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とある少女がネトゲをやりまくった件(くだり)  作者: 葉月 優奈
四話:とある少女が大人数パーティを組む件
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~~バイエル公国・英雄の広場~~


ここはかつて、バイエル公国を築いた四人の英雄の像が立てられた場所だ。

一般的には商業エリア、住宅エリア、ダンジョンエリア、それから宮殿に行く中間の場所として人の往来が激しい場所でもある。

そんなエリアがてら、ここはあることでも知られていた。


「みなさん、一緒に『グリフォンシグマ』を倒しに行きませんか?

高レベルの僧侶と戦士募集します。ダイレクトでよろしく~」

ロゼが、金貨片手に大きな声で叫んでいた。


ここは『叫びのメッカ』と呼ばれている。

オンラインゲームにはパーティでチャットするパーティチャット、

個別にチャットする、個別チャット。

それから全ての人間に募集や呼びかけをするワールドチャットというものがある。


この英雄の広場は、ワールドチャットをする場所なのだ。

ワールドチャットには、ゲーム側にお金を支払わなければならない。

しかし人集めをするには、ワールドチャットが一番効果的なのだ。


「いきなり集めろ、って言っても無理ゲーじゃない」

「やっぱり二十四時間なのか」

「どう考えても無理じゃない」

となりで叫ぶロゼを見ていた僕がいた。


さっきゴモリが家に現れた。

ゴモリが現れるのは、当然僕たちのクエ関係だ。

そのゴモリが言ったクエストが、ここで受けるものだ。


簡単に言うと一匹のモンスター、『グリフォンシグマ』を倒すというシンプルなものだ。

倒すのに与えられた時間は、リアルで二十四時間。

一見シンプルに見えるが、このクエストが今までで一番難しい。


「あたしだって、倒したことないわよ」

「ロゼが倒したことないって……」

「ううん、このサーバーの人間が誰も倒していないんじゃないかしら?

称号(シグマキラー)を見た人、いないし」

ロゼがその後、少し微妙な間をとっていた。


このグリフォンシグマは、現在出ているモンスターの中では最強クラスにあたる。

レッドドレイク、グリフォンシグマ、キマイラキング。

世界最強ウルトラモンスターの一つだ。


この三匹は半年前のバージョンアップで追加されたが、グリフォンシグマだけが難しい。

ほかの二匹は、廃人集団が倒していた記録が残っていた。

倒すと専用の称号が、戦った全員にもらえる特殊なモンスターだ。


『ブンデスグルペ』という八人パーティ×三組の計二十四人でエリアに入って倒すモンスター。

大人数で倒すモンスターで、出た当時は討伐隊なんかも出て流行ったものだ。

だけど、最近はあまりの難易度の高さに、募集自体が減少傾向にある。

それでも僕たちは集めないといけない。

二十四人を集めるのは、なれているロゼだ。

ウルトラモンスターと戦ったことのある廃人は、こういう時は頼りになる。


「二人ゲット、どっちも神官よ」

「すごいな、ロゼ」

「ここに来る前、戦ったこともあるし」

ロゼは、どこか寂しそうな顔を見せていた。


「どうした?」

「ゲームの中での記憶はあるのに、なぜあたしはリアルの記憶がないのだろう?」

今にも泣き出しそうな顔で、俯いていたロゼが弱々しく見えた。

だけどそんなロゼにかける言葉が見つからない。

きっと今のロゼは、リアルの自分が何者か知らなくて不安なのだろう。


海と幼い僕と真衣の名前、この三つの情報だけで自分が何者かわからない。

彼女の手元にあるのはこの三つだ。

僕には彼女の苦労は分からないが、ロゼは辛いのだろう。


「ロゼ……」

「おや、ロゼたんじゃないか~」

そんな時だった、僕たちの前に一人の金髪の男が走ってきた。

なぜかニコニコと満面の笑みを浮かべて走ってくる。

真っ白でいかにも高価そうな鎧に、右手にある立派な盾を持った男だ。

その人物を見るなり、ロゼは指差していった。


「ああっ、ヴァイオレットじゃない!」

ロゼの言葉に、金髪の男はそのままロゼに抱きついてきた。

「ロゼたん、会いたかったよぉ~」

男はカッコよさと対象的に、情けなくロゼにしがみついていた。



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