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~~サタナカンド共和国・イースト三番街~~
イースト地区で唯一、ここにはオークション会場がある。
オークション会場には多くのアバターが集結して、売買の成り行きを見守っていた。
僕はロゼと一緒に、オークション会場の前で絶句していた。
ロゼが出てくるだけで、人目の引くエリアで注目を集めた。
さすがは伝説の装備を持ったソロプレイヤーだ。
だけど手に持った黒い結晶は、その輝きを失いつつあった。
「くそっ、値下がっている」
僕が見ていたのは、『ブラックダイヤモンド』の履歴情報だ。
出品する前に、落札前の履歴情報を見るのは当然だ。
ネットゲームだから、常にプレイヤーの需要と供給で成り立つ。
「あら~、下がっちゃったわね」
「まずいな、1億は無理。出品数もあるな……少し下げるしかないな」
「もしかして出やすくなったのかも」
一緒に来ているロゼが、冷静に判断していた。
「最後の履歴が8500万、さてどうするか?」
「7000万よ、これで売れなければ暴落するわ」
「ロゼ……それは安すぎじゃあないか?」
「それしかないわ。一回目の出品で売れないと、今度は半値以下に落ちるわ」
「どういうことだよ?」
「おそらくは……昨日のバージョンアップじゃないかしら」
ロゼの言葉に、思い当たる節があった。
「バージョンアップの影響か、ありえなくはない。
一回やっただけでネットゲームの経済を変えてしまうからな」
「本当よ、全くとんでもないわ」
出品は、設定価格の低いのからオークションにかかるシステムだ。
当然低いのが売れやすいわけだが、今回は目的の金額が決まっていた。
「また出るとは、限らないぞ。レア仕様だし」
「とにかく今すぐ売りなさい、売らなければ絶対後悔するわよ」
「わかった、わかったから」
僕はロゼの言うとおりに、『ブラックダイヤモンド』を7000万で設定していた。




