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とある少女がネトゲをやりまくった件(くだり)  作者: 葉月 優奈
三話:とある少女が敵地に潜入する件
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~~デモニース・デモニルク街~~


僕はロゼと一緒に住宅街を歩く。

プレイヤーは、あまり足を伸ばさない。中世風の街並みで、どこにでもある住宅街。

モンスターは出ないが、いくつかのクエストが受けられる。


NPCが普通に暮らしている場所だ。

同じ行動で、規則正しくプログラムされているのだろう。

僕はロゼと一緒に、住宅街にある巨大な金の天使像の前にいた。


「その前に一応お祈り」

「相変わらず律儀ね、ブラウ」

僕が金の天使像にお祈りを済ませながらも、怒りをあらわにしていた。


「にしても許せないな」

右手を力込めて握り締めた僕、天使像がそれを慰めているかのようだ。


「ブラウ……」

「ゴモリのやつ、ゲルプさんを使うとは許せない」

「そこに怒り?」

「僕たちはパーティだ、ゴモリがゲルプさんになったのは許さない」

僕の言葉に、ロゼとの温度差があった。

祈りをやめて、僕はロゼに顔を見合わせた。


「ゴモリはGMだから、やりたい放題でしょ。それを怒ってもしょうがないじゃない」

「そういうわけにはいかない、僕は一応リーダーだ」

「でも、それがないとあたしたちは、情報を得られなかったわけだし」

ロゼの言葉は確かだ。そのおかげで僕たちはクエストの情報を得た。


「ああ、ゴモリが言ったのは騎士クエストの男の子に会うこと」

「ええ、それでお祈りをしていたわけね」

「死んだとき、このバイエルに戻るからね」

「だったら死なないようにすればいいじゃない」

「保険だよ、保険。三年前に一回やったけど、十回ぐらい死んだから。

昔は転移ポイントをここにしてやったからなぁ」

「そう考えると懐かしいわね」

「記憶があるのか」

「ちょっとだけね」

金の天使像を背に、僕とロゼは住宅街を歩く。

住宅街にはNPCぐらいしかいない。過疎エリアなのでプレイヤーの姿がない。


「でも全然違うじゃない、今は」

「それでも、今回のクエストのゴールが騎士クエストの場所だとは思えないし」

「あたしは絶対やらないわよ、やる意味がないから」

「そっか……ごめん」

僕はロゼに納得した。

ロゼが死んだら全部終わる。クエストも消滅する。


「ねえ、騎士クエストってどんなクエストだっけ?」

「前のクエストと同じだと、兄弟がいて兄が優秀なデモニースの騎士。

年の離れた弟が、兄に憧れて修行に行くけど行方不明になる。

それを冒険者の僕らが助けに行くクエストだよな」

「よく覚えているわね」

「だけど助けに行くまでが難易度が高い。

グラ・ホールっていうオーガの巣に行くけど、オーガの数がかなり多くてよく死んだっけ」

「そうね、パーティで突っ切ってブンデス組んで二十四人いて生き残るのが三人とか」

「そうそう、懐かしいな」

僕とロゼが昔のクエストに懐かしさを馳せていた。

そんな僕らの目の前に、高台にある一軒家が見えた。


「成功報酬が『騎士』になれる権利だからね。ブラウもとったでしょ」

「一応な。さて、新しいクエストはどうだろうか?」

『騎士』のキャスパルは、最初からなれるものではない。

僕らパーティではゲルプが騎士だ。一般的に(タンク)役と言われている。

攻撃を一手に引き受けるので、防御力と高いHPが特徴だ。


「クエストはあそこだっけ?」

「そうだな」

そんな僕はロゼに促されて、高台の一軒家に入る。

そこは、近くに高い岩山が見える大きな庭。


庭に入った僕らは、そこにいたひとりの少年を見つけた。

いつも庭で剣を振るっていた少年だ。

どこにでもいる地味目な服装の男の子だ。


「あれね、いきましょ!」

「ああ、話しかけるよ」

そして、庭にいる男の子に声をかけると、いきなり男の子が喋り始めた。


『僕は将来、兄さんみたいな騎士になって、この街を、いやデモニースを守るんだ。

なのに、兄さんは……』

そう言うセリフから、このクエストは始まった。


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