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第13話 なんか、おかしくない?

 ブルックリム要塞に到着してから1週間がたった。

 到着のその日、バカは配置につけと言っていたが、さすがに到着のその日に戦場はないだろ、というわけでブリネオと副司令官(元司令官)の計らいで休養を取ることになった。

 そして、次の日から俺とフィーナ以外は参加となった。

 なぜ、俺とフィーナ以外かというと、俺たちがまだ14歳だからだそうだ。

 これはバカの発言で、俺たちを見るなりいきなりなんでガキがいるんだと吠え、ガキは雑用でもしていろと言ってきたからだ。

 もちろん俺たちの実力を知るセルミナルク勢は反対した。

 しかし、バカは全く持って聞く耳を持たなかったのだ。

 こうして、俺は戦争に参加せず、何をしに来たんだろと思いながら雑用をこなし、回復魔法を唱えまくっているという現状だ。

 ちなみに回復魔法を唱えまくっている理由は、最初のころ、けがをしたセルミナルクの仲間に頼まれてかけたのを司令官の部下に見られていたことが原因だ。

 回復魔法は魔法使いであれば基本的には使える。

 しかし、それはせいぜい体力を少し回復させる程度でしかない。

 けがを治せるレベルに到達するには聖属性が得意で、中級の上位魔法が扱える必要があるということだ。

 実はこの存在は結構まれで、まず聖属性が得意な人間が少ない、いたとしても教会が抱えているためにあまりこういった地方の要塞まではやってこない。そして、何より、中級上位魔法を扱えるものも希少だったりするので、なお少なくなってくる。

 そんなとき俺がそのレベルの魔法を使えるということで利用されているというわけだ。

 まぁ、それはいい、けがをしたやつをほっておくほど俺も非情な人間じゃない。

 しかし、問題なのはけが人の数と、今日にいたってはけがの仕方だ。

 要塞で籠城戦をしているはずなのになぜか斬られた傷が多い。

 俺はそれを見て乗り込まれたのかと思った。

「いや、乗り込まれてはないぜ」

「じゃぁ、なんでだ」

「バカの作戦だよ」

 ますます訳が分からない。

 まぁ、それはともかく、結構忙しい。


 昼付近となりそろそろ腹が減ってきたし、けが人も落ち着いてきたころで俺は昼飯を食うために食堂に向かった。

 この要塞の食堂は前司令官、今の副司令官の配慮か結構飯がうまい。

 なんでもうまい飯は活力につながり戦果も上がるという持論を持っているそうだ。

 俺もその意見には同意したい。まずい飯じゃ確かに力なんてわかないからな。

 そう思いつつ、この1週間ずっと使っているテーブルに着いた。

 それから少しするとごつい男たちの中に美少女がお盆をもって現れ、俺の前に置いた。

 そして、お盆にはもう1つ同じものが置かれており、美少女はそれを俺の目の前の席に置き自身は椅子を引いてそこに座った。

 ちなみにここの食堂のシステムは自分で料理を取りに行くというもので、決して美少女が持ってきてくれるというものではない。

 では、なぜ俺だけかというと、持ってきた美少女がフィーナだからである。

 最初のころは俺もフィーナもそれぞれが自分で取りに行っていた。

 しかし、俺たちのことを知らないミドクリグの冒険者が勇敢にも食堂で働くフィーナに手を出そうとしてしまった。

 その結果、そいつはぼこぼこにされた。その後なぜか俺が治療する羽目になったが……

 ちなみにその勇者とその時見ていたやつらは今、食堂に近寄ろうともしなくなった。

 その後も手は出さなくても声をかけるものは多くいた。それがうっとうしかったフィーナは、考えた末に俺というすでに決めたやつがいるということをアピールすることだった。

 それにより今のフィーナが運んできて2人で向かい合って同じものを食べるという行為だった。

「私たちいつまでこれやっていればいいのよ」

 これは食堂での仕事のことだろう不満たらたらである。

「さぁな、バカがいなくなるまでじゃないか」

「もう、何しに来たんだろ」

「確かに、俺もいい加減回復魔法に飽きてきた」

「でも、ファルターは魔法使えば魔力は上がるじゃない。私なんて体がなまりそうよ」

「それについては同感だ」

「それで、そっちはどうなの、けが人多い?」

「ああ、多いな、それになんでか今日は斬られた傷が一番多い」

「はぁ、斬られたって、これ、籠城戦よね」

「そのはずなんだけどな」

「??」

 俺たちはお互いに首をひねってみた。

「まぁ、ひと段落ついたら、ちょっと見てくるよ」

「うん、そうしてみて」


 昼飯を終えて少ししてからフィーナにも告げたようにとりあえず戦況を自分で見るために城壁まで行ってみた。

「よう、ファルターじゃねぇか」

「ああ、グフタスか、まだ、生きてたんだな」

「当り前だろ、そう簡単に死んでたまるかよ」

「それで、状況は?」

「見ての通りだ」

 そういってグフタスが城壁の下を指さしたので、俺はのぞき込んでみた。

「……」

 俺は下を見て絶句した。

「……なぁ、グフタス、あれは何をしているんだ?」

 ようやく起動して何とかグフタスに尋ねてみた。

「……戦闘だろ」

 グフタスもただ聞かれたことを答えるしかないようだ。

「いや、そうじゃねぇよ。あいつらは何をしているんだよ。道理で、斬られた傷が多いわけだ!」

 俺は思わず吠えていた。

 何せ、俺の目の前では信じられない光景が広がっていた。

 なぜなら、通常、攻城側はバリスタや投石機を用いて攻撃しながら、櫓またははしご、破城槌などをもって城壁を越えたり、城門を破ってなだれ込んだりする。

 一方今俺たちの立場である、籠城側は、弓やバリスタ、魔法などを用いて櫓やはしご、破城槌を持ったり上っている敵兵を攻撃し邪魔をする。

 というのが基本だと思う、特に城門は固く閉じている必要があるだろう、そこから敵兵が入った日にはあっという間に制圧されてしまうからだ。

 にも拘わらず、今、俺の目の前で繰り広げられているのは、なぜか要塞内にいるはずの味方が剣を持ち敵兵に城門から出て斬りかかっているという光景だ。

 そう、つまり、今城門は開けられている状態だった。

「いやいや、ありえないだろ、俺も戦略については素人だけど、あれはないだろ」

「俺も素人だけど、そう思うぜ。これがいい作戦だと思ったんだろ、あの馬鹿は……」

 もはやあきれるしかなかった。

 よく、あれで敵がなだれ込んでこないな。

 俺はそう思って敵兵を観察してみると、どうやら敵兵も思わぬことに戸惑っているようだった。

 それもそうだろう、中に引きこもっているはずの敵がいきなり城門から出てきて、しかも、罠にはまっているんだから……んっ、罠?

 俺の思考はそこで停止した。

 罠にはまるってどういうことだ。

「……なぁ、グフタス、あの罠って誰が作ったんだ」

「……俺たちだよ」

「……」

 今度こそかなり絶句した。

「どういうことだ」

「そのままだ、副指令の指示で俺が冒険者たちに昨晩作らせたんだよ」

 とここで現れたのはブリネオだった。

「えっと、それって、どういうことだ」

 俺は意味が分からなかった。

「昨日副指令から敵のための罠を作るように指示があった。俺はそれを受けて冒険者たちに夜中に動員して作らせたんだ。お前らにも声をかけようと思ったけど、ファルターは毎日回復魔法唱えまくって疲れてるだろ、フィーナはまぁ、夜中ってことで遠慮したんだけど、まぁ、それはいい、それで、作ったんだけど、今朝になってバカが急にあの妙な作戦に変更するとか言い出してな。おかげで俺たちの昨晩の苦労は水の泡どころか味方に被害が出ているってわけだ」

「……」

 俺は絶句しかなかった。

「……兵士たちには伝えたのか、罠のこと?」

「ああ、伝えたんだけどな、あの人数だ避けて通れと言われてもできないだろ」

 まぁ、確かに無理だよな……

 俺は本当にあきれて絶句していた。

 その日の被害はひどいものだった。といっても俺が回復をかけまくったおかげで、表面的にはそれほどひどいものにならなかったのはよかったといえばよかったが……

 どうでもいいが罠を作った冒険者たちはバカから余計なことをするなと理不尽な怒りを買ってしまったようだった。

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