079
その広場には主というべき、ボロボロの布をまとった幽霊が浮かんでいた。
リッチ・クイーンと同じような姿の幽霊だ。
だけどそこにいる敵の名前は、かつてネットで調べた敵の名前にはなかった。
広場に、僕が最後に入った。
弓からライトセイバーに持ち替えたロゼと、ハンマー持ちのズイーバーが前にいた。
「リッチ2」
「そう、新種の敵。実はこいつはまだ誰も戦ったことのない敵なんだ」
「でも、見た目は変わらないじゃない。リッチ・クイーンと」
ロゼの言うとおりだ。見た目は、色まで同じ。
「武器が違う、クイーンは鎌だけど、こいつは杖が武器だ」
「つまりは、こういうことか」
僕の弱他魔法魔法封印を使う。
リッチ系は魔法が強力だ、魔法を封じれば強い技がほとんどない。
だけど、リッチのドレインタッチでロゼが吹き飛ばされた。
「きゃあっ!」
「回復よろ」
ズイーバーが言う間もなく、僕はレヴェラッソで神官に変更した。
妖術師の持つもともと高いMPを利用するには、神官は有効だ。
魔法が切れれば、妖術師に戻してまた魔法を封じ込めていく。
「さて、呪いの解き方だけど。ブラウ、覚えている?」
「ああ、大丈夫だ」
「覚醒したら奴が『呪いの目』を使う。それを喰らうんだ。
範囲はかなり狭いだろうから。回復よりもそれを優先で」
「信じていいんだな?」
「信じなければ何も変わらない!」
僕の言葉を、ズイーバーか叫ぶようにかき消す。
「ロゼは覚醒したら、トドメ刺さないで使わせるのを待つ。
あとは回復ができなくなるから、なるべく回避優先で」
「了解よ、ズイーバー」
「そしたら……」
ズイーバーが言うまもなく、リッチ2は覚醒した。
覚醒すると、リッチ2能力が跳ね上がった。
「て、いきなり!」
リッチ2はすぐに呪いの目のモーションに入った。
狙う相手はロゼに向いているようだ。
「早くっ、お兄ちゃん!」
「うん」魔法を中断して、僕はロゼに駆け寄った。
「僕がこの呪いを受けるっ!」
駆け寄る僕は、剣を構えるロゼを吹き飛ばそうとした。
怯むロゼに、僕は体当たり。だけど
「ええっ!」
ロゼは、僕の体当たりでも吹き飛ばなかった。
そのままモーションからリッチ2が、骸骨からをブレスのような煙を吹いた。
そう、僕はロゼと一緒に巻き込まれてしまったのだ。
その煙の中、僕とロゼの前には赤い光が見えた。
(あれが、呪い……)
だけど、赤い光を見た瞬間に僕の視界が真っ暗くなった。




