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とある少女がネトゲをやりまくった件(くだり)  作者: 葉月 優奈
二話:とある少女が競売所で悩む件
15/122

015

国道沿いにある、ガソリンスタンド。

そこが僕のアルバイト先だ。大きな声が飛び交う職場。

そこに働いているのは四人、今時珍しくもないセルフのガソリンスタンド。

夜の時間になって、人というか車の数が増えていた。


「オーライ、オーライストップ!」

帽子とスタンド用の制服を着ていた僕は、大きな声を出しながら車の先導。

忙しくなる夜七時頃、僕は青い制服で汗をかいていた。

セルフなので、客がガソリンを入れている間はほぼ暇なのだが。

しばらく先導を終えると、僕と同じぐらいの高校生の男がやってきた。

正確には浪人生で、一つ上なわけだが。


「ちょっとチーフ」

「どうした?」

「サービスステーションの方から……」

「そっか、今行く。こっちの先導を任せた」

「はい、チーフ」


そんなガソリンスタンドで、車の先導を終えるとサービスステーションから手招きされた。

明らかに年上の女性が手招きしていて、お客さんと何かレジでもめているようだ。

おっとりした女性は、四十代のお客さんに怒られているように見えた。


「はいはい」

駆け足で僕が向かうと、そこには困惑した女性スタッフ。

見た感じ三十代ぐらいの大人の女性だ。


「あの……レジ大こんら~ん」

「ちょっと待ってくださいね、生実(おゆみ)さん」

レジ打ちに困惑した女性スタッフに変わって、僕がレジを見ていた。


「う~ん、こっちのデータで通るから。

そこのボタンを押すと、もう一回やり直しができるよ」

「ありがとうございます、チーフ」

女性スタッフの生実さんが、僕に丁寧に頭を下げた。


「そうじゃなくて、生実さん。お客さんの方へまず謝罪」

「はい、申し訳ありません」

僕に頭を下げた女性スタッフは、慌てた様子で待たせた客に頭を下げていた。


「ほんとうにすいません」

僕も客に謝って、今度は洗車場の方に小走りで向かう。

それを幽霊のロゼはじっと見ては、僕の前に顔を覗かせた。

暇そうな顔で、飽きたぞって顔を前面に出していた。


「ちょっと」

「なんだよ、洗車のお客さんが待っているんだ」

「そういえば、今日のバージョンアップ、楽しみね」

「ああ、ゲームの話か。今は忙しい、バイト中は話しかけるなって言っただろ」


幽霊少女ロゼよりも、僕はバイトに集中していた。

当然、無視されてロゼはムッと膨れた。

今、バイトの時間を利用してパソコンは『マジカル・クロニクル』のバージョンアップをしている。

昼間からメンテナンスだったし、順調に行けば夜にはログインできるだろう。


「ねえ、ねえねえ」

「なんだよ?」

「チーフって何?」再びからんでくるロゼ。

「そのままの意味だ」

「ブラウはなんでバイトしているの?遊び金欲しさ?」

「バカ言え、生きるためだよ。それにここでは蒼一だ、リアルなんだし」

「生きるため?」ロゼはさらに聞いてくる。

「親父の生活費だけじゃ生きていけないんだよ、文句あるか?」

「でも、ブラウは学生でしょ」

「離婚しておかしくなったからな、家族も、僕も……」

僕は言葉を濁していた。

その言葉を聞いて、ロゼも空気を読んだのか申し訳なさそうに僕から離れる。


「チーフ、こっちに来てくれるか?」再び洗車場から声。

「はい、今行きますっ!」

そう言いながら呼ばれて、洗車場の方に走っていた。

洗車を待たせていた客に、深々と僕は頭を下げて謝っていた。


「はい、誠に申し訳ありません」

窓を拭きながら、何度も頭を下げていた。



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