076
~~デモニース・ストレイナイツ森林~~
この森林はまさに大森林だ。
木々が茂っているので昼でも真っ暗に感じた。
一応街道もあるので、街道をたどれば迷わずに抜けられるわけだが。
いつもどおりに妖術師の僕は、ロゼとパーティを強制的に組んで森を駆け抜けた。
そして、もう一人ロートと一緒に行動していた。
そんなロートが、前の方で木と同化したモンスター『トレント』に絡まれた。
「ロートちゃん、下がって!」
絡まれたロートに対し、ロゼが大きな弓を構えた。
ロートは、ロゼの行動を見て後ろに退く。
トレントが枝を伸ばして、ロートに襲いかかってきた。
が、ロゼが放った矢はトレントの顔らしき部分に命中。
一撃で、ロゼがトレントを倒した。
「ふう、大丈夫?」
「ありがとう、ロゼ……様」
「いいのよ、ロートちゃんが無事なら」
ロゼはロートに対して、笑顔で答えた。
そういえばロゼも大分パーティに馴染んだな。
「ごめんなさい、ロートのせいで……」
「気にしていないわ、トレントがここは多いし。
見た目はわからないけど、不意打ちするから嫌な相手だわ」
「ううん、リーダー。ごめんね。呪いにかかったんでしょ」
「ロート……大丈夫だよ」
何度もロートが僕に気をかけてくれた。
やはり前回の宝箱で呪いを見つけられなかったのが、本人にはショックだったらしい。
ロートの盗賊レベルはキャップの90レベル。
罠発見のスキルも高いので、99.99%見つけられる。
それでも見つけられずに、罠が作動したことに罪悪感があった。
「だから、このクエストに誘ったんだろう。ロート」
「うん」
「解けるといいわね、呪い」
ロゼは切ない気持ちで、弓を背負う。
ここストレイナイツ森林は、ゲーム内のストーリーで訪れる場所だ。
バイエル公国に行くと、冒険者が呪われているということで追い返される。
そこで呪いを解くために訪れるのが、ここだ。
「ジャイアントバットと、フォレストグリスリーを倒す。
『巨大コウモリの羽』と、『血に飢えた熊の牙』を手に入れる。ここなら解けると思ったの」
「教会でも、アイテムでもこの呪いは解けなかったからな」
「だから、このクエストで呪いを解ければって……」
「ロートちゃん……」ロゼがじっとロートを見ていた。
ロートは元気なくうつむいていた。自信はあまりなさそうな表情だ。
「なんて健気なのっ!」
ロゼがロートを抱きしめた。
「ううっ、苦しい」そういうモーションを見せた。
「やばっ!ロートちゃん、健気すぎる。いい子じゃない」
「ロゼ、ロートが苦しんでいるぞ」
抱きしめたロートは、確かにロゼに締め付けられているように見えた。
慌ててロゼが、ロートを離す。
「ごめんね、ロートちゃん」
「まあ、ロートがいればすぐにアイテムが出るからな。
頼むよ、アイテム担当」
「うん」ロートは少しだけ、笑顔を見せた。
それとほぼ同時に道を塞ぐように、出てきた巨大なコウモリ。
「やっとお出ましか……えっ」
「ふふん」ロゼはいつの間にか巨大な弓を構えて矢を放つ。
その矢が、一撃でコウモリを仕留めた。
「はやっ!」
「この調子でいくわよ」
「早速落としたし」
戦利品で『巨大なコウモリの羽』をすぐに手に入れた。ログが流れた。
やはり、ロゼの攻撃力は他の人間を圧倒的に上回っているな。
このコウモリ、倒すのに二、三分かかるけどロゼは一瞬だ。
ある意味、最強のアイテム集めパーティかも知れない。僕すらいらないし。
「あとは熊だっけ?」
「うん、さがそっ」
ロートの一言でそのまま僕たちは、フォレストグリスリーを探しに森を彷徨った。




