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とある少女がネトゲをやりまくった件(くだり)  作者: 葉月 優奈
五話: とある少女が最強の敵と戦う件
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~~サタルカンド・ウエスト一番街~~


ウエスト一番街はエリアに行くのに必要な場所だ。

そして、サタルカンド遺跡への門がここにある。

全員ここの天使像にお祈りしていたので、死ぬと自然とここに戻るようになっていた。

戻った僕は、すぐに確認しないといけないことがあった。


「ロゼは?」

すぐさま、僕は確認した。

ロゼは死んだら消滅する、ゴモリが言っていた言葉を思い出した。


「ごめんなさい」

パーティ会話でロゼが声を発した。それを聞いて、僕は少し安心した。

うつむいたロゼが、申し訳なさそうに道の前に佇んでいた。


「ロゼ、なんで逃げた?」一人が叫ぶ。第一パーティの万能戦士だ。

「あたしは死ねないから」

「死ねないって戦っているんだぞ!勝手に帰宅石(ホームストーン)を使って逃げやがって」

第一パーティの三人が、一斉にロゼを睨む。


「非難承知であたしは死ねないの!」

「君は火力だ。火力であるから、途中で逃げられると勝てるものも勝てなくなる。

まあ、負けたくないというのはわからなくもないが」

「ちょっと待ってください」

それを阻むのが僕だ。


「外野は引っ込んでいろ!」

「ロゼは逃げないといけないんです!」

「逃げないといけない?なぜ?」

「それは……難しいですけど」

僕の言葉に、首を横に振ったのが最初に不満を言った戦士だ。


「はい……」

「それなら俺は抜ける」一人の戦士が言い放った。

その後、すぐにパーティメンバーが離脱した。

それに追従するかのように、ほかのメンバーが離脱していく。


「待ってよ!」

「あたしだって、逃げたくないわよ。

だけど反応したのよ、あたしの意思が!」

「とりあえず一度落ち着いて、みんな」

そこでヴァイオレットが言葉を挟む。

ロゼに対する不満の声が、そこで途切れた。

ヴァイオレットが静寂の中、口を開く。


「ロゼ、いいかな?このゲームはネットゲームだ。

確かに死んだ時に、ペナルティがあるのはわかる。

だけどみんなも同じペナルティを受けているんだ、戦闘中に勝手に逃げるのはよくない」

「ごめんなさい、それでもあたしは倒さないといけないの。称号が欲しいから」

「『ジェノサイドブレス』が怖いのね」

第二パーティにいたシュバルツが口を開き、ロゼが頷いた。


「『ジェノサイドブレス』?」僕は聞き返す。

「グリフォンシグマの覚醒後の必殺技だ。

HP15000を一瞬にして削る、ほぼあの部屋全域を包む究極の攻撃だ」

「15000って、絶対死ぬだろ!」オランジュが叫ぶ。

僕らプレイヤーの中でも、HPが一番高いキャスパルの騎士が最高レベルで5000あれば優秀だ。

それを15000って、全ての強化魔法をかけてもカバーしきれないぞ。


「つまり、使われるまでに火力押ししないと負ける。

初めからそういう設計なのだろう。

覚醒するのは、グリフォンシグマのHPが半分以下だから」

「そうだったのか……」

僕は何かを考えていた。

説明したヴァイオレットが、うつむくロゼの方を振り向く。


「今度は絶対に逃げないようにしてくれるか?

グリフォンシグマは、短期の火力勝負だ。火力担当の君が抜けたら絶対に勝てない」

「それは……」

「それはできない」

僕はとうとう口を挟んだ。


「君は……ブラウ?」

「どうしてもロゼは死なせるわけには行かない」

「ではなぜ?」

「そういうルールなんだ、絶対にロゼを殺してはいけないルール」

「流石に意味がわからないよ、たかがネットゲームだ」

ヴァイオレットは首を横に振っていた。


「ロゼにとってはネットゲームではない、リアルなんだ!」

ゴモリの言葉をいったところで、信憑性はないだろう。

死ぬのを試したわけでもなく、それをゲームで起きたわけでもない。

だけど、今のロゼが置かれた状況は普通の状況ではない。異常だ。

異常だから、ゴモリの言葉もどこかに説得力があるかもしれない。

それが真実だとしたら、ロゼが死ぬということだ。


「ならば、君はどうするつもりだ?

君たちの戦力だって僕らよりはるかに装備は劣るだろう」

「確かにそうだ、だけど僕は弱体のスペシャリストだ。

必ずグリフォンシグマの弱点を暴く」

「ではブラウ、君に任せよう。一旦解散をしようか?」

「解散する必要もない、三十分あれば大丈夫だ」

ヴァイオレットがその場をしきるなか、ロゼがいつになく弱気の顔を見せていた。

そんな僕は、やることが決まっていたのだ。



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