052
~~サタルカンド・イースト三番街~~
グリフォンシグマの攻略から三十分後、僕はオークション会場に来ていた。
深夜二時でも、オークション会場にはプレイヤーが多い。
といっても寝落ちのプレイヤーがそのまま表示されているので、動いているプレイヤーはごく一部だ。
あの激戦、僕の深い眠りは見事に決まった。
決まれば勝利は約束されていた。
「それにしても見事に決まるとはね、あんな原始的な手が」
「原始的でも効果的だよ」
僕の隣には、真っ白な鎧のヴァイオレットだ。
この真っ白な鎧も、キュベレー系装備という廃人仕様の装備だ。
重厚だけど優雅な鎧は、騎士の最高装備なのだ。持っているイージスの盾も最高クラスだし。
「寝てしまえば、敵のモーションがキャンセルされる。
それがこの作戦のキーポイントだ」
「後は寝た瞬間に離れる、攻撃を加えるとすぐに起きてしまう……か」
「そういうことよ」
と僕の背後から、真っ黒な鎧をまとったロゼが歩いてきた。
ロゼの称号も僕の称号も、グリフォンシグマ討伐により『シグマキラー』が追加された。
「火力押しだけが全てじゃないわ、あたしがブラウに教わったこと」
「本当に倒せるとは思わなかったよ、あの作戦で」
「ええ、感心しました」
さらに、ヴァイオレットのそばには白いドレス姿のシュバルツもいた。
ヴァイオレットやロゼと違い、表情はあまり崩さない。
「でも、やると思いましたよ。弱体のスペシャリスト」
「そんな名前で呼ばれると、恥ずかしいです」
「前に野良であなたと組んだとき、あなたの戦いには一目置いていたんです」
「そうだったかな?」
「ええ、私も野良パーティはよく行きますよ。レベル上げは野良の方が面白いし」
「シュバルツさん……」
「まあ、ほとんどがクソ神官、雑魚戦士ですけどね」
「そうですか……ははっ」僕は苦笑いをした。
やっぱり廃人は、上からくる人ばかりだ。
「それでも……あなたは違っていた。あなたは持っている武器を最大限に鍛えていた。
あなたは強い、グリフォンシグマに弱体を成功させられるプレイヤーは皆無だと思っていたから。
どうですか、我ら疾風艦隊に入りませんか?
ここなら、あなたの力を存分に発揮できる場所です」
シュバルツが僕に手を差し出してきた。
「いえ、それはしません」
「ロゼたんも疾風艦隊に戻るんだぞ」
ヴァイオレットが口を挟むが、ロゼがむすっとした顔になった。
「あたし、戻らないわよ」
「ロゼたん……」
「あの時の罪を、思い出したの。アイテムを間違ってとってしまったこと。
ズイーバーと喧嘩して出て行ったこと。
そして、今回も逃げた。あたしは疾風艦隊にもどる資格はない。
それにね……」
「それに?」
「今は、ブラウの『小黒鷲旅団』の家族の一員だから」
ロゼは笑顔で、ヴァイオレットに言った。
それを見て、さすがのヴァイオレットも言うのをやめた。
「それはしょうがない、ロゼたん」
「それじゃあ、あたしたちは行くわ」
「ああ、ロゼたん。たまには『疾風艦隊』にも顔を出してくれ。
ボクが心配なんだよ」
「なんで?」
「ロゼたんに、悪い虫がついていないかって」
「大丈夫よ、あんたこそしっかりしなさいよね」
ロゼが笑顔を見せたとき、ヴァイオレットはやっぱり照れていた。
そんなヴァイオレットのとなりで、シュバルツが口を開く。
「そういえば、ロゼ。聞きたかったことがあるの」
「どうしたの?」
「ロゼって、いつからゴモリと知り合いなの?」
「ゴモリってあの?」
「そう、GMゴモリ」
シュバルツの言葉に、ロゼは驚いた表情を見せた。
驚きと同時に恐怖のようなものも見せていた。




