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マジック・クロニクルはパソコンでやるネットゲームだ。
だからゲーム画面を開いたまま、ネットに接続ができる。
マジック・クロニクルはまた、いくつものサーバーがあった。
僕はすぐさま別の画面を開いていた、ゲームの画面を小さくして。
心配そうなロゼが、僕に近づいて言ってきた。
「いいの?あんな事を言って」
これはロゼの個別チャットだ。僕にしか聞こえない。
「仕方ないさ、ロゼが死ねないのは僕も知っているし。
ゴモリの言葉を信用するのは、起きた当人にしか理解できないから」
「でも、どうやってやるの?
覚醒したら、『ジェノサイドブレス』を使ってくる。
そこで一気に体力を削らないと戦いにならないけど……」
「さっきはどれぐらい削れた?」
「うーん、モーションに入られる前にHPが三割ぐらく残っていたわ。
明らかに火力不足ね。メンバーを廃人オールスターにしないと削る前に使われるわ」
「そこなんだよね、一応候補がある。鈍足時間だ」
「なるほど、弱体ね」
「そのパーティを見て僕は気になっていたんだ。
妖術師が、なぜ第一パーティにいないのかを」
僕はロゼの言うとおり、パーティメンバーをメモ帳に書いていた。
記入したときに、キャスパルも書いていたのだ。
「さあ、それは……」
「当然、グリフォンシグマに鈍足時間が入っていない。
入っていればモーションは遅れるからね。後、麻痺も。
弱体には相手の攻撃を遅らせるものがある、これを利用しない手はない」
「さすがは弱体オタクね」
「むしろ僕は、それが大事だと思う」
僕の言葉に、ロゼはなるほどと相槌を打つ。
「問題は、それがあくまで遅延だけの処置だけだということだ」
「そのまえに削りきればいいじゃない」
「……そうだな。少し僕も研究してみるよ。なにせウルトラモンスター戦は初めてだから」
「必要なキャスパルいたら教えてね、深夜帯の時間だから早めに。」
「ああ、わかった」
「期待している……から」
「ん?」
「なんでもないっ!じゃああたしはバイエルに移動するわ」
ロゼはすぐさま僕から逃げるようにバイエルへと転移していった。
僕もまたゲーム画面を閉じて、別に開いたネット画面を大きく広げた。




