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とある少女がネトゲをやりまくった件(くだり)  作者: 葉月 優奈
三話:とある少女が敵地に潜入する件
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学校に行ったこの日、冷たい空気がその場を支配した。

木々が赤く色づき始め、その木々が窓から見えた。


打墨(うつつみ) 蒼一』、どこにでもいる普通の高校生になった僕がいた教室。

それはいつもの教室だけど、静かな教室。

三つの机をつけて、僕は一人の男と向き合っていた。


目の前の男は、僕のクラスの担任教師の佐藤先生だ。

現在独身のアラサーだ。それ以外はよく知らない。

背広姿で眼鏡をかけた中年男性は、ファイルを見たまま難しそうな顔を見せた。


「というわけで、第一志望はなしと」

「はい」

「あのなあ、高三になって第一志望無しとかまずいだろう。

何かないのか、やりたいこととか?もう秋なんだぞ」

「ありません」

僕はそう答えるしかなかった。教室の窓の外の紅葉の葉が一枚ひらりと落ちていく。

僕の言葉に佐藤先生は、乱暴に頭をかく。


「進学もしないと……」

「進学はしません」

「そこだけははっきりしているんだな、ならば何をしたい?」

「わかりません。夢なんか考えたことないですから」

僕の言葉に落胆の色を見せた佐藤先生。

僕と担当教師の間には、白紙の進路希望が置いてあった。


「困ったなぁ、何か出してもらえないとアドバイスも何もない」

「僕の家庭環境なら、選択肢は働くしかない」

「じゃあ就職でいいのか?」と、投げやりの佐藤先生。

どうやら就職という選択肢は、教師としては不本意のようだ。

険しい表情で足を組んで、持っているペン先をカチカチと机につついていた。


「はい」

「本当にいいのだな?」

「仕方ないです」

「頼むから、仕方ないとか言わないでくれ。

お前の人生なんだぞ、打墨!進路というのは、お前の一生を左右するんだ」

教師が首を横に振った。


「それでもいいんです、僕の人生には、選べる権利がないですから」

「それは違う。お前は、選ぶのも考えるのもやめただけだ。

流れに身を任せて、他人のせいにしているだけなんだ」

「そうかもしれないですね、考えるだけ無駄だと知ったんです」

「お前のような生徒は初めてだ。打墨」

佐藤先生があきらめ顔でサラサラと書こうとしたとき、突然教室のドアが開いた。

僕がドアの方に視線を移すと、そこには意外な人物が出てきた。

ジャージ姿で髪がボサボサな男だ。


「蒼一、お前は大学に行け」

「なんで親父が……」

「金は何とかする!だから前を進め!」

それは僕の父が息を切らしながら現れたのだ。

父の登場に、慌てて立ち上がった佐藤先生。


「打墨さん、やっと来ていただいたんですね」

「本当に遅れて申し訳ない」

「……来なくてよかったのに」

僕は冷たい目線でそうつぶやいた。


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