067
~~サタルカンド・疾風艦隊別邸~~
釣りに失敗した次の日、僕たちが招かれたのは疾風艦隊別邸だ。
ヴァイオレットが招いたので、ここに入れた。
普通には、登録メンバー以外は許可内とは入れない。
もちろんそれはリアルも同じだ。
番地を知らない家に入ることはできない、唯一許されるのはGMぐらいだ。
それにしても豪邸だ、僕らの買った一億の豪邸と変わらないぞ。
庭も大きいし、家も立派だ。
「ここは、別邸で家は別にあるんだよ」ヴァイオレットが言ってきた。
「それはすごい」
「疾風艦隊は人数多いからね。むしろ足りないぐらいだよ」
普段着を見れば、かっこいいヴァイオレット。
最強クラスの騎士装備は、神々しく眩しい。
私服も真っ白なスーツって、ホストっぽいし。ヴァイオレットは白しか着ないんだな。
「ロゼたんの頼みを聞きに来たぞ」
「その言い方はやめなさい」
「何を照れている?ロゼたんのためならなんでも聞いちゃうぞ」
廃人のリーダーヴァイオレットも、ロゼの前だと形無しだ。
「じゃあ、ぬしの『マツヤ』を頂戴」
「残念ながらそれはないんだよ」
「でも……我ら疾風艦隊には釣り職人もいる」
シュバイエが的確なアドバイスだ。
ヴァイオレットの隣で、いつも冷静を装っていた。
「釣り職人ねぇ」
「そこの掲示板を見てみなよ。アイテムトレード板があるから」
ヴァイオレットの言う通り、壁には掲示板が貼ってあった。
そこに貼ってあったのはアイテム募集だ。
グループ内でのアイテム交換の条件が書かれている。
僕らの家にもあるが、ここまで活発に書かれていない。
たまにロートが謎の詩集を書いているぐらいだ。
「あるわよ、『マツヤ』って、マジ?」
「やっぱりレアなんだね」
交換条件として書かれたのは、高額素材の数々だ。
『マツヤ』自体供給が少ないので、レア度が高い。
要求を見て、ますます愕然としていた。
「だね、どう考えても無理なのばっかじゃない」
「しょうがないよ」
「なんとか魚拓だけでも……」
「それは無理だね、アイテムの価値が下がる」
ヴァイオレットは僕に対して、冷たく言い放つ。
そういえばスージス海の釣り人も似たような事を言っていたな。
「なぜなの?」
「アイテムの価値は、誰かにトレードして手渡すだけで中古品扱いになる。
仮にオークションに出すなら、新品のほうがいい。新品から順に売れるからね。
モノが高額になれば、そこに気を使う人間も多い。それともう一つ」
「もう一つ?」
「詐欺に遭うこともある」
ヴァイオレットの言葉には重みがあった。
なにより、僕には心が痛い話だ。
「詐欺?」
「ああ、詐欺だ。アイテムトレードには詐欺が発生することがある。
それを警戒してか、トレードを制限するものもある。
アイテムは時間の結晶だ。自分が苦労して手に入れたアイテムを、奪われると時間を否定されたことになる。
それはショックでしかない」
「そうね。仕方ないわ」
落ち込んだ顔で、ロゼが謝った。
「ごめんね、お兄ちゃん」
「仕方ないよ、アイテムの相場が大体わかったし。むしろありがとう」
「それよりロゼたん」ヴァイオレットがいきなり僕を指さした。
「なによ?」
「お、お、お兄ちゃんって?」
「え、あ、ああ。ブラウはあたしのお兄ちゃんよ」
「ゲームじゃないよな?じゃあリアルか?」
「え……うん」ロゼはなぜか恥じらうような顔で僕を見てきた。
なんでそこで意識をする、僕まで恥ずかしくなるじゃないか。
「そっか、リアルの兄がブラウなんだ。なるほど、なるほど」
「な、何を勝手に納得しているのよ?」
「じゃあ、ボクがこれからゲームのお兄さんだ。
ロゼ、僕の胸に飛び込んでごらん」
ヴァイオレットが手を広げていた。ロゼに対しての愛なのだろうか。
「はあ、バカじゃないの?」
ロゼが痛烈に否定。
一瞬、時は止まるがヴァイオレットがいじけた。
「ロゼたんが、ロゼたんがぁ」
「そろそろ時間ですよ、ヴァイオレット」
いじけてしゃがんだヴァイオレットに、すかさずシュバルツが手を差し伸べた。
それを聞いて、真顔に戻ったヴァイオレット。立ち直るの、早い。
「ああ、行かないとな」
「どこに行くの?」
家から出ようとするヴァイオレットとシュバルツを、止めたロゼ。
「なに、これから狩りの時間さ。
弱くなった『レッドドレイク』をやりにいく」
「狩り?あたしも行きたいわ」
「ふむ……ロゼたんがそう言うなら。空きはなくても開ける」
「やったわ、さすがヴァイオレットね」
ヴァイオレットが、ロゼに対して優しく了承した。
そんなやり取りを見た僕は、流石にロゼを引き止めようと言葉を用意した。が、
「あなたも来るでしょ、ブラウ」
抑揚のない声でシュバルツが、なぜか僕を誘ってきた。




