040
~~キュベリオン・アラビス高原~~
リアルは夜の十一時になっていた。
僕はバイトを終えてゲームに入っていた。
猿楽場こそオランジュもまた、アラビス高原に来ていた。
高原に来ているオランジュは、派手な金ピカスーツだ。
バトルフィールドだけど、かなりの目立ちたがり屋だ。
そしてなにより、僕に取り付いていたロゼとは今日もパーティを組んでいた。
真っ黒なケルベロス装備に身を包んだ『万能戦士』のロゼが華麗に舞う。
その姿がまるで真っ黒な蝶が華麗に舞うかの如く。
相手は巨大な象、文字通りグレートエレファントだ。
今、僕らはゲルプの合成品集めに来ていた。
目的は象牙刈りだ。素材の『黒象牙』を手に入れるためだ。
日本では取引が禁止られているらしいが、マジック・クロニクルの世界では関係ない。
僕たちよりはるかに大きい象は、僕たちを踏みつぶそうとしていた。
「こっちよ」
それをロゼが華麗に避けていく。
ロゼがマンモスの注意を引きつけながら、攻撃を加えていく。
持っている両手斧を、大ぶりさせていた。
「たあっ!硬いじゃない」
それでもロゼの一撃は、グレートエレファントの体力を大きく削る。
それにしてもダメージ高いな。
後ろで魔法を放つオランジュの氷弾のダメージが霞んでしまう。
「やばいな、これ」
「すごいですぅ」
オランジュとゲルプも感嘆の声を上げていた。
体力のあるグレートエレファントも、ロゼの一撃で一気に削られていく。
「意外とたいしたことないじゃない」
「そろそろ覚醒するぞ」
ロゼが戦うと、敵の覚醒タイミングが早い。
前に戦ったキングイエティも、覚醒した途端に仲間を呼んできた。
「何かするっけ?」
「『エレファントアタック』、大地ダメージだ」
「そうか、じゃあ俺は急いで錬金にするか」
レヴェラッソでオランジュが錬金術師になった。
それとほぼ同時に、グレートエレファントが覚醒した。
「やばい、もう覚醒かよ!」
「だったらゴリ押しよ」
「一旦離れて、ロゼ!」
僕が叫ぶと、ロゼは驚いた顔を見せていた。
「なんでよ?覚醒したんだから相手のHPは半分以下よ。
このまま攻撃でゴリ押しをしたほうがいいわよ」
「あの一撃を食らったらみんな死ぬ、離れろ!」
僕の言葉に、ロゼは渋々従った。
意外とロゼは素直なのかもしれない。
そのまま攻撃をやめて、バックジャンプでエレファントから離れる。
オランジュの飛翔の魔法詠唱は長い。
グレートエレファントが『エレファントアタック』モーションに入った。
(ならば)
僕は素早く魔法を詠唱した。
「コイツは入るっ!」
僕が唱えた魔法で、エレファントの動きが止まった。
それと同時にエレファントアタックのモーションが解除された。
「あれ、こない?」
「『深い眠り』で寝かせた、少したったら一撃加えていい」
「寝かせたって、相手は起きたら……」
「その前にオランジュ魔法を」
「オッケー!」
錬金術師のオランジュが『飛翔』を完成させると、僕たちの体が少し浮いた。
両手斧を構えると、そのまま大きく振りかざした。
「じゃあ、後はあたしがボコボコにしていいわね」
「おねがいしますですぅ」
ゲルプに頼まれて、ロゼは嬉しそうな顔で攻撃を再開した。




