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炬燵蜜柑とこたつとみかん

作者: 剣原 龍介

初投稿作

拙い文章ですが、読んでいただければ幸いです。

 人様が正月とか呼んでいる日が過ぎてからしばらくしたある日のことだった。


「ねぇ、お母さん、これ酸っぱいよ。甘いやつないの?昨日のやつみたいなさぁ」

 娘は相変わらず居間のこたつに深々と座り込んだまま、台所の母を振り返っていた。

「ん~、外のネットに入ってるのがあるでしょ。そっちの方が甘いんじゃないの?」

と言ってから、娘の不思議そうな眼差しに気付いて得意そうに付け加えた。

「ほら、テレビで言ってたのよ。酸っぱいやつを天日干しにしておくと、甘くなるんですって!それで、折角お祖母ちゃんが送ってくれたんだからと思って…」

 母の視線の先にある段ボール箱を見やって、娘は納得した。

 祖母の家の庭には立派な蜜柑の木がある。これが、農家でもないのによく実を付けていた。

 祖母は毎年、それを箱に詰めて送ってくれるのだが、これが毎度の様に酸っぱいのだった。

 去年の蜜柑は確か三分の一程腐らせてしまったのだ。

 いくら好物だといっても、どれを食べても酸っぱいのでは流石に食べる気も失せてくるというものだった。


 娘が一向に動く気配を見せないのに気づいて、母は仕方がないなといった顔で外に吊るしてあるネットを取り込んだ。

 暖房に慣れ切った体に外の冷気はなかなか辛い。外気がどっと部屋の中に入り込んでくる。

「うぅ、寒い」

などと言いつつもそそくさとこたつの中に入ってしまった。ネットの中身を果物籠の中に開けていく。

 娘は、その中のどうやら一番大きいらしい物を一つ手に取った。

「昨日のやつもテレビの見たくやってたわけだね。道理でおかしいと思った」

と言いながらも、すでに一口食べている。

 その様を見ていた母も、どうやらこれも甘くなっている様だと分かると、自分は中でも小さめの物を一つ手に取った。

「夕飯前にあまり食べすぎたらダメよ?」

と言う母を見やって、わかってるってと答えてから、先程の酸っぱい食べ残しをゴミと一緒にティッシュに包む。部屋の隅においてあるゴミ箱に目掛けて、バスケットボールの様にシュートした。

 しかし、壁に当たって大きく外れてしまった。


 包みが目の前にコロコロと転がってくると、蜜柑の香りが漂ってきた。


 柑橘類の強い香りに逃げ出した私にむけて、娘があまり気持ちの入っていない声で謝ってきた。

「あっ、みかん、ごめんね」

 それを見ていた母は、何かに気が付いたように一言呟いた。

「そういえば、猫って蜜柑が苦手なのかしらね」


 私は、そそくさとその部屋を逃げていくのだった。


語り手の意外性

いかがでしょうか?

工夫が生きていればよいのですが…

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