表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とある少女がネトゲをやりまくった件(くだり)  作者: 葉月 優奈
十二話:とある少女がネトゲをやりまくった件
110/122

110

ゲームと違うここは、リアルだ。

滅多に着ないよそ行きの青いジャンパーの僕は、リアルの和室に来ていた。

薄暗い朝で、薄暗い和室の部屋。


本来なら、僕はこれを望んでいたはずだ。

僕に取りついていた幽霊が、いなくなった。

普段はやかましく叫ぶロゼの姿を、もう感じない。


ここに来る目的は、ただ一つ。

早朝に帰ってきた父は、作業着を脱いでいた。

シャツ姿で、少し汚れた腕。仕事を終えてくたびれた顔をしていた。


「今朝は早いな」

「うん」たわいもない会話で僕は父と話す。

しかし、次の言葉がなかなか言い出せない。

父が、制服を脱いでジャージに袖を通す。


「学校にしてはまだ早い時間だろう」

「いいや、学校にはいかない」

「休むのか?」

「僕は決めた。仙台に、真衣に、母さんに会いにいく」

僕の言葉に、父は眉をひそめた。


「どうしてそうなる?」

「僕は初めての離婚を、ほとんど覚えていなかった。

幼い頃の記憶が僕は覚えていなかった。だけど、知った。

知ったからには、会いに行きたい」

「お前が会いに行ったところで、それは邪魔でしかない。

向こうには向こうの家族がある、かかわらない方が身の為だぞ」

「邪魔でもいい、彼女が助けを求めているんだ」

僕の言葉に、父は首を横に振った。


「そうか、もう出来ているんだな覚悟」

「ああ」

「お前がなにかの目的をもって動くのは、喜ばしいことなのかもしれないな」

父はため息をつきながら、タンスの方に近づく。

そのタンスには、幼い僕と父の写真が飾ってあった。


「僕は夢を失った、だけどそれを真衣が気づかれてくれたんだ。

僕にとって、今や真衣は大事な人間だ。だからこそ助けたい」

「ふむ……」

「もう僕は行くよ、妹を助けに」

「そうか……すまない」

父は諦めたように、写真をタンスに置いた。

玄関前に置いた古いボストンバックを僕が担いで、玄関の扉を開けた。

その時、一人の背広を着た人間が笑顔で出迎えた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ