表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とある少女がネトゲをやりまくった件(くだり)  作者: 葉月 優奈
六話:とある少女が祭りに参加する件
59/122

059

~~サタルカンド・ウエスト三番街~~


――これは三年前の話、僕が駆け出しの冒険者だった頃の話。

マジック・クロニクルを始めて間もない僕は、サタルカンドのウエスト三番街を歩いていた。

今と比べるとずっと貧祖な格好で、持っているのは安物の剣だけ。

なにより、妖術師にすらなれずに戦士だった頃の話。

普通の町人と見た目に大差のない僕が、歩くウエスト三番街はリアルに近い都会だ。


「広いね」

レンガ造りの中世の街並みが広がった。

その一方で、アスファルトのような現代風の舗装された道もある。

だけどそれ以上に目を引くのが、カボチャの看板だ。


「これがマジック・クロニクルの世界『モルゲンロート』だ。

オンラインゲームはすごいだろ」

「すごいというか、広い」

僕の前を歩くのは、戦士風の格好をした男だ。

槍を背負っていて、黒っぽいが安物の金属鎧を着ていた。


「オランジュは詳しいね」

「オンラインゲームの先輩だからな」

「あれは何?」

「あれか、うーん……」

僕が指さしたのは奇妙な形をした建物だ。

黄色い小屋で、ほかの建物よりよく目立つ。

それを見るなり、オランジュは考え事をしていた。頬杖ついて、立ち止まっていた。


「うーん、あれは……」

「あれは、駄鳥(ラキア)ショップよ。あそこでラキアを買うことが出来るの」

そう言いながら、通りすがりの女性が親切に答えてくれた。

長い黒髪の女性は、やはり身の丈よりずっと大きい剣を背負っていた戦士だ。


「あ、ありがとうございます」

「いえいえ、それよりあなたたちもイベントクエストに行くの?」

「はい、いまからゲートに向かうところです」

「でも、道に迷って」僕が口を挟むと、オランジュは情けない顔になった。


「こら、ブラウ。それを言うんじゃない」

「あらあら、ならば一緒に行きましょう。

私もハロウィンイベントに、いまから行くところだから」

黒髪の女性はニッコリと微笑んだ。

やはり、金属鎧を着ていた。オランジュのよりちょっとだけ豪華な鎧だ。


「ではお供させてください。

なにせ俺たちは正規盤からの参加で、コイツは今日デビューなもんで」

「そう、私はノイっていうの。よろしくね」

「俺……僕はオランジュ、こっちのがブラウ」

「よ、よろしく」手を差し出して握手をした。


そんな時、僕はなんとなく思ったんだ。

この人は、どんな人なんだろう。

どんなところでゲームをしているんだろう。


プレイヤーとして、リア友のオランジュは知っていた。

だけどリアルを知らないプレイヤーとは、会話をするのは初めてだったから。

僕がこのゲームでやったのは、リア友のオランジュと一緒に散歩ぐらいだった。

プレイ時間もわすか二時間あまりだし。


「オランジュ君に、ブラウ君ね。よろしく、あ……そうだ。せっかくだからパーティ組まない?」

「パーティ?」

「うん、パーティ。ハロウィンイベントはボスとの戦闘だから」

「わー、戦闘なんだ。僕はパーティ組むの、初めてだから」

「誰だって初めてはあるからね、このゲームのサービスが開始してから日も浅いし。

一緒に組みましょう、二人を誘うわね」


そして、僕たちは三人パーティを組んだ。

「さて、これからはパーティになったし、パーティ用のチャットで会話しましょ。

後は五人集めないとね」

「五人って……」

「いまから集めましょ、もしくは募集しているところと集まって八人で行くの。

マジック・クロニクルは、八人パーティまで可能だから」

「へえ、そんなことができるんだ」

「それがオンラインゲームの醍醐味じゃない。

ちょっとまってね、声をかけてくるから」

ノイは活発な女性だ、そして笑顔を絶やさない。

そんなノイを羨望というか、淡い恋心を抱いてみていたのがオランジュだ。


「いいな、ノイさんかぁ……」

「オランジュ、好きなのか?」

「ええっ、そんなことない」

だけど、どう見てもノイを好きなのが傍から見てもバレバレだ。

そんなオランジュの視線を気にしないで、行動しているノイ。


彼女は、あっという間に八人パーティを完成させた。

僕たちがなにかしたわけでもなく、八人パーティが出来ていた。

ほかの五人は、ノイの知り合いかどうかは今でもよくわからない。


「じゃあ、パーティもできたことだし行きましょ。

ついてきて、こっちに街の外に出る大きな門があるから」

「うん!」

僕とオランジュは、ノイに言われるままただついて行くだけだった。

そして、僕たちは初めてのパーティ戦をすることになった――



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ