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とある少女がネトゲをやりまくった件(くだり)  作者: 葉月 優奈
八話: とある少女が呪いを解こうと奔走する件
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077

~~デモニース・ポートマリナ区~~


デモニースの港湾区は、漁村だ。

魚市場や、釣竿店が軒を連ねる。

ここは釣りをする人は、訪れなければいけない場所だ。

潮のいい匂いもする、どうやらアバター・インターフェイスの効果だろう。


僕はロゼと二人きりで、海辺そばにある食堂に来ていた。

お腹は空かないが、テーブルにはからの食器が置かれていた。

食べるのはHPやMPの回復によるものだ。


無事に呪い解きのクエストを終わらせた。

コウモリも熊も、相手にならないほどの弱さだ。

敵を倒すだけなら、僕でもソロで出来るほどの相手だ。最もロゼより倒す時間がはるかにかかるが。

アイテムを出すには、盗賊の持つ『アイテムドロップアップ』が必要だが。


「結局ダメだったか」

「仕方ないわ、あの呪いは特殊みたいだから」

「でも、ロートはありがたいな」

「そうね、健気で可愛かったわね」


初めから結果はわかっていた。

この呪いは、普通に解くことができないことが。

わかっていたけど、ロートの心遣いが嬉しかった。

ロゼもしみじみとロートの行動を感じていた。顔がおっとりしているような。


だけど現状は変わらない。僕のカウントダウンは刻一刻と過ぎていく。

残りは2時間弱か、時間がないな。


「呪いを解く方法ってクエストだとあれぐらいだよな」

「そうねえ、素直にクエストとかじゃないでしょ」

「じゃあなんだと思う?」

「知るわけがないじゃない。もしかして記憶とか」

「記憶はあるし、体は……というよりリアルに出られないか」

「そういうことね」

ロゼもため息をついていた。


「くそっ、ロゼのクエストをクリアしたのに、これじゃあ何の意味もないじゃないか!」

「お兄ちゃん」僕はテーブルを叩く。

「ロゼは苦しんでいるだ、いやリアルの真衣は。

僕らはこんなところでゆっくりしているわけにはいかないのに」

「お兄ちゃん、変わったね」

「え?」ロゼがやはりしおらしい顔になっていた。


「変わっていない」

「いや、変わったよ。少し人間らしくなった。

これもアバター・インターフェイスのおかげかな?」

「違うだろ、それはない」

「ううん、でもお兄ちゃんちょっと明るくなった」

ロゼが、いきなり僕に対して上目遣いをしてきた。

それを見るなり、僕はドキッとしてしまう。

ロゼも僕も、今はアバター化している。

言ってしまえば、人間に限りなく近づいた状態で会話しているわけだ。

ロゼのぬくもりを感じて、ロゼも僕を感じているのだろうか。


「ねえ、お兄ちゃん。あたし……」

「なんだよ、ロゼ」

「あたしね……お兄ちゃんに」

「お前ら、知らないようだな」

そう言いながら、いきなり僕とロゼの間に一人の人物がやってきた。

それは灰色のフードをかぶった人間。


「お、お前は……」

「ズイーバーっ!」ロゼが眉間にシワを寄せて叫んだ。

灰色フードの人物は、フードから顔をのぞかせることなく顔だけをロゼに向けた。


「呪いの解き方を」

ズイーバーの言葉に、僕ははっとした。


「知っているのか?」

「それを教えに来た、いや協力しに来た」

「なんで、あんたがここにいるの?」

ロゼは僕を守るように間に入った。

いつでも剣が抜けるように手をかけていた。


「物騒だな、ロゼ」

「うるさいっ!あなたがこの前も裏口で趣味悪く張っていたりしたでしょ」

「あれは君のためだよ」

「嘘よ!あなたはあたしに恨みがあるのね」

「キマイラキングの話は、もう気にも止めていない。別に抜ける理由があったからだ」

「なぜ、あなたがあたしに付きまとうの?」

ロゼの険しい表情に、ズイーバーは首を横に振った。


「ある方に頼まれたんだよ、君は危険だから守るようにって。

俺は……力があるから」

「そんなのありえないわ」

「いいや、ありえる。現実に君の身には既に異変が起きている。

また、彼にも……残念ながら」

ズイーバーが僕を指差していた。

ロゼが、警戒心を強めたままズイーバーを見ていた。


「僕に?」

「ええ、君は助からないといけない。私は呪いの解き方を知っている。

アバター・インターフェイスの呪いを解く方法を」

「まさか……」

「この現状を変えたければ、己を変えてみよ。

そうでなければ、未来はないだろうな」

ズイーバーは、そう言いながら手を差し出してきた。



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