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とある少女がネトゲをやりまくった件(くだり)  作者: 葉月 優奈
三話:とある少女が敵地に潜入する件
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学校から帰り道、どこにでもある住宅街。

平日の昼間だけど、黒い雲が立ち込めていた。

制服を着た僕と隣を歩くのは武将ひげの男。


白髪まじりの髪と、ボサボサの頭はどう見ても原始人だ。

一緒に歩いている僕が、恥ずかしくなりそうだ。

こ汚いジャージは、汗臭さがによっていて男臭い。


「蒼一、遅れてすまないな」

「来なくても良かったのに。親父仕事あるんだろ。夜から」

「そうは言っていられんぞ、俺はお前の唯一の親だからな」

どこか元気なく笑う父に、僕はそっぽを向いた。


「進路指導になぜ来たんだ?」

「先生に呼ばれたんだよ、蒼一のことで相談があるって」

「佐藤先生も余計なことを」

僕は唇を噛んで佐藤先生を軽く呪った。


「結局は進学しないのか?」

「進学なんかしない」

「一応、一週間引き伸ばしたけど」

「それが余計だよ、無駄だし、いまから頑張ったってみんなとは差がついている。

大学も専門も行けるはずがない、ましてや浪人なんかありえない」

「それでも俺はお前の人生を邪魔したくない」

親父は、真剣に僕に対して言ってきた。

だけど僕は住宅街の先にある小さな公園を見ていた。


「随分邪魔をしておいて、言えた義理だな」

「蒼一……いい加減目を覚ませ」

「覚めているさ、初めから」

「なんでそんなにひねくれる?」

「ひねくれていない、あなたに邪魔された僕の人生は既に取り返しがつかないところにある。

そもそもなんで僕には母がいない?

猿楽場やほかの人にはいる、母親がいない?」

「いたさ……だけど」

「離婚で家族も借金も背負った」

僕の言葉に、父は顔を一気に暗くした。


「現実を見て欲しいのは父だ。

父の給料と僕のバイト代、この二つがなければ生活はできない。

それは僕がずっと見てきた結果だ。あなたは借りた金もあるだろう」

「蒼一……」

「僕は知っている、一生返せないほどの借金を抱えているって。

どれだけあんたは失敗すればいいんだ?」

「子供がそんな心配をするんじゃない」

「するさ、バカみたいに再婚しては騙し取られて何も残らなくなった。

結婚するたびに、いろいろ失って苦しくなる生活。

二回目の母も、結局は詐欺師だったよな!」

痛烈な僕の言葉に歩くのをやめた父。

その顔には元気も、父親としての威厳もない。

ただの弱った一人の大人の男が頭をたれていた。


「蒼一……すまない」

「謝る必要はない。その結果、僕の夢は決まったんだ」

「蒼一、だけどその考えは絶対にいけない」

「僕は夢を持たないことを選んだ。

夢も将来も必要ない、今もこれからも生きていくことだけ。

高校を出たら、金を稼ぐだけの機械になるよ。

僕は全部捨てる覚悟があるのだから」

抑揚なく僕は父にそう吐いた。

そこに強い感情はない、むしろ諦めしかないのだから。


それと同時に黒い雲から降り注ぐ雨。

そのまま僕は、父から離れるように早歩きで離れていった。

そんな僕を、真上から一人の幽霊女が見ていた。



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