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GMがいきなり登場。しかも二人だ。
夜になったこのエリアに、群集たちもざわめいていた。
優雅にティーカップを口に付けるゴモリ、それを冷静に見ているエリゴス。
二人の間に、言いようもない緊張感が漂う。
ロゼとバイスも互いを睨んでいた。
ロゼ側についた僕は、成り行きを見守るしかない。
「やっと出たか」
「ゴモリ、これは邪魔しないでいただきたい」
「それはできぬ、彼女のためにならない」
「無駄ですよ、彼女はこんなことでは絶対に幸せにならない。ならば……」
「嘘をつけ!今の彼女は幸せだ。
ゲームをやる全ての人間が楽しくなれてこそ、ゲーム自体に意義がある」
ゴモリはいつになく憤っていた。常に冷静なゴモリが、感情的になるのも珍しい。
「それより、裁定に意義を出すとは代案はあるのだな?」
「今回の案件は、そちらに非があるのではないか?
バイスはグループ『小黒鷲旅団』から、盗んだものがある。
エンジェルフルーツポンチだ、なんなら調べても構わぬぞ
これを返還することを要求、できなければバイスのアカウント剥奪を裁定する」
「それに異議を唱える」
エリゴスが手を挙げてゴモリに対立した。
ゴモリの言葉に、エリゴスが唇を噛み締めた。
「エリゴスも意義か……仕方ない」
「ええ、互いの裁定に判定がくだらない。プレイヤー同士の喧嘩の場合は……あれだな」
「議題をすり替えるなっ!」
「このままだと平行線だ、この案件に関しては……」
「GM裁定規則第十八条……」
そういいながら、エリゴスとゴモリはほぼ同時に自分たちより下にある灯りに包まれたものを指さした。
「プレイヤー同士の決闘で決める」
二人が指さしたものは、明るい闘技場だった。
「強いものに従う、単純明快なルールだ」
「それでよかろう、意義はない」ゴモリとエリゴスも同意したようだ。
「決闘ね、面白そうじゃない」
ロゼは最強の廃人プレイヤーだ。
戦士だし、火力はほかのプレイヤーの遥か上に行く。
ケルベロス装備も一式あるから、HPだって並のカンスト騎士よりも上だ。
「待ちなさい!この私、決闘は苦手なのよ!
こんなか弱いアイドルの私に、ロゼとかいう、メス豚と戦えとか言わないでしょ」
「誰がメス豚よ、それとも逃げる気?」
「だからこそ、切り札を使いたいのだけどいいかしら?
私のもう一つのアカウントを」
バイスの言葉に、エリゴスが「よかろう」と一言告げた。
それと同時に、バイスが不敵な笑みを浮かべた。




