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~~デモニース帝国・クロッカ森林~~
デモニース帝国という国がある、魔法帝国と呼ばれていて魔法文面が盛んな国だ。
その領地の一つが、クロッカ森林。
深すぎる森は、結構強いモンスターもうろつくエリアだ。
だけど、敵が強いだけにここには魅力的なアイテムも取れる。
「クロッカ森林、通称『グランドヒノキ材』エリアだな」
「そうね、あんたも詳しいじゃない」
「採集系は得意分野だ」
僕は離れることのできない、ロゼと一緒にここに来ていた。
ここには『グランドヒノキ材』と言われる高額素材が手に入る。
手に入る素材は、高額で売れるのでソロが採集目的で人が集まるからだ。
とりわけ人と集まるゴールデンタイム(夜七時から十二時)を避けて、僕は深夜二時にここに来ていた。
「でも、目的は『グランドヒノキ材』じゃないんだろ」
「そうね、クリアアイテムは『ナラ材』。制限時間は昨日の夕方四時からの二十四時間。
『キコリ斧』、ちゃんと装備してきたでしょうね」
「ああ、斧は持ってきた。キコリなんて久しぶりだな」
キコリ採集というソロプレイがある。
それはエリア内に現れる、『伐採ポイント』をマークすると木材をゲット。
ただし、プレイヤーは『キコリ斧』という武器を装備しないといけない。
ポイントはエリア内でわずか一箇所しか出てこなく、でてきたら取り合いになるわけだ。
尚、斧は壊れない限り無限に使える。
どんなキャスパルでも出来るのでソロプレイで、暇つぶしや金稼ぎやるのが多い。
「お前もやるのか?」
「そうよ、二人の方が早いじゃない。それに……あそこ」
僕たちの前には、一人の男がいた。
大きな男が、木材を切っていた。
おそらくここで『グランドヒノキ材』狙いのソロをしている達人だ。
「ライバルもいるわね」
「見たところ、ライバルは一人だから楽かな。
僕たちも、さっさと目的のアイテムを取って終わりにしよう」
「そうね、『グランドヒノキ材』よりレア度が低い『ナラ材』でしょ。
なにげに売れない、買えないアイテムを取って来いって面倒なクエストだわ」
「当然だ、買えるアイテムならわざわざクエストにしないって」
「それもそうね。早くクリアしましょ!」
「お前たち、やるのか?」
すると、木こりの男は僕たちの方に声をかけてきた。
髭を生やしたいかにもおっさん風の男は、この森の主のようにさえ見える。
木を切る手を止めないで、アイテムを手に入れていた。
いきなり髭男が手に入れたのが『ナラ材』だ。
「ああ、悪いけど採集が僕は苦手ではない」
「それに、あたしはソロの天才だから覚悟しなさいよ」
キコリ斧を持ったロゼが、悠然と森の中に突入していった。
それは、ライバルの男との戦いの始まりでもあった。




