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~~サタルカンド、サタルカンド遺跡~~
遺跡は何度きても、おどろおどろしい。
欠けたレンガの壁、そこはうっすらと暗い。
真っ暗な闇の中、突然出てくる悪魔は慣れていてもたまにビックリさせた。
だけど、すぐさまパーティメンバーがあっという間に倒していく。
僕はロゼと同じ第一パーティになった。第一パーティは先頭を走る。
大人数となれば恐怖は、ほとんど感じない。しかもみんな僕なんかよりもずっと強い。
そんなロゼは不安な顔で、敵の悪魔に攻撃をしていた。
「で、本当に勝てるの?」
「この方法なら、『ジェノサイドブレス』を使われることはない。だから……」
「わかっているわよ、あんたを信じてもいいのね」
「信じて欲しい」
不安そうな顔を浮かべるロゼに、僕は笑顔で応えた。
「あんたは、なかなか度胸があるわね。
ぶっつけ本番で、自分の戦術をためそうだなんて。
しかも試す相手が最強のウルトラモンスター、グリフォンシグマでしょ」
「度胸?いやないよ」
「どうしてよ、ウルトラモンスターが怖くないの?」
「初めは怖いと思ったよ。強いみんなが集まって、それでも勝てなくて……」
「だったらなんで、ヴァイオレットの挑発に乗ったのよ?」
「これはネットゲームだからだ」
僕の言葉にロゼは、難しい顔を見せた。
周りのメンバーを見る、みんなすごい装備のメンバーが先を進んでいく。
「なにそれ、よくわかんないんだけど」
「もしマジック・クロニクルの全ての敵が、廃人しか倒せない敵しかいないとしたら?」
「変な質問ね。そしたら廃人以外はいなくなるじゃない」
「そういうこと、ネットゲームはいろんな人がやっている。
だけどみんな廃人じゃない、時間が無制限にあるわけじゃないんだ。
そんな人たちは、永遠にクリアできないことになるだろう」
「でも、いつかは届くんじゃないの?」
「人間はみんな諦めないわけじゃない、ほかのゲームがあればそっちに移るさ。
だから、勝ち方をほかにあらかじめ用意してあるんだよ」
「さすが、人生半分諦めたブラウ……蒼一が言うから間違いないわ」
ロゼがいたずらっぽく笑い、僕は少し不機嫌になった。
そのままロゼを置いていくように、前に出て行く。
「ごめんね、ブラウ。悪かったって!
それで、その勝ち方がこれなわけ?」
「そういうことだ、倒せない敵はいない。
だってこれはリアルじゃないから、ゲームなのだから。
ゲームってのは、リアルでできないことができるのだから」
僕のその言葉に、笑顔に戻ったロゼ。
「そうね、あんたらしいわ」
「まあ僕らしいやり方だよ、これは」
「だけど、負けたら承知しないわよ」
「負けることなんか考えていないよ」
僕はロゼに言うと、目の前に大きな扉が広がっていた。
そんな僕の隣には、重厚な鎧をまとったヴァイオレット。
「再戦の時間だ。今回だけはお前を守ってやる」
「ああ、勝ちにいこう」
僕がそう言うと、パーティメンバーが声を上げた。
疑心なメンバーも、ヴァイオレットが手を叩くと同意してくれた。
それを見て、周りのメンバーも声を上げてくれた。




