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とある少女がネトゲをやりまくった件(くだり)  作者: 葉月 優奈
十二話:とある少女がネトゲをやりまくった件
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~~サタルカンド・イースト九番街~~


ゲーム内のここは、結婚式をやった場所だ。

大きな橋が掛かっていて、街が分かれていた。

僕はイースト側の街から、ゆっくり歩いていた。


しかしここは雨が振っていた。強く激しい雨だ。

橋の中央まで歩くと人がいた。

ロゼだ、彼女がウエスト側の橋の淵でクルクルと回っていた。

ピンク色のドレス姿で回るロゼは、壊れたように笑っていた。


「ロゼ、ここにいたのか?」

「うん、ここは楽しい魔法の国『モルゲンロート』よ」

「そんな魔法は存在しない」

僕が言うと、回るのをやめたロゼ。不思議そうな顔で僕を見ていた。


「するよ、だってリアルで起きていることは関係ないし」

「ロゼ……」

「あたしは、何も怖くない。恐れることは何もない。

だってゴモリが全部消してくれる。あたしのリアルを」

「そう、消すの」

ゴモリは優雅にロゼの後ろから現れた。

そして、ゴモリは一人の少女を抱き抱えた。ロゼだ。

だけどこちらのロゼは、いつもの真っ黒な鎧を着ていた。

黒くてセクシーで、激レアのケルベロスプレートだ。


「ゴモリ……どういうことだ?」

「君にはリアルを見せた、君はロゼの……真衣の地獄を見た。

彼女はもうすぐ一人になる、一人になったら誰も助けてくれない。

そんな彼女は自分の居場所を見つけたんだよ、君も嬉しいのじゃないのか?兄として」

「それはできない」

「なぜだ?君だって、リアルに対して嫌っていたではないか?」

「違うとわかったんだ!」

僕ははっきりと叫んだ。

すると、いつもの黒い鎧を着ていたロゼが顔を上げた。

眠りから目を覚ましたように、目をこすった。


「お兄……ちゃん」

「ネットゲームは楽しい、冒険は楽しい、マジック・クロニクルは楽しい。

オフゲーと違って(プレイヤー)と出会い、いろんなことを経験もできる。

リアルで届かない自分になれる、なりたい自分になれるそんな魔法の場所だ。

だけど、僕たちはリアルで生きている人間だ人間である以上、生きなければいけない。

生きづらいリアルが、僕らの住む世界なんだ」

「でも……ママはもう死ぬの」

ピンク色のドレスを着たロゼは、悲しそうな顔を見せた。


「お兄ちゃんはパパがいて学校に行っていて、ひとりじゃない!

でも、あたしは一人。学校もいかないし、友達もいない。

ママの介護で、全部捨てたの。捨てたのに……あたしは捨てられる」

「僕がいる」

「お兄ちゃん……」

「僕はずっとロゼの家族なんだ。血を分けた」

「そうだね」ドレスを着たロゼが、ゆっくりと近づいてきた。

泣き出しそうな顔で、橋の真ん中、僕の前にやってきた。


「お兄ちゃんがいるからね」

「ああ」

「だめっ!」

その瞬間、ゴモリに抱かれた黒い鎧のロゼが立ち上がった。

そのまま離れて、ゴモリが僕の方に駆け寄った。

目の前のピンクドレスのロゼは、右手を後ろに伸ばす。


「お兄ちゃんは一人にしないよね」

「もちろんだ」

「じゃあ、死んで」

ピンクドレスのロゼは、右手でいきなり巨大な斧を振り上げた。

怪しく微笑んだロゼは、グランドアクスを片手で振り上げた。


「させないっ!」真っ黒な鎧のロゼは、ゲイボルグを突き出した。

そのまま、ピンクドレスのロゼは振り返って、ゲイボルグの槍先をグランドアクスで受け止めた。


「ロゼ……やはり本物は君か?」

「お兄ちゃん、会いに来てくれたのね。すごく嬉しい」

「ああ」僕は二人のロゼが、にらみ合うのを見ていた。


「お兄ちゃん、どうして?」ピンクドレスのロゼが、叫ぶ。

「僕も君と同じだからだ」

「嘘よっ!」

「ちょっと、だまんなさいよ。あたしの記憶」

黒い鎧のロゼは、じっと睨んでいた。


「だいたいゴモリも、趣味が悪いわよ。あたしはこんなに太っていないから」

「リアルにできていると思いますが」ゴモリはじっと直立で橋の端から見ていた。


「あたしは、もう嫌なの。

ここになら、永遠の命がある。あたしは何も怖くない」

「ゲームだけでは、お前を絶対に満たさない」僕が叫ぶ。

「満たすわよ、あたしは廃人だがら」

「黙りなさい、偽物のあたしっ!」黒い鎧のロゼは歯を食いしばって押し込もうとした。

「何を言っているの?アバターのあたしこそ、真実、真理、真の姿。

あなたの記憶と心の姿よ」

ピンクドレスのロゼは、黒い鎧のロゼの槍を吹き飛ばす。

吹き飛ばされた黒い鎧のロゼは、険しい顔を見せていた。


「お前はどうなんだ、ロゼ?」

「あたしは、だって夢がないから」

「ロゼ……それは」

「リアルに夢がないから」

「それは違う!夢を見なかっただけだ」

僕の言葉に、二人のロゼが同時に僕の方を見た。


「僕もそうだった、夢は見るもんじゃないんだ。

探すものだよ。僕は探せなかった、いや探し方を忘れていた。

でもロゼ……君が教えてくれたんだ。夢の探し方を」

「お兄ちゃん」

「目を覚ませ、ロゼは一人しかいないんだ」

「うん」黒い鎧のロゼが、僕の話を聞いていた。


「邪魔をするな、君の問題ではない」

ゴモリが今までになく、冷たく言い放った。


「いいや、家族の問題は僕の問題だ」

「そうか、なら仕方ない。ロゼを統一化するしかないな」

そう言いながら、ゴモリは右手に小さな鐘を持っていた。


「この世界は、ロゼのいるべき居場所だ!」

そう叫んだとき、ピンクドレスのロゼは苦しみ始めた。

真っ黒な鎧のロゼは、ゲイボルグを身構えて苦しむロゼを見ていた。


「さあ喰らえ、ロゼを。アバターのロゼは、魂を喰らい尽くせ。

そして、ロゼは……真衣はここで永遠に暮らすのだ」

ゴモリがまるで悪役のごとく、高笑いをした。


「……もう苦しみたくないだろ」

最後に、ゴモリがそう言うと僕らの前に一匹のモンスターが現れた。



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