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とある少女がネトゲをやりまくった件(くだり)  作者: 葉月 優奈
八話: とある少女が呪いを解こうと奔走する件
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僕の部屋には、今ロゼとメッセージの主だけだ。

ロートやゲルプには外してもらった、本来二人には関係のない話だ。

なんだかロートが部屋を出るとき、元気がなかったな。


メッセージの主は、いつも僕が入ることを知っていた。

いつもどおりの修道服に身を包んだ、耳の長い女が僕の部屋の椅子に勝手に座っていた。

僕もベッドから体を起こして、その女を見る。というか睨む。


「怖い顔だ、本当にリアルだろう」ゴモリが僕の顔を見ながらティーカップに口を付ける。

「ゴモリ、どういうことだ?」

「なんのことかしら?」

「この体はどうなっているんだ?僕の体がまるで……」

「アバターと同化した」ロゼがそのあとに続けた。

ゴモリはロゼと僕を交互に見比べた。


「やはり気づいていたのですか」

「ロゼから聞いた、同じだって」

「ゴモリ、なんでこんなことをするの?お兄ちゃんは関係ないでしょ!」

「まあ、待て。私は何もしていない」

「嘘よ!」感情的にロゼはすぐに否定した。


「嘘ではない、ならばこちらから非難を浴びに来ることもない」

「じゃあなんで僕の魂が、アバターと同化した?」

僕は、単純に聞きたかった。

ゴモリは僕の体をじっくり見ながら、口を開いた。


「それは手違いというもの」

「手違い?」

「アバター・インターフェイス、これがロゼをアバターに閉じ込める原理よ。

究極のネットゲームの完成、このマジック・クロニクルの最終形態。

リアルのようなネット世界、ネットの世界に入ることができるテクノロジー。

目の角膜に情報を屈折した形に与え、目から見た情報を脳に伝えて感覚を共有する。

アバターと同じ行動、感覚を有するわ」

「原理はいい、なぜ僕がそうなったかだ?」

「通常は同意をして行うものだ。これはまだ試作段階で、一部の開発者しか知らない。

公表すらしていないから、この世界だとGMぐらいだろうね」

「待って、それじゃああたしがアバターになったのは……」

ロゼが口を挟む。


「手続きがあった、君はある契約を同意してもらっているの」

ゴモリの言葉に、少なからずショックを顕にしたロゼ。


「それ以上に問題なのは君だ、ブラウ。

おそらく君は、同意していないだろう。なぜそうなったんだ?」

「宝箱を開けたら……ロートの前に煙が発生して赤い目が」

「トラップか?『呪いの目』」

「だね。でもあれにはたしか、移動速度を下げる効果だけしかなかったような。

まあ、解除は教会かアイテムを使うんだよね。呪いアイコンはあるけど」

「それでも、アバターと同化する理由にならないわ」

ゴモリが僕の髪の毛を一本引き抜いた。

僕はチクッと痛みを感じた。


「感じるだろう、痛みを」

「ゴモリ、これから僕はどうなる?」

「今の君は自分からログアウトできない。ロゼと同じだ。

つまり、リアルに帰ることができないわけ」

「マジか……」

「ついでに、ゲーム内で死ぬと君の魂も消滅する。やはりロゼと同じ」

「嘘だろ」

ゴモリの言葉に、やっぱり僕もショックを覚えた。

一緒に話を聞いていたロゼも、俯いていた。


「だけど君は記憶があり、こちらの手違いでアバター化になった。

今、君の体には状態異常のアイコンがあるはずだ」

「ああ、ある」

そこにはHPゲージの隣に呪いアイコンが見えた。

これをタップすると、呪いがかかっていると出ていた。


「呪いを解けば元に戻る、ロゼと同じだよ」

「そうか、でどうやって?」

「それは知らない」

ゴモリは優雅にティーカップですすっていた。


「そっちの手違いなら教えられるだろ」

「残念ながら、この呪いを仕掛けたのは別のGMだ。

『呪いの目』にこのアバター・インターフェイスを強制的に仕込んだのだろう。

そのGMも、目的もわからない」

「本当に解けるのか?」

「これはリアルじゃない、ゲームだからね。

運営が必ず解ける方法を用意しているものよ。ただ……」

「ただ?」

「この呪いには制限時間があることだ」

ゴモリの言葉に、僕ははっとしていた。

僕の視界に見える呪いのアイコンの隣には時計が見えて、ゆっくりと進んでいた。



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