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ここは仙台郊外にある二階建ての一軒家。表札には『真壁』と書かれていた。
庭付きの庭は、雑草が伸び放題で手入れされていない。
家の外も暗さを感じるが、家の中もすごかった。
入った途端に異臭がした。
壁が汚れ、穴が空き、散らかる部屋。
地震でもあったのかと思える程に、散らかっていた。
その家を、僕は仙台駅で会った男が紹介した。
「自己紹介がまだだね、私は真壁 誠二。君の伯父さんだった人だ」
その人は、僕も知っていた。何よりロゼの記憶の画像で何度もでていた人物だ。
白髪まじりの大人、実際に見るとさらに老けていた。
「僕は打墨 蒼一です」
「ああ、大丈夫。君は自己紹介をしなくても知っているさ。
なにせ、元は伯父さんだからね」
「伯父さん……だったんですねゴモリ」
僕の言葉に、伯父さんははにかんでいた。頭を右手で掻きながら。
伯父さんが廊下を先導して僕を案内した。
「いやあ、バレたか」
「いろいろ推理したんですよ。
ゴモリはいつも厳しいけどたまに、ロゼに対して保護者のような目線になる」
「そう、ロゼの母の兄。ゴモリの正体さ」
「ロゼは?真壁 真衣は?」
「ここにいるさ」
そう言いながら、パソコンデスクの前で眠る少女がいた。
学校で授業中に眠る学生みたいに、机に伏せていた。
「ロゼっ!」
僕は駆け寄った。しかし意識はない、心臓は動いているが呼吸はしていない。
目の前のパソコン画面がついているが、マジック・クロニクルのオープニングが表示されていた。
「どういうことだ?」
「彼女の意識は、このゲームの中にある。
安心してください、彼女は今のところ死んでいない」
「死んでいない……助かるのか?」
「彼女を助ける必要がない」
伯父さんが、怪しく微笑んだ。
「なんだと?伯父さんはなぜそんなことを?」
「彼女のリアルは残酷だからな。ゴモリでも話したことだ」
伯父さんは淡々と言ってきた。
「なぜリアルが、残酷なんだ?」
「君はこの家に入って、何か感じなかったか?」
「そういえば……人の気配がしない」
「いいや、しているさ。人はいる。ここには現在四人いる」
伯父さんが真衣の部屋を見回しながら、言ってきた。
だけど、部屋は散らかって生活感がない。
「ロゼは……僕の妹は母親と暮らしていたはず?」
「そう、母親。彼女を苦しめた一因でもある」
「母はどこだ?」
「奥の寝室に寝ているさ。ただし君は、見ないほうがいい」
伯父さんが言い切るまもなく、無言で僕は奥の部屋に走っていった。




