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とある少女がネトゲをやりまくった件(くだり)  作者: 葉月 優奈
一話:とある少女がいきなり現れた時の件
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008

~~キュベリオン・キュベリオンセレブ街~~


マジック・クロニクルに入ってすぐに僕は驚かされた。

それは僕ブラウが、既にパーティが勝手に組まれていたからだ。

何よりもそいつは、僕のリアルにさっきまでいたロゼだ。


そんなロゼと今、歩いているのは高級住宅街だ。

キュベリオンという王国がある、剣と魔法の国。それがキュベリオンだ。

遠くバイエル公国から、専属の魔法使いに飛ばされれば遠く離れたキュベリオンにひとっ飛び。

そこまでしてきた理由、それは……


「宝くじ特典の『ロゼ』についての説明があるって。メール来ていた」

「それで、ここなわけ?」

「ロゼは何か知らないのかよ?」

「多分、ゴモリ」

「ゴモリ?」

「なんとなくよ、名前しか知らないわ」

ロゼは不満そうな顔で、僕と一緒に歩いていた。

僕だって、まさかゲームの中までロゼと一心同体とは思わなかった。


「不満か?」

「プライバシーがないじゃない」

「いやなら、パーティを抜ければいいだろ」

「抜けられるならそうしているわよ!

あんたがリーダーだから、あたしをキックすればいいじゃない」

「それもどうやらできないらしい」

僕はパーティのコマンド画面を見ていた。

プレイヤーの『キック(排除)』のコマンドだけは、なぜかロゼに対しては使えなくなっていた。


「つまりは特別なパーティ仕様ってわけだ」

「最悪だわ」

「あれ、ブラウリーダー」

そう言いながら出てきたのはロートだ。

小さな体に、大きな瞳、ピンクのワンピースを着ていて、完全に女の子だ。

いつもどおり私服姿の、小さなロートが僕を見ていた。

見た目はどう見ても小学生っぽいよな。冒険者じゃないみたいだ。


「えと、ロート?」

「うん、そっちの人は?ロゼさん?」

「ああ、残念ながら……」

「わ~、すごいね」

なぜかロートが、ロゼをじっと見ていた。

ロートにまじまじと見られたロゼは、僕に見せる顔と違って笑顔になった。


「初めまして、ロゼよ」

「わ~、本物だ。伝説の戦士ロゼ、最強のソロマスター。

本当に憧れるなぁ、すごいよ~、黒い鎧がかっこいい」

「そんなんじゃないわ」

ちょっと照れているみたいだ、どうやら面と向かって話すのが苦手らしい。

それでもキラキラした瞳で、ロゼを見ているロート。

ロートの純粋な瞳が、ロゼをむしろ困らせていた。


「ねえねえ、リバイアサンをソロで倒したんでしょ。

前に画像見たよ、すごかったわね」

「えっ、あんなのは偶然よ。運が良かっただけ」

「でも、リバイアサンなんて一人で倒せるものじゃないよ。すごい、すごいよ」

「そういうのじゃないから、パス。ブラウっ!」

なぜか僕の背中に隠れたロゼ。

何かあったのか、問い詰めるまもなくロートに話しかけた。

ロートは好奇心旺盛だ、話を聞きたがっているみたいだ。


「僕?ああ、ロート。そういえば一人でお出かけか?」

「ううん、ゲルプの合成待ち。ついでにクエストや家具も見に来たの。

大きなお金も入ったし、大きな家も建つし。

それより、届いたの?宝くじ特等の景品」

「ああ、来ていたな。後で渡すから好きな家を買っていいぞ」

「ほんとに?」

「ああ、僕よりもロートがいっぱい調べていて詳しいだろ」

「ありがとう。リーダーはいいの?」

ロートは嬉しそうに、高級住宅街の一軒の豪邸を指さした。


「うん、リアルの家を買うわけじゃないし」

「なんか言った?」

「いやいや……家に関してはロートに任せるよ。僕は家にこだわりがないし」

「え~、そうなんだ。じゃあ、みんなに聞いてから決めるね。新しいお家」

「うん、わかったよ」

「あら~、リーダーじゃないですかぁ」

そう言いながら、奥の革細工工房から出てきたのがゲルプだ。

エプロン姿で猫耳。まるで猫耳エプロン姿のレアな格好のゲルプは、可愛いな。

ゲルプがすぐに子供をあやすように、ロートの頭を撫でていた。


「ロートお待たせ」

「ゲルプぅおそい~」

ロートがゲルプに甘えていた。


「ゲルプさん、どうしたんですか?」

「はい~、合成していたんです。いつものお勤めです」

「あ、木材加工職人組合ですね。ここ」

「ですよ~あとは革加工、それに鉄加工もありますよ」

「合成関係は詳しいな、さすがゲルプさん」

「でも、合成している私には宝くじはありがたいですぅ」

ゲルプが、僕に擦り寄った。天然なのか僕に顔を近づけてきた。


「はい~、楽しみです。からくじ、からくじ、宝くじ~♪」ロートが変な歌を歌う。

「ははっ、家に届いていると思いますよ。後でみんな来た時に渡します」

「本当にありがとうございますぅ」

「いえ、ゲルプさんにはいつも合成で世話になっていますし」

そんな会話をしていると、ロゼがなぜか僕の背中をどついてきた。


「あれ、どうしたんですかぁ?ロゼさん?」

「あ、悪い。ちょっと用事が……それじゃあ、またね。

ゲルプさん、ロート」

「うん、それじゃあね」

そういながら僕は、ロゼに急かされるようにその場をすぐに離れた。

ぴったりくっついてロゼが、にこやかな表情を一瞬だけ二人に見せて僕にとりつくように歩いていく。

ゲルプも、背中越しに僕のことを不思議そうな顔で見ていた。


数メートル離れて、建物の角に曲がった。

さっきまで後ろにいたロゼは、いきなり僕の前に現れた。

セレブ街で、周りのNPCしかいない綺麗なタイル張りの路地。

なぜかロゼは怒った様子だ。


「何に怒っているんだ?」

「別に、この女ったらし」

「は?あれはパーティメンバーだ」

「そう、よかったわね。

このあたしに、女の友達が多いって自慢したかったんでしょ」

何故かふてくされるロゼだ。意味がよくわからないし理解も、全くできない。


「何を言っている?」

「別に、フンっ!そんなことより、あそこに居るわよ」

「何がだよ?」

「鈍感ね、決まっているじゃない」

ロゼが指さしたところ、それはセレブ街の喫茶店の店内。

そこには長いブロンドヘアーで、真っ白な聖女服を着た女だ。

よく見ると耳が尖っているのが見えた。エルフィルという種族だ。


「あたしを特典にしたゴモリというクソ女よ」

ロゼは指をさすなり、不機嫌この上ない顔になっていた。

ロゼの不満げな顔を見て、エルフィル女は手を優雅に降っていた。



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