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とある少女がネトゲをやりまくった件(くだり)  作者: 葉月 優奈
十二話:とある少女がネトゲをやりまくった件
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あれから二日後、僕は病院の廊下を早歩きしていた。

病院の廊下を、学校の制服のまま歩いていた。

僕の隣には、伯父さんだ。目指す病室の前に、まもなくたどり着いた。

伯父さんも急なのだろうか、背広姿で着ていた。ネクタイが曲がっているし。


「覚悟はいいかい?」

「うん」病室のドアを開けると、既に真衣が寄り添っていた。

ベッドの上には、縛られた母親だ。


僕の生みの親で、真衣の母が危篤状態になっていた。

母の病気はアルツハイマー病、しかも末期だ。こうなることは予測されていた。

だけど、その出会いは突然過ぎて急だった。


仙台から千葉に戻ったのは、前日。

だけど次の日、学校に行っていた僕の携帯に着信があった。

伯父さんがかけた電話は、母の急変だ。


「お兄ちゃんも、はるばる来てくれたんだ」

「ああ」真衣は母親の手を握りながら、少しだけ笑みを浮かべた。

長い髪の少女だ。

ロゼに少し顔が似ているが、シワシワのセーターを着ていた。

カジュアルなダメージジーンズを着て、ベッドのとなりの椅子に座っていた。


「ほら、こんなにいい顔しているよ」

真衣に促されてみた母の顔は、安らかだ。全く動いていない。


「真衣まさか……」

「ううん」

「そっか」僕は全てを理解した。

だけど、僕の隣の伯父さんが必死に声をかけた。


「起きてくれ、起きてくれ!」

伯父さんの言葉に、全く反応しない。

だけど伯父さんは、全然諦めない。


「頼む、頼むから!自分の支えになってくれ」

「真壁さん……」

僕らの少し離れたところに、小太りの医者がいた。

白衣を着ていて、経験豊富そうな医師。


そして、医師が残酷な結果を伝えた。

「残念ですが、もう……」

「そう……ですか」

伯父さんは、力なく床に膝をついて泣き出した。

それを見るなり、真衣も泣き出した。

そう、それは母を失ったという事実だ。

僕と真衣が産んだ母が、この世を去った事実が突きつけられた。


「伯父さん、泣いちゃうなんてあたしも……我慢していたんだよ」

真衣も大声で泣いていた、伯父さんも泣いていた。

僕は、立ち止まってふたりを見ていた。


泣いている二人を見ながら、僕は固まっていた。

泣き崩れる真衣、それを僕はどうすることもできない無力感があった。

そんな立ち尽くす僕に、看護婦さんがそっとハンカチを差し出した。


「あなたも、泣いているのね」

「僕が……」だけど、頬をつたるものがあった。

いつの間にか僕は泣いていたのだ。


「なんで、泣いているんだろう」

震えた声で僕は涙が止まらなかった。

会ったことも、ちゃんとまともに会話をしたこともない母。

それでも僕は、涙を止めることができなかった。



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