそう声をかけてきた。

「俺の試合が終わったからな、フィーナの応援にきた」

「そうでしたか、それはよかったです。奥様の試合は第4試合で次の試合ですからちょうどよかったですね」

「奥様も喜ばれますよ」

「そうか」

 そうこうしていると試合が終わりフィーナの番がやってきて、ここでも司会がフィーナの紹介をしている。

「さぁ続いての試合、まず紹介するのはその可憐な姿からは想像できませんが、冒険者となってからわずか1年でドラゴン討伐をはじめ数々の功績を残した才女。フィーナ選手」

 フィーナの紹介は若干俺と被るところはあったが観客の歓声は俺とは比較にならないぐらい上がっていた。まぁ、当然だろう、俺は普通な感じだけど、フィーナはなんだかんだでかなりの美少女だからな。

 さて、そんなこんなで始まった試合だったが、一言でいうとあっという間だった。

 試合開始直後、動き出したフィーナ、その動きについていけなかった相手は一撃のもと沈んだのだった。

「……」

 会場はその瞬間静まり返った。

 何が起きたのかすらわからない、そんな状態だったに違いない。

「えっ、えっと、フィーナ選手の勝利です」

 それでもいち早く再起動した司会によってフィーナの勝利が宣言された。

「一撃って、早すぎだろ」

 俺はそう思いながらもフィーナの強さを改めて驚愕していた。

 その時試合を終えたフィーナが俺の存在に気が付いたようだ。

『見に来てたんだ。そっちはどう?』

 当然フィーナと俺の位置は遠い、さすがに声は届かない。そこで、フィーナは手ぶりで話しかけてきた。

『ああ、俺も勝ったぞ』

 俺もまた同じ手ぶりで答えた。

 上森は隠密の技術もある。そのため、こういった声の聞こえない場所や出せない場所においてのコミュニケーションのために開発されたものがこれだ。

 最初はフィーナが上森だと知らなかったし、フィーナも同じく知らなかった。

 しかし、フィーナが上森の末裔であるということから確認したところ変わらずに使っていることが判明して、お互い使うことにしたのだった。

 それから暇となった俺たちはほかの1回戦を見ながらその日を過ごし、そして、翌日2回戦へと向かった。


 2回戦は俺が昨日と同じ第1試合、フィーナが第2試合ということで、移動を考えるとお互いに応援に行けないことが分かっていた。

「ファルター頑張ってね」

「フィーナもな」

 そこでお互いの健闘を祈りつつ別れた。


「さぁ、ついに第2回戦の開始です。昨日全大会5位の実力を持つグリノマ選手を魔法使いでありながら倒すという大番狂わせを引き起こしたファルター選手、本日はどのような戦いを見せてくれるのか見ものです……」

 などと昨日に続いて紹介を受けた。

 そして、その俺の相手なんだが……

「対するは、これまた無名でありながら華麗な戦いを繰り広げた美しき剣士ミルバ選手」

 そう、2回戦の相手は女だった。それも飛び切りの美女。

 長く一緒にいるせいか忘れがちだがフィーナも相当なものだ。

 しかし、フィーナは15歳という年齢から幼さが残る、つまりは少女だ。

 でも、このミルバという女はおそらく20歳付近、大人としての魅力も加わりフィーナとは別種の美しさを持っている。

 そういう相手だとかなりやりづらいが、俺もだてに強い女たちを周囲にもっていない。

「さぁ、試合開始です」

 そんなことを考えていると試合が開始された。

 するとその声と同時にミルバは腰に差した剣を抜き放ち勢いよく斬りかかってきた。

「あたしはグリノマとは違うよ」

 そういって何度も剣戟を繰り返してきた。

 おかげで軽いパニックだ。

 それでも何とかさばきつつミルバと距離をとった。

「ふぅ、あっぶねぇ、斬られるかと思った」

 何とか距離を取りそうつぶやくとミルバも動きを止めた。

「まさか、あれを防ぎきるとはね、グリノマに勝利したのも偶然じゃなさそうだね」

「そりゃぁ、それなりに鍛えているからな」

「ふん、そうかい、あんた体術が得意みたいだけど、その腰の者は飾りかい」

 そういってミルバは俺の腰に刺さった刀を指さしてきた。

「これか、別に飾りじゃないけど、確かに、剣士相手に体術はきついものがあるからな」

 そういって俺は遅ればせながら腰の刀を抜いた。

「へぇ、変わった剣だねぇ、でも、そんなものじゃあたしの剣は防げないよ」

 そういって再びミルバは斬りかかってきた。

 そして、今度は手首をひねりつつ刀の鎬部分で相手の刃をさばき始めた。

 俺は何とかさばきつつ何度か斬りつけたがそれを裁かれるという、やり取りを数回繰り返した。


 俺とミルバの戦いはお互いに剣戟の応酬という1回戦の時と同じくかなり盛り上がった戦いとなった。

 おかげで観客は盛り上がったが、俺としてはたまらない。

 いい加減そろそろ決着をつけたくなってきた。

 そこで、俺はあることをすることにした。

 それをするために俺はいったん刀を鞘にしまった。

「……もうあきらめたのかい」

 軽く肩で息をしながら問いかけてきた。

「いや、これからだよ」

 俺はそう言って抜刀の構えをとった。

「なるほど、珍しい剣技ってわけかい、いいだろう、見せてもらうよ」

 そういってミルバも構えをとった。どうやらミルバもこれで終わりにしようと考えたようだ。

 そして、ミルバが一気に距離を詰めつつ今までにない剣戟を繰り広げてきた。

 それを紙一重でかわしつつ、抜刀しその刃をミルバの剣に当てた。

 ギンッ

 甲高い音とともにミルバの剣が真っ二つとなった。

「……どうやら、あたしの負け見たいだね。まさか、あたしの剣が斬られるなんてね」

「悪いな、これしか思いつかなかった」

「まぁ、いいさ、これも勝負だからね」

 そういってミルバは武舞台を後にしたのだった。

「えっと、ミルバ選手、降参ということでファルター選手の勝利です」

 司会がそう宣言すると会場が沸き立った。

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