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とある少女がネトゲをやりまくった件(くだり)  作者: 葉月 優奈
十話:とある少女がネットアイドルに嫉妬する件
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バイエル公爵の庭は、騒然としていた。

空は夕暮れから夜に変わろうとしていた。

もうすぐ、バイスのライブの時間だろうか。だけどここは修羅場だった。

僕とロゼ、それからバイスとエリゴスが向き合っていた。

さらにそれを見守る群衆は、バイスのファンだ。僕らに向けられる視線は冷たい。


「エリゴス、なぜあなたが?」僕が口を開く。

「GMコールをされたから当然ですよ」

「嘘だ」鐘を鳴らさないと、GMは来ない。誰もGMを呼んだ形跡はない。


「ふむ、鋭いな」

「バイスとつながって僕らから盗んだよな。エンジェルフルーツポンチ」

「証拠は?」

「僕の家にバイスのログがあった。退出のログだ。

もちろん不自然な入室には、エリゴスが関わっている」

僕の言葉に、エリゴスは余裕の笑みを浮かべた。

バイスは否定しないようだ、どうやら認めているのだろうか。


「盗んだ?いや助けたのよ」

「何を助けたのよ?」バイスの言葉にロゼが反応した。

「あなたよ、不本意だけど」

「あたしはあんたに助けられた覚えはないわ」

「そうかしら?」バイスは腕を組みながらロゼを見ていた。


「助けるとかどうでもいい、僕はお前らが盗んだものを返して欲しい」

「それはできない。君らがやっていることは、保護対象のロゼを消し去ることだ。

アバター・インターフェイスを知っているな」

「知っている、僕も同化した。まさかあの呪いも?」

「そう、私だよ」

エリゴスは、じっと僕を見ていた。


「君には体験して欲しかった。ロゼ……真壁 真衣の身に起こる全てを。

君らの行動で、彼女がどうなるのかを」

「ロゼの体を元に戻す、僕らはそのために記憶を探していた。

クエストをこなして、ロゼの居場所を探してアバターにロゼを戻す」

「果たしてそれがうまくいくだろうか?」

「どういうことだ?」

「私はGMだ、この喧嘩のことを裁定しに来た。

マジック・クロニクルではGMの言うことは絶対だ。

いざとなったら今のアカウントを破棄させることができる」

エリゴスは含みを込めた笑みを浮かべた。


「まさか……」

「バイスとロゼの喧嘩の件についてだが、バイスには非がないと判断。

よってロゼの処置を下そうと思う、悪く思わないでくれブラウ」

「なによ、あたしは認めないわ」

「認めなければアカウントも消す。まあ、つまりはロゼ、君の保護として一ヶ月間の……」

「勝手に決めないでもらえるかしら?」


そう言いながら別の方から声が届いた。

声の主を見ると、僕の前には優雅にティーカップを持った女が現れた。


「私、GMゴモリも、裁定に意義を申し立てる」

その言葉は、とても凛としているように聞こえた。





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