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~~サタルカンド・イースト三番街~~
フィールドから戻った僕たちは、イースト三番街の酒場にいた。
いかにもファンタジー世界らしい酒場は、俗に言う会話のたまり場だ。
一般の冒険者は待ち合い所に利用していた、家も近いし。
僕とロゼはその酒場に来ていた。
それでもロゼには視線が集まる、有名な廃人様だ。
漆黒のケルベロスプレートは、強さも色気もある最強の装備を纏う妹は僕の前に座っていた。
膨れた顔を見せて、怒りを見せた。
「でも、超ムカつくんだけど!」
「ロゼ、落ち着けよ」
「落ち着いていられないわよ、あいつは何様よ!」
「ロゼ、初めてのお前もそうだったぞ」
僕に言われて、気まずそうな顔を見せた。
「あたしは……」
「結局何かが優れていると、高慢な態度を取る。
それが人間で、廃人であるお前たちだ」
「ううっ、お兄ちゃん」
急にしおらしく元気なく謝るロゼ。
そのロゼは、運ばれたビールらしき茶色の飲料を飲み干す。
そのままカラのグラスをテーブルに叩きつけた。
「でも、あれは交渉難しいな」
「釣りのスキルは上がりにくいでしょ。
リアル一日中釣りで、レベル1か2上がるかどうかでしょ。
『マツヤ』はいくつぐらい必要なの?」
「う~ん、ネットで調べたけど76が推奨らしい」
「それって絶対、無理じゃない。後二十時間しかないわ」
「でも、交渉だけはあっているみたいだ」
「確かに、あとはオークションで気長に待つ?」
「多分市場に出回らないと思う」
僕は腕組みをしながら、じっと見ていた。
そんな時、目の前にビールっぽい飲み物がロゼの前に運ばれてきた。
「そうよね。二ヶ月も履歴ないんじゃ、奇跡でも起きない限り難しそうね」
「本当に奇跡ぐらいだな」
「みんな、あんたのところみたいならいいのに」
運ばれたビールらしき飲み物をロゼが、一気に飲み干した。
飲み干したグラスをテーブルに叩きつけた。
「お兄ちゃん、パーティメンバーは?」
「オランジュは勉強で落ちたし、ゲルプさんは別のゲームかな。
ロートは……久しぶりにレベル上げしているよ」
「へえ、みんな忙しいんだ。でもお兄ちゃん……やっぱり暇?」
「本来なら忙しいんだけど、僕は暇だよ。受験もないから」
「それでいいの?」
ロゼは急に、あらぬ事を聞いてきた。
ロゼがグラスに手をかけたが、カラのグラスを寂しそうに振っていた。
カラカラと氷とグラスが当たる音が聞こえた。
「なんだよ、ロゼ」
「なんとなくだけど、お兄ちゃんは夢があったそんな気がするの」
「夢?」僕はロゼに聞き返す。
「うん、おぼろげなんだけど。昔のあたしに言っていたような」
「どんな夢だよ?だいたい今、その夢を叶えるために僕は何もしていない。
いや、これからも何もできない」
ロゼに対し、僕は首を横に振った。
「だよね、ごめん」
「リアルの話は極力持ち出さないで欲しい」
「わかったわ」
「それより、ぬし『マツヤ』をどうやって手にするかだ。
この問題を片付けないと、僕らは先に進めない」
「そこのお二人さん、お困りのようですね」
そんな時、僕たちの席に見知った二人組がやってきた。
「あら、ヴァイオレットじゃない」
そこにはヴァイオレットとシュバルツの二人が現れた。




