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~~サタルカンド・スージス砂丘~~
スージス海、それはサタルカンドの東に位置する大きな海だ。
世界で一番大きな海で、巨大な魚が釣れる。
そこに面したスージス砂丘はまさにリゾート地だ。
あれからリアルで二時間が過ぎたリアル夜中、リゾート地で僕とロゼは釣りをしていた。
釣り竿を持って、釣り糸を垂らして魚を待つ。
「こんなんで、本当に釣れるの?『マツヤ』」
「釣るしかない、今回のクエストだ」
僕とロゼは、ひたすら釣りをしていた。
いつもどおりの青いスーツの僕と、色っぽい黒鎧を着ていた妹のロゼ。
二人で海岸沿いの岩場に立って釣りをする、珍しい光景だ。
「でも、今回のクエが釣りとかってかなりやばくない?」
「痛いところをつくよな、釣りはスキル上げしていない」
「『マツヤ』って海の主を一匹釣れって……牛丼屋じゃないんだから」
僕とロゼが今回受けたクエストは、マツヤという主を釣ること。
『マツヤ』の魚拓を、持って来ればクリアだ。
制限時間は、リアル二十四時間。
このクエストを受けたのが、夜の十一時半だから明日のこの時間までに釣らないといけない。
オークションの履歴には二、三ヶ月前まで取引の記録が残っていない。
急いで調べて、スージス海のこの岩場というところまで調べた。
調べたけど、根本的な問題は片付いていない。
「場所はスージス海、取り合いになるほど狙う人もいない」
「食材の合成に使うぐらいだし。暇つぶし程度でしょ」
「まあ、釣りはスキルが高くないと釣れないらしい。僕はレベル13、ロゼは?」
「……いいでしょ」言葉を濁す。
「ロゼ?」
「あたしは……3」
「つまり、どうやら二人共釣りは苦手らしい」
僕の言葉に、真剣釣竿を構えるロゼ。
なんだか負けたような気分で、不機嫌になるロゼ。
「こういうのは苦手なのっ!積み重ねるのも、じっと待つのも」
「ロゼらしい答えだ」
「なによ、あたしらしいって。お兄ちゃんひどいっ!」
「いや、何でもない」
「だからお兄ちゃんは、こういうところで釣って株を上げないとね」
そんなロゼが、いたずらっぽく笑ってみせた。
「それができたら苦労はしない」
「かかってるじゃない」
ロゼが言うと、僕の竿がヒットした。
そのまま僕の目の前に、ゲージバーが出てきた。
「引きが強いね」
「いける?」
ロゼの言葉に、ゲージバーが横にスライドした。
真ん中のゲージバーに入ったところで、タイミングよくボタンを押さないといけない。
成功すると、魚のHPが減っていく。魚のHPゲージがなくなると釣れるわけだ。
ちなみにスキルは、ゲージバーの長さや魚に与えるダメージに影響する。
だけど僕は……
「くうっ、失敗した」
失敗してあっという間に逃げられてしまった。
「ダメだったの、お兄ちゃん!」
「難しいんだよ」
「今回のHPはどれぐらいだったの?」
「ん~、中ぐらいかな。大物になると、大物ってメッセージが流れるらしい」
「『マツヤ』のHP高そうね。やっぱりあたしたちじゃ無理じゃない。
ゴモリも変な事を言っていたし」
「『単純に釣れば早いが、釣るだけが全てじゃない』だっけ?」
「まあそうだけどね。そもそも、この『スージス砂丘』は上級者向けの釣り場だしね」
そんな時だった。
「お兄ちゃん、ちょっと隣見て……」
そこには、ひとりの男が釣りをしていた。
なによりそこで釣りをしていた人間のログ結果に、ロゼは気づいた。
『グリュンがぬし『マツヤ』を釣り上げた!!』というログが流れた。
「まさか……いや」
「『マツヤ』を釣り上げたわ」
ロゼが指さした男は、何食わぬ顔でバケツに巨大な魚を入れていた。
その魚は銀色ががった大きな魚だった。




