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気が付くと僕は机の前で眠っていた。
ゆっくり起きるが、体がいかんせん重い。
周囲を見回すと、パソコンの置いてある部屋だ。
ゲーム内の部屋と違い、手狭な和室の部屋は窮屈に感じた。
目の前にはHPゲージもなければ、コマンド画面も出てこない。
両手で顔を触って、リアルの自分であることを確認しいた。
だけど、体が重かった。鉛のように重かった。
「戻ったっ!」思わず両手を突き出して、自分の体に戻ったことを表現した。
「みたいね」僕の隣には幽霊のロゼだ。羨ましそうな目で、僕を見ていた。
そのまま僕は、ぼーっとパソコンデスクに座っていた。
「お兄ちゃんは、あたしを助けられなかったのね」
「それは……なんだ?」
「ううん、仕方ないよ。
あたしの装備は重いから吹き飛ばすの、大変だもんね」
それでもロゼは少しがっかりした顔を見せた。
なんとなくだけど、僕はロゼの頭を優しく撫でた。
「なんか優しい……」
「ああ、なんかわからないけどごめん」
ゲームはどうやらログアウトしているみたいで、パソコン画面は真っ暗だ。
「なんで?」
「いや、なんとなく」
「まあ、そういうことにしてあげる」
そういいいながらも、ロゼは膨れた顔を見せた。
でもすぐに、半分泣き出しそうな顔に変わった。
「でも、本当に良かった……お兄ちゃんまでいなくなったら、あたし」
「ロゼ……」
「ありがとう、お兄ちゃん。よかったね!」
「こら、泣きつくな」
泣き出して、僕に抱きつくロゼ。
それでもさっきまでゲームの中で感じられたロゼを、実態として感じられない。
アバターでなければ、ロゼを認識できないということか。
涙を流したロゼの、涙を拭うことさえできな自分がもどかしかった。
「ねえ、クリアしたんだよね」
「当初の目的は、リッチ・クイーンの討伐だから」
「クリアしたんだから画像を見れらる」
「そうね、見られるはずだから見よっ」
そう言いながら、僕はパソコンで再びマジック・クロニクルを立ち上げた。
だけどそんな僕はなにかモヤモヤしたものがあった。
(なんだかさっきまでの記憶がない)
そう思わずにはいられなかった。




