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とある少女がネトゲをやりまくった件(くだり)  作者: 葉月 優奈
七話:とある少女が釣りに挑戦した件
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僕は生実さんにつれられて、高層マンションの一室に通された。

そこは、僕がかつて住んでいた同じ部屋の間取りだ。

ただ、残念ながら階層だけが違う。

むしろ清潔感があって、明るい部屋だった。大人の女性の一人暮らしの部屋だろうか。

テーブルそばに、しゃがんだ僕は部屋を見ていると生実さんがやってきた。


「散らかっていますけどゆっくりしてください、ソウくん。

いやチーフかな、上司の接待ですぅ」

「チーフって、僕にはそんな権限はないですよ」

「いやですよぉ」生実さんはジュースを持ってテーブルに置く。


「意外と綺麗に片付いていますね」

「あら、そんなことないですぅ」

「まさか601の住人だったとは、最近ですか?」

「はい、二年前に結婚してこっちに来ましたよぉ」

「あ、すいません」僕は頭を下げた。

生実さんは、離婚して一人でここに住んでいる。

バイトの中でも、このことはタブーだ。


「それにしても、久しぶりに部屋に人を入れたからウキウキですぅ」

「ウキウキって……」生実さんが両肘をバタバタ動かして、苦笑いをした僕。

天然すぎるな、生実さん。


「今は、兄ぐらいしか入らないですから」

「兄?」

「わたしは兄がいますよぉ、妹なんですぅ。三人兄弟の末っ子ですよぉ」

その言葉を聞いて、僕はドキッとした。

周囲を見回すと、僕の妹幽霊アバターのロゼが物寂しそうにこちらを見ていた。


「それにしても、ゲームもしていたんですね」

「オンラインゲームぐらいですよぉ。

オンラインゲームのゲーム歴は長いですぅ、バイトもしていますよぉ」

奥には立派なパソコンが置かれていた、レジや機械が苦手なのにパソコンはあるのか。

しかも僕のパソコンよりずっと高性能だし。


「そういえば佐藤先生とも知り合いですね」

「はい、ソウくんの先生でしたねぇ。あれはビックリしました」

「なんでも恐れられているとか」

「GM業を、もともとやっていたんですよぉ。昔は」

「GM?」

「わたしは、GMだった。ストーンヘンジ・オンラインまでは。

というより、そこの運営に雇われていたんですよぉ」

「へえ、GMって公募していたんですか」

そういえば、GM募集の広告バナーがお知らせにあったのをぼんやり思い出した。


「はい、バイト感覚でしたし。

GMと言っても、いろいろいますから。

わたしたちは所詮、タダの電話苦情オペレーターと変わらないですよぉ」

「生実さんは、今もマジック・クロニクルをしているんですよね?」

「はい、やっていますよぉ」

「GMですか?」

「GMはやめました、ブラウリーダー」

そこはしっかりと否定した生実。

表情は穏やかだけど、深いため息をつく。


「なぜ、それを?」

「だって、わたしはゲルプですよぉ。小黒鷲旅団の一員ですぅ」

「へ?」一瞬戸惑ったが、すぐに僕は驚いた。


「ええっ!」

そこには、ゲルプこそ生実さんが大人の眼差しで僕を見ていた。



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