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第20話 予選開始

 ついに今日から武術大会予選が始まる。

 予選はそれぞれのブロック、予選の予選を勝ち抜いてきた16名によるトーナメント方式で行われる。

 俺とフィーナはそれぞれのブロックで勝ち進み、予選出場を決めている。

 トーナメントの組み合わせはこれから行われる抽選で決め、、そのあとすぐに第1試合が開始されるそうだ。

 そのためにお互いに応援に行けないという問題があるが、まぁ、フィーナが負けるとは思えないし大丈夫だろ、そんなことを思いながら抽選をすると2を引いた。

 つまり、第1試合というわけだ。


 抽選の後、特にすることもないので試合開始まで控室(偶数を引いた者たち用)で待つことにした。

 この時相手がだれかはわからないがとくには気にならなかった。

 その理由は最初こそ指導を中心としていた一族だが、戦国時代なんかにはあらゆる武術の源流ということで敵がどんな技を使ってきても対処できるということから、主に不測の事態が起きた時の対策要員が中心となっていた。

 そのため実際に対峙して対策を練ることがスタンスとなっているところがあった。

だから、相手がだれであれ問題はないということだ。

というわけでのんびりと待っていようとしたけど、それはできなかった。

「魔法使いが歴史ある武術大会に出るとか、俺たちを馬鹿にしてんのか」

 そういってきたのはなんだかガラの悪い1人の男だった。

「やめとけ、そいつがファルターってやつだぜ」

 俺が何か反応をしようとしたところで別のところから反応がやってきた。

「ヤーム、知っているのか」

 反応したのはヤーム、俺と同じく冒険者でギルドでも何度も顔を合わせている奴だ。

 確か、結構なベテランだったと思う。

「まぁな、同じ冒険者だしな。そいつはあのドラゴンを討伐した魔法使いだ」

「まじか!! いや、まて、そうだったとしても魔法使いが武術大会に出るってどういうことだよ」

「ファルターはなぜか魔法と武術両方の才能をもっているんだよ」

「うそだろ」

「ありえないだろ」

「それについては、俺たちギルドも最初はそう思ったけどな、だが、実際にブルックリム要塞の戦いで、敵がブースターを改造した部隊を導入してきたんだが、その相手に魔法をほとんど使わずに対処したんだよ。あれを見たとき自分の才能がちんけに見えたぜ」

「まじかよ」

 その場にいた全員があっけにとられていた。

「それにだ、ここにいる時点でただの魔法使いじゃねぇだろう」

 それもそのはず、ここには武術ができないやつがいるわけがなかった。

「……確かに……」

 そんなことをしていると扉がノックされて1人の人物が現れた。

「ファルターさん、試合をそろそろ開始しますので武舞台に登場してください」

「おっ、わかった、今行く」

 俺は立ち上がると扉から出て行った。


 そして、武舞台に上がって周りを見るとものすごい観客数だった。

 これだけで街の住人全員がいるんじゃないかと思うほどの数だった。

 その分歓声もものすごい、こういった場所に慣れない俺としては飲まれそうだ。

 ――――――ヤッベ緊張してきた。

「さぁ、5年に1度の武術の祭典武術大会セルミナルク地区予選、第2ブロックトーナメントを開始します」

 武舞台で司会をする美人が高らかにそう宣言した。

「さて、第1試合の選手を紹介いたします。まず、各地を巡り依頼をこなすス号で冒険者であり、前回、本選出場を果たし5位という成績を残した実力者でもある。グリノム選手」

 司会の紹介を受けて俺とは反対側から出てきた体格のいい男が片手をあげて前に出てきた。

「うぉぉぉう」

 何やら叫んでいる。

「続きまして、冒険者となってわずか1年で急成長を見せ、またドラゴン討伐まで果たした稀代の魔法使いでありながら武術の才能も持つという異色の存在。その実力は未知数、ファルター選手」

 俺の紹介を聞いた瞬間会場がどよめきだした。

 それはそうだろう、この世界では魔法の才能と武術の才能が混在することはありえない、実際俺には魔法の才能はあるが武術の才能はない。といっても司会を含め多くの連中がそれを知らないし確認するすべもないから仕方ないのかもしれない。

「さぁ、第1試合開始です」

 そんなことを考えていると試合が始まったようだ。

「魔法と武術、その才能が混在することはない、ドラゴン討伐ということから魔法の才能に優れているんだろう。だったら、武術はたいしたことはない」

 そう言ってグリノマは一気に迫ってきた。

 どうやら早々に終わらせるつもりのようだ。

 だが、そうはいかない俺はその勢いを受け流すようにグリノマを投げた。

 いわゆる合気道のような技だ。

「なっ、妙な技を……」

 さすがに本選5位に入賞しただけはある。この世界にはない今の技を受け流すとは油断できない。

 その後、お互いに数合攻防を繰り返した。

 グリノマは思っていたよりも強く一瞬たりとも油断ができない状態が続いていた。

「くっ、ま、まさか、ここまでとは……」

 するといったん離れたグリノマがそうつぶやいた。

「そっちこそ、さすがは5位だな、それに恥じない実力だと思うよ。でも……」

 俺は最後の勝負に出た。

「なっ、バカな」

 俺は素早く動いて翻弄しつつグリノマの死角を抜け一気に懐にもぐりこんだ。

 そして、突然懐に現れた俺に驚いているすきに掌底を人体の急所でもある水月に打ち込んだ。

「ぐぼぉっ」

 グリノマはくぐもった声を出しながら武舞台に沈んだ。

「グリノマ選手沈んだまま動かない、これはファルター選手の勝利だぁぁ」

 すると司会の美女がそう宣言すると会場が沸き立った。

「うぉぉぉ、すげぇ」

「いいぞ」

 グリノマは強かったがそれでも俺が今まで出会った強者たちからしたら一段下がる。だからこそ俺は勝つことができたと思う。

 まぁ、そんなわけで1回戦は勝利ということで終わった。

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