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とある少女がネトゲをやりまくった件(くだり)  作者: 葉月 優奈
三話:とある少女が敵地に潜入する件
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ドレイクに見つかって、五分後僕の目の前は真っ暗になった。

走りながら逃げた僕は、ドレイクの攻撃を二発まで耐えて死んだ。

死ぬとキャラクターはクリスタルになった。

クリスタルになった僕は、全く身動きがとれない。

薄暗い岩穴の中で、クリスタルだけがぼんやり明るく照らす。


ここはグラ・ホールの奥地、誰も人が来ない場所だ。

ドレイクの討伐隊でもない限り、こんな危険な場所に人が来るのはありえない。


クリスタルになったプレイヤーは、マジック・クロニクル時間の三時間(リアル1時間)で強制的に転移ポイントに返されるのだ。ちなみに死んだ時のペナルティは、それまで入手したアイテムが手に入らなくなること。

昔のRPGと違い、所持金が無条件で半分にはならないのはありがたい。


(さて、この時間にトイレとか済ませておくか)

などとパソコンから離れようとしたとき、僕のそばに突然一人の人間が見えた。

それは、灰色のフードを被っていて顔が見えない。

男か女かもはっきりわからない。


「無様な姿だな、ブラウ」

クリスタルの姿の僕に話しかけてきた。

僕の名前を知っている、いや名前表示が出ているからわかるか。

でもこの人物は、名前表示を非表示だ。


(誰だ、こいつは?)

僕はパソコン画面を見ながら、推理を開始した。

前の狩場で一緒になったやつか、それとも野良パーティで恨みを買ったやつとか。

いずれにしてもこんな危険な場所に一人で来るのは……GMか。


「これ以上、ロゼに近づくな。お前は彼女の助けにならない。

あなたは何も知らない。知ってはいけない」

(一体何のつもりだ?)

死体の僕には喋る権利はない。

クリスタルの僕は、チャットもできないからただ黙って聞いているしかない。


「ちょっと、なにしているのよ?」

すると、灰色フードの後ろから出てきたのがロゼだ。

その姿を見るなり、いきなり魔法の詠唱を始めた灰色フードの人物。


「ロゼ、どうしてここに?」

「あんた、どこかで見たことあるのよね」

「そう、忘れたようね。あの人の言ったとおり」

「言ったとおり?あの人?わけわからないけど」

「ロゼが全部忘れても、俺は忘れない。

絶対にお前はそこにいてはいけない」

「なによ、あたしに指図をしないで」

あんたみたいな胡散臭いのを信用しないわよ」

「そうか、忘れたのか」

「忘れたって……」

「ならゴモリから離れろ。永遠に出られなくなるぞ、眠り姫」

「何わけのわからないことを言っているのよ」

「お前はリアルを知らないといけない」

「え?」ロゼは眉をひそめた。

それを見るなり、灰色フードの人物は首を横に振った。

そのまま魔法の詠唱を始めていた。


脱出エグジットだ)

「ロゼ、戻ってこい!待っているぞ、我が旧友」

最後に一言言い残して、目の前にいた灰色フードの人物が消えた。

それを見るなり、ロゼは不機嫌な顔を見せた。

舌を出して、不満を顔に出す。そのあと、すぐ僕のクリスタルを見つけた。

そのまま僕のクリスタルに近づいて撫でていた。


「全くかっこつけすぎよ」

ロゼが、僕のクリスタルを優しく撫でていた。


「ちゃんとクリアしたから……ありがと。

それからさっきは……からまれてごめんね」

ロゼが最後に僕にそう言っていた。

その時のロゼは、泣いているようにさえ見えた。



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