プロローグ
夜。
キモオタの夢。
「ふぅ……。」
草原に立つひとりの男。そう、ボクはいわゆる選ばれし勇者!
強く、そして、カッコイイ。だれがみても、あこがれのリア充なんだな。
おや、スライムがあらわれた。
モンスターめ、このボクを相手にしたのが運のツキだったようだな。去れっ!!
ボクは、愛剣『グレート・グラディウス・ソード』でスライムをかるくつついてやる。スライムは逃げさっていく。
ボクのおそろしさに気づいたやつは、みんなそうだったがなっ。
しかたないさ。ボクが強すぎるんだもの。
スライムよ、お前はべつに恥ずかしくない。
さて、この調子で魔王とかもやっつけて世界とか救っちゃいますか。
そして、とうぜんの結果だが、ボクは英雄としてみんなからあがめられるだろう……。
まぶしい目でボクをみる大衆たち。老若男女がボクを見つめて……。
「キモオタさーん。」
「キモオタ様ー!」
おや? 美女がボクめがけて、かけてくるよ。
まー、そーだよね。ボクって、なんてったって英雄だもんね。
とーぜん、そーなっちゃうね。ふぅ…。今夜はまた忙しくなりそうだぞっ。
「キモオタさああああん!!」
ハイハイ、今いきますよーっ。
ボクが美女たちの群れにとび込んでいこうとしたその時……。
「キモオタああああああッ!!!」ゲシっ。
あれ? なんか今、にぶいヘンな音しませんでした??
目をあけると、そこにいたのは美女ではなく、しってるカオの「男」です。
「ゆ、勇者さん……?」
その人物は、ボクがいっしょに旅をしてる「勇者」だったのです。
リアルの勇者。夢ではなく、現実ではこのよく分からない男が選ばれた存在……。
ボクはその仲間。つまり、勇者と「ユカイな仲間たち」の一員というわけです!
なんでボクが勇者じゃないのか? という疑問はもちろんあるのですが、とりあえずの現実はこうなってしまってるようなのです。ちょっと理不尽な気もするのですが、しかたないようです。
その勇者とかいう男は、ボクの布団をひっぺがすと、なんかオコった顔をして言います。
「いつまで寝てんだ。朝のミーティングの時間だぞっ。さっさと起きて、集合場所まで来やがれ!」
……。
なんで、この人こんなにオコっるんでしょう?
という疑問はわきにおいて、ボクは言われるままに起床することにします。
今日もまた、リアルというクソゲーが始まるのかと思うと、なんか憂うつな気分になる……。