003
~~バイエル公国・バイエル領事館~~
あれから二日後、三周年宝くじの当選日になった。
僕はその日、パーティの集まりがなかったので宝くじを持ってここに来ていた。
向かった先は、バイエル王宮。
ギリシャ神殿を思わせるような、真っ白な大理石のエリアが広がっていた。
王宮の中も、一般にプレイヤーが入ることができる。
ゲームの設定では、バイエル王は元冒険者だということで冒険者に寛大という話だ。
一応、このゲームのプレイヤーは冒険者ということになっているが。
そんなバイエル王宮の城前には、人だかりが出来ていた。
(さてと……こっちか)
「リーダー、こんにちは」
気づいたのはロート、小さい体を目一杯伸ばして僕に向けて手を振ってきた。
一生懸命アピールしてくるロートに、気づかないわけにはいかない。
「ロートか、どうした?」
「えへへっ、宝くじが気になって」
「そうだな、五等でもお金とかもらえるし。くじは何枚あるんだ?」
「二十枚くらいかな、クエストとかやらなかったから。ブラウは?」
「六枚、野良でバトルフィールド戦もしなかったし」
「ふーん、少ないね」
「やっぱり出やすいクエストとか、やらないといけないし。
まあ、あくまで三周年のおまけイベントだから」
「そうだな、当たったことないけど」
ロートと会話をしていると、僕たちは掲示板を見ていた。
そのまま僕とロートは、アイテム欄にある宝くじの当選番号を見ていた。
一枚目、二枚目……最後の一枚まで確認していた。
「う~ん、ハズレ」
「早いな、ロート」
「うん、大体わかるから。ブラウは?」
「最後の一枚、あれ?」
「どうしたの?」
僕はアイテム欄の宝くじの番号と特等の番号を、何度も見返していた。
一桁一桁慎重に何度も見ていた。固まって言葉が少なくなった。
「まさか……」
「ブラウ?」
「あたっていないか、特等」
「ええっ、見せて。パーティ組んで、オープンにして」
ロートとすぐにパーティを組んで、アイテム欄から僕の宝くじの番号を確認した。
そして、隣でロートが見るなり驚いた顔に変わった。
「あたっているよ、すごい。特等」
ロートの言葉に、僕は全てを理解した。
僕はこの日、生まれて初めて宝くじに当たった。
それはリアルではなく、ネットゲームの三周年記念の宝くじ。
だけど、嬉しさというより驚きしかない。
「特等は何がもらえるんだろ……お金一億ゴルダ、それからSランク装備一つに、永久パスポート。
他には、選べる高級素材が三つ。それから特別特典……か。すごいね」
「うん」
僕は未だに、特等が当たったことを信じられないでいた。
ロートの会話を、虚ろな顔で聞いていたのだから。




