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あれから、三時間。
僕たちはルームを移動してホーリーワームを転戦していた。
幾度、黄金の岩場を巡っただろうか。
マジック・クロニクルには十のルームがある。
そこでは、当然沸く時間が違う。
ホーリーワームの沸く時間が六十時間以上だ。
ほかのルームでも同じように沸く。
つまり一日に狙えるチャンスは一回だけではない。
それでも沸く時間がわかる業者が有利だ。
時間のわからないところは、人を見て調べるしかない。
最も業者は、次にいつ出るかわかるので有利なのだ。
そんな中、ようやく一つのエリアにたどり着いた。
そこでは、相変わらず競争が激しい。
「一通りルームは見たけど、あとはこのルームだけか。
次のポップは、かなり時間が空きそうだ」
ヴァイオレットが、ルームを管理してこのルームを探し当てた。
ほかのルームには人がいない。もしくはとられた後だ。
いずれにしてもルームで、四連敗中なのでパーティのムードは悪い。
「全く業者はひどいわね」
「敵の独占が奴らの仕事さ」
ロゼの愚痴に、ヴァイオレットが紳士に対応していた。
こうして見ると、ヴァイオレットは大人だ。ロゼの愚痴に、しっかり対応しているな。
僕なんかよりも大人だと思わせた。
そうこうしているうちに再び業者の冒険者が集まってきた。
八人の二組パーティだ。人がさらに増えてにぎやかになった。
そんな中、ロゼが僕のそばに来た。
「ここ取られると、次は多分翌日だ。絶対に失敗できない」
「そうね、ゴモリのクエストはリアル一日」
「そうだな、厳しいな」
「なにか考えがあるんでしょ?」
ロゼが僕の方をじっと見ていた。僕は「そうだな」と頷いた。
そんな僕の後ろで、じっと見ていたのはシュバルツだ。
「業者、さらに増員か」
そんな時、ヴァイオレットの言葉通り業者らしき人間が八人増えた。
「ゲエッ」オランジュも悲鳴を上げた。
「これはやばいね」
「さっきとった人ですぅ」
ロートもゲルプも困った顔になった。
「諦めるか?」
「このままじゃダメだ、」
「では、どうするつもりだ?」
「普通にやったら勝負にならないのなら、エリアを絞る」
「エリアを絞る?」
僕の一言に、オランジュが返した。それをヴァイオレットが見守っていた。
「うん、下をよく見て欲しい。岩場にくぼみがある。
ここで業者と思われるモノたちは張っている。
無意識に集まっているわけではなさそうだ。
だとしたら、くぼみを絞って狙うしかなさそう」
僕はとられた時の分析をずっとしていた。
ホーリーワームは岩場のどこに沸くかわからない。
「くぼみか……できるのか?」
「わからないけど、ワームの頭が完全に出たら負けだと思う」
「そうね、どうせならかけてみましょ。お兄ちゃん」
ロゼは同意した、戦士に変えたロートもオランジュも同意してくれた。
「なんとか取りたいね」
「集中、喋ると負けるよ」
僕もレヴェラッソを戦士に変えてくぼみの前に挑む。
その間にも人がどんどん増えていった。
人が増えすぎて、回線が重くなった。
人は増えたけど、会話がない。そこはモンスターを狙う戦い。
オンラインゲームではよくある光景。
だけど、静寂の中にも一瞬で勝負が決まる。
ワームが頭を表した。
「よしっ」
とったのは僕だった。僕の目の前にあるくぼみから急に頭をのぞかせた巨大な白いワーム。
それを見て、僕はすぐに反応していた。
「さすがリーダー」
「うむ、見事だ」
僕が敵の占有権を確保すると、がっかりしたかのように僕の周りに人の輪ができた。
それと同時にパーティメンバーもまた僕の周りに集まった。
これから僕たちの戦いが始まる。
だが、対モンスターに最強のメンバーが僕らのパーティにはいる。




