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~~キュベリオン・ゴールデンロック~~
金色の岩がそびえ立つそこは、究極の戦場だった。
夕暮れから夜に変わるゲーム時間のゴールデンロックは、多くの人が集まっては、静かに立っていた。
金色の岩が中央にある以外は、普通の山岳だ。
だけど、それ以上にここはネット掲示板で有名だ。
そんなここは、高レベルの冒険者で有名な場所だ。
だからこそ、ロゼはヴァイオレット、それからシュバルツ。
僕ら小黒鷲旅団のメンバーの七人、八人揃わなかったのは心残りだ。
ここはバトルエリアだ。敵が当然出てくる。
だけど、もともとこのエリアには敵が強いわけではない。
「やはり取り合いの聖地ね」
「ああ、業者までいる。廃人はこういうところにはいかない。
効率が悪い。占有権の取り合いをするより、パーティでウルトラモンスターやったほうがうまい。
まあこっちもアイテムの当たり外れはあるが」
ヴァイオレットが周囲を見回して、ロゼが呆れていた。
周りには人だらけで、殆どパーティを組んでいた。
「『ミラクルダイヤモンド』、『ブラックダイヤモンド』高額素材がたくさんですね。
ホーリーワームは、魅力的な的ですから当然競争は激しいです」シュバルツが見回す。
「業者って何?」
そんな時、素朴にロートが聞いてきた。
「業者っていうのはゴルドを手に入れて、リアルマネーで販売する連中だよ。
一般的には、犯罪だけどね」
「そんなのあるんだ」
「そういうのは、弱い人がやるのよ」
ロゼは否定的に言う。
彼女の性格上、曲がったことは嫌いなようだ。
「敵は『ホーリーワーム』時間は前回の討伐時間から六十時間。
時間の誤差は……」僕はネットで調べていた。
「現在時刻から十分前後。そろそろ集中だな」
ヴァイオレットも調べているのだろう。さすがは廃人のリーダーだ。
「ヴァイオレットさんは経験があるのか?」
「昔な、今はしていない。非効率的だし、金よりで買えないレアアイテムも増えたからな。
さて、おしゃべりはこれぐらいにしよう。勝負は一瞬、急に岩の下から出てくるから」
「まあ、相手は気にしないでやろう」
ヴァイオレットは落ち着いていたが、僕は少しドキドキしていた。
「占有権が取れるといいけど」
「初めてだしね、ロゼたんのために頑張るよ」
「お兄ちゃん、緊張している?」
ロゼがなぜか僕に声をかけてきた。
「ロゼ、大丈夫だ」
「ならよかった」
「むうっ、ロゼたんが……ロゼたんの占有権が取られた」
なぜか悔しがるヴァイオレット。
「情けない声を出さない」
すかさずシュバルツが突っ込んだ。なかなかのお似合いコンビだ。
「占有権は前衛の仕事、ヴァイオレットが取れば見返せます。
そのために戦士にしたのでしょう」
「そうだったな、シュバルツ」
「ええ、私も神官に飽きたので戦士にしました」
シュバルツは言葉の後、巨大な斧を構えた。
いつもメイン神官のシュバルツが戦士だと、新鮮だ。
「斧をブルブル震わせるの、楽しいわ。
あっ、ヴァイオレットのことを殺さないように気を付けないとね」
「まじか、すごいな。バーサーカーアクスだろ」
「ええ、取るのに苦労したわ」
「そろそろ集中……て」
「やられた」
僕は敵を見つけて魔法を唱え始めた瞬間に、別の人間に敵の占有権を取られた。
そう、僕たちは目の前でワームをほかのパーティに横取りされたのだ。




