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とある少女がネトゲをやりまくった件(くだり)  作者: 葉月 優奈
七話:とある少女が釣りに挑戦した件
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ゲーム内は、再び朝を迎えていた。

太陽が昇る頃、砂丘にいた僕は隣の釣り人に近づく。

ゴモリが言っていた言葉を思い出した。

『釣るだけが全てじゃない』その言葉の意味を、行動に移していた。


釣りをしている髭の男は、無言で再び釣り糸を垂らす。

他にも、少し離れたところに釣り人が点在していた。

見知らぬ人に話しかけるのは少し緊張したが、ネットゲーム慣れしている僕は自然と言葉が出た。


「あの……すいません」

「なんだ?」

「ぬし……『マツヤ』を釣ったんですね」

「そうだ」

僕の方に顔を向けないで、ずっと釣りをしている男。

周りを近づけさせないオーラが出ていた。


僕にも経験がある。ソロプレイをやっている人間は、基本あまり会話をしない。

ただ黙々と作業をして、釣りをしている。そこには会話は不要ということだ。

頭を下げた僕は、手持ちの墨と大きな紙を持っていた。


「魚拓を一枚とらせて……」

「なぜだ?」

「ぬし『マツヤ』の魚拓を取りたいんだ、お願いできますか?」

「それはできない」

いとも容易く断られた。

男は相手にしないようなふうに見せていた。


「どうしても必要なんだ、それを少し貸してもらえないか?」頭を下げて懇願する。

「こちらにはそれをやる理由がないからな。

それと、魚拓を取るとアイテム価値が落ちてしまう。絶対に嫌だ」

「ちょっと!あんたこれだけ頼んでいるのにちょっとぐらい、いいじゃない!」

僕と男の会話に、ロゼが割って入った。

怒りを持って、男に詰め寄るが男は動じない。

それをむしろ、周りの釣り人は怪訝そうに見ていた。ヒソヒソ話までしている始末だ。


「できぬものはできぬ、釣りの邪魔だ」

「なんでそこまで断るんだ?」

「釣りは、釣れるようになるまでそれだけ時間と手間をかけている。

急に来て、成果だけを横取りするのは筋近いだろう」

「だけど魚拓ぐらい……」

「これは俺のもので、ほかの誰のものでもない」

「あんたは、それを売り飛ばすんだけでしょ!」

「どう使おうが、俺の勝手だ」

「じゃあ、あたしに売って」

ロゼがいきなり提案をしてきた。ロゼのことを男はじっくり見ていた。

仁王立ちのロゼに、釣りをしている男がいとも容易く大物を釣り上げた。


「ふむ、その装備……ケルベロスか」

「いかにも、ケルベロス装備よ。

他にもあたしは強力な武器を持っているわ。

どうせオークションにかけるなら……」

「断る!」

「ちょ、なんでよ!」

「俺は直接交渉を信用しない、オークション以外ではやらない主義だ」

髭の釣り人は、再び黙って釣り始めた。



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