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とある少女がネトゲをやりまくった件(くだり)  作者: 葉月 優奈
八話: とある少女が呪いを解こうと奔走する件
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078

~~デモニース・ストレイナイツ森林~~


再びここに来ていた、深い森が僕たちを出迎えた。

やはり昼でも視界が暗い。回復アイテムを飲みながらHPに細心の注意を払う。

さっきここに来ていたロートはいない、代わりにいるのが灰色フードの人物。

ハンマーを背負いながら、森の中を先頭で進む。


「相変わらず強いわね」

「アルテミス持ちの万能戦士様がいうことか?」

「あんただって強い廃人よ。相変わらずね」

「この程度ならミョミルハンマーがあれば、雑魚だ。

モーションが大きいから攻撃が遅いのが欠点だがな」


ズイーバーの持っているハンマーが、一撃で熊を沈める。

ロゼもズイーバーもそうだが、一撃が高いな。

普通なら何十発も与えて倒すところを、二人は全部瞬殺だ。


よく見たら、ロゼの武器も最強弓のアルテミスだし。

『射手』の特典である弓の命中を、ロゼの『万能戦士』は持っていない。

『射手』でなければ、通常は弓を当てることはできない。

だけどアルテミスは、命中に大幅なステータスアップがあるので弓が使えるレベルだ。


「どっちもすごいと思うけど」僕が正直に感想を述べる。

「だろ、そう言ってくれると上げがいがある」

「まあ、あたしのほうがダメージ出ているし」

「万能戦士の火力は、究極まで極めると最強だ」

ズイーバーもロゼの強さを認めているらしい。


「それにしても、ズイーバーと同行するのはキマイラキング以来ね」

「あの時、ブラックダイヤモンドをロゼが奪った」

「奪ったんじゃないわ、ロット権があたしにしかなかったの」

「思い出したんだな」

「うん、忘れていない」

ロゼの声がやや、小さく聞こえた。


「本来は違う人が取るべきブラックダイヤモンドを、ロゼがとった。

それは十分違反に値するものだと思う。

リーダーのヴァイオレットは、ロゼに入れ込んでいたしそこまで……」

「それはないわ!」

前を進むズイーバーの言葉を、ロゼが遮った。


「何が違うというのだ?」

「あの時は、ロット権はあたしにしかなかった。

ブラックダイヤモンドを希望していた人は、あたしだけ。あの時だけ、降りたのよ

どうしてもケルベロスの足装備を完成させたかった、あたしの願いを聞くために」

真っ黒なブーツを履いたロゼが、走りながら言い放つ。

すると僕らの前を阻むように、トレントが二体現れた。

先頭のズイーバーがハンマーを構える。


「では、何を目的に?」

「おそらく、そこであたしはしばらく入れなくなる用事があったから」

「ロット権を前倒しした理由は?」

ミョミルハンマーを振りかざし、ズイーバーがトレントを叩き潰す。


「……ごめんなさい。まだそこまでわからないの」

ロゼは謝りながらも、襲いかかるトレントをアルテミスで一撃消滅だ。


「そうか、まだ記憶が戻らないか。ゴモリも余計なことをする」

「知っているの?」

「危険なGMだ」

そう言いながら、ズイーバーがヴァイオレットと同じように言い放つ。


「ねえ、ズイーバーもあのあと疾風艦隊(シュタイフェ)を抜けたんでしょ。

「ああ」

「なんで抜けたの?別にほかのプレイヤーと、喧嘩していたわけじゃないし」

「新しいことをやりたかったから」

「新しいこと?」

「正しくは、ありのままの自分」

「意味がわからないわ」

「ロゼ、ネットゲームって一番の魅力はなんだと思う?」

「え、見ず知らずの人と会話できること?」

「それもあるけど、私の場合は違う」

ズイーバーが言い放つ。


「あなたの魅力はなんなの?」

「違う自分になれること、リアルと違う自分を見てもらえることにあると思う」

「ズイーバー……」

「ブラウもそう思うだろ」

いきなり後ろの僕に振ってきたズイーバー。


「僕?」

「あなたならきっと理解できるでしょう」

「そうだね、それはある」

「よかった」心なしか、ズイーバーが笑ったように見えた。


「さて、おしゃべりはそろそろにしておこう。着いたようだ」

そう言いながら、森を抜けると大きな滝が見えた。


「滝?」

「この道を裏に入ると滝の裏に出る」

「そんな裏技があるのか」

先頭のズイーバーが滝の裏の岩場を見ると、入れそうな狭い隙間を見つけた。

手際の良さに僕は素直に感心していた。ロゼも不思議そうな顔で見ていた。

狭い隙間は、洞窟みたいになっているが先は長くないようだ。

どうやらこれが滝の裏なのだろう。


「この先に、呪いを解く相手がいる」

「呪い?」

「あくまでブラウの呪いだけだ。『呪いの目』を解除する手段が、ここにある」

「なぜそれを知っている?」

「君にメッセージを伝えたのは自分だ、箱を開けた時の呪いを」

「お前は何者だ?」

「自分は単なる廃人ですよ。ロゼの旧友の」

ズイーバーが自分を親指でさしながらそう言いきった。

だけど、思い当たる節はあった。


「あのGMか?」

「そうですね、さすがです」

「何なんだ、お前たちの目的は?」

「少なくても今は敵ではないし、君を救いに来た。

本当のことを明かしたいが、今はまだそれができない。

そろそろ呪いの解き方を教えてもいいかな?」

「時間がない、たのむ」僕は迷うことなく言い放った。

ロゼは不満そうだが、ズイーバーとさっきから睨んでいた。


「ああ、では呪いの解き方を説明しよう。

一度しか言わないから、しっかり聞くように」

まもなく滝の裏の洞窟を抜けると広場にたどり着く。

ズイーバーはそう言いながら、ゆっくりと顔を上げた。



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