081
――それは夕暮れの学校。
仙台市内にあるとある中学校の校舎だ。
中学校とわかったのは、学校の廊下に張り出された貼り紙だ。
誰もいない廊下の窓の景色が赤く染まり、人の気配がない。
その廊下を走っていたのは女の子だろうか。
女の子の吐息が、聞こえてきて画面が揺れた。
「はあっ、はあっ」
ある教室の前で、ドアを開けた。
「ごめんなさい、遅れました!」
だけど、そこは静かな教室。夕日が差し込んで薄暗い。
人の気配がない教室だ。
黒板には、『祝・卒業』と書かれた寄せ書きだ。
ほんの数時間前まで、ここには人がいた形跡があった。
「ごめんなさい、先生」
「君も卒業だ……真衣」
そう言いながら、出てきたのは男。メガネをかけて教師風の男だ。
年齢的に見て、かなり老けているように見えた。白髪まじりの髪がそう見えた。
「先生、私はこれから」
「君はどうしたい?君の進路はまだ聞いていない」
「あたしは……生きていきたい。あの人と」
「それで本当にいいのか?」
「構いません、あたしにはあそこしか居場所はありませんから!」
すると教師の方に、視界が近づく。教師の姿が大きくなった。
「君は強い」
「強くないです」
「でも、君は子供だ」
すると先生の背広が一気に大きくなった。
どうやら抱きしめているのだろうか。
「先生も退職するんですよね」
「ああ、君だけに責任を押し付けたくないからね。
真衣、私も随分白髪が増えたよ」
「先生……」
「本当は進学して欲しいのだけど、後悔しないか?」
「ママを失ったら、あたしは生きていけない」
「そうか……そうだな。がんばれよ」
そう言うと、可愛い女の子の声で「はいっ」と聞こえた。
「だけど、君はまだ若い。夢を諦めないほうがいい。
そこで提案なのだが、一つゲームを勧めるよ。『マジック・クロニクル』を」
先生という男は、そこでゲームの名前を口にした――




